巨人Vodafoneにアライアンスで対抗欧州携帯市場の勢力図(1)(2/2 ページ)

» 2004年05月19日 18時09分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
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アライアンスで“国境をはずす”通信オペレータ各社

 TTTOはTelefonica、TIM、T-Mobile、Orangeの頭文字を取ったもので、加入者ベースで準最大手群の4社が2003年8月に結成したアライアンスだ。TTTOは今年3月末、“FreeMove”というブランド名を発表、国際ローミングの強化やマーケティング、資材調達などで提携のメリットを生かすという具体的計画を明らかにした。

 TTTOの総加入者数は1億7000万人、シェアは36%に達しており、西欧市場に限定するとVodafoneの加入者数を上回る。TTTOは現在21カ国をカバーしているが、課題の一つとして英国など提供エリアがオーバーラップする点が挙げられる。これをどう解決するかにより、アライアンスの成否が別れそうだ。

 一方、“starmap”というブランド名のMobile Allianceは、mmO2、ノルウェイ最大手のTelenor Mobile、オーストリアや中欧に強いOne、スペインのAmena、伊Windなどのオペレータで構成され、TTTOと比較すると弱者連合の色が濃いアライアンスといえる。カバーエリアは9カ国で加入者数は4000万。現時点で同アライアンスのカバーエリアにフランスが入っていないことや、そもそもの加入者数が少ないことも課題とされている(現在、仏のBouygues Telecomと交渉中と噂されている)。

 2つのアライアンスは共に、参加各社やユーザーにメリットのある形で運営をしていくという難しい課題に直面している。1990年代後半にDeutche TelecomやFrance Telecomなどが推進したGlobalOneが失敗に終わっていることから、通信業者のアライアンスがどこまで成功するのか、関係者の目は厳しい。もし2つのアライアンスが軌道に乗れば、西欧市場には、最大手Vodafone、TTTO、Mobile Allianceの3大勢力が形成することになる。今後注目されるのが、現時点でいずれにも属していないKPNの動向だ。

  • 日本のローミング戦略を左右する欧州オペレータ事情

 海外に持っていってそのまま使える──という観点から日本の通信キャリアを見ると、一番強いのはやはりボーダフォンだ。“海外から写メール”など、ボーダフォンライブ!の海外利用をいち早く打ち出し、パケットローミングを利用できる国も多い(2003年11月の記事参照)。欧州主要各国はもとより、オリンピックが開催されるギリシャからの写メールも既に可能だ。これはVodafoneが欧州各地にグループとして携帯電話サービスを提供していることが大きい。どこの国でも共通のサービス基盤で2.5G(GSM/GPRS)を展開しているため、ローミングが行いやすいのだ。

 この点、ドコモは現時点で先が見えにくい。ドコモが欧州で提携しているプロバイダはドイツE-Plus、オランダKPN Mobile、ベルギーBASE、フランスBouygues Telecom、スペインTelefonica Moviles Espana、イタリアWIND、ギリシャCOSMOTEの7カ国7オペレータ(2003年11月の記事参照)。E-PlusとKPN Mobile(今夏に提供予定)以外は3G化の具体的なスケジュールは見えていない。ドコモがW-CDMA/GSMのデュアル端末をリリースするまでは、“端末をそのまま持っていって使える”世界を実現するのは難しそうだ。

 アライアンスの面から見ても問題はある。ドコモの欧州提携先は前述の、アライアンスが結ばれる前に進められたもの。そのため各提携先が参画するアライアンスはバラバラで、参画していないオペレータもある。それぞれのアライアンスがどのような形の具体的連携策を打ち出すのかにもよるが、両アライアンスのいいとこ取りをできるのか、異なる方針の中で苦慮することになるのか──が今後の注目ポイントになりそうだ。

ドコモの提携オペレータ 参画するアライアンス
ドイツE-Plus -
オランダKPN Mobile -
ベルギーBASE -
フランスBouygues Telecom Mobile Allianceに参画の噂
スペインTelefonica Moviles Espana TTTO
イタリアWIND Mobile Alliance
ギリシャCOSMOTE -

 CDMA方式を採用しているKDDIはさらに難しい。欧州でCDMA方式のサービスを採用している国がほとんどないため、現状では日本のauのグローバルパスポート端末は欧州での音声ローミングにも対応していない。ただKDDIも、時期は未定ながらGSM/CDMA2000 1Xのデュアル端末の開発を計画しており、欧州での利用も視野に入っている(3月17日の記事参照)。

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