6月下旬以降発売予定の三菱電機製端末「V401D」(5月10日の記事参照)。端末の右サイドには、青く光る不思議な四角いデバイスが付いている。これが、“なでて操作”するのに使う「コントロールパッド」だ。
“思わず触ってみたくなる新しさ”と“使いやすさ”を提案するべく搭載されたこの機能について、三菱電機の開発陣に聞いた。
「ほとんどの操作で使える」(通信第一部第一課の増田英雄商品企画担当係長)というように、コントロールパッドは、さまざまな場面で動作する。「使えるシーンを限定してしまうと、“なんでここで動かないのか”と思われてしまう。ハードルは高かったが、よほどのことがない限り動くようにしている」(増田氏)。“よほどのこと”の一例は、通話中。「コントロールパッドに音量調整を割り当てることも考えたが、知らず知らず触ってしまうこともある」という理由から、機能を外したという。
端末を閉じた状態で横向きにして写真を撮る“横撮りスタイル”時にはズーム機能に対応。指の滑らせかたに応じたスムーズなズームが可能だ。
開いた状態では、メニュー選択時をはじめ、Webやメール閲覧時のスクロール、はい/いいえの選択にも利用できる。面白いのは動画や静止画の閲覧画面での機能だ。「メガピクセルで撮った写真を原寸で見るとき、指でなでれば画像を拡大できる。動画再生時は、なでて早送りや巻き戻し、タップで再生できる」(ソフトウエア開発第二部開発第一課の冨森健史氏)。
既にお伝えしているとおり、プリセットされた10種類のなぞりかたに、電話帳やメールアドレスを割り当てることも可能だ(5月11日の記事参照)。「よく電話する人の電話番号を割り当てれば、なぞって発話ボタンを押すだけで電話をかけられる。メールはなぞるだけで任意のアドレスが入った入力画面を出せる」(冨森氏)
開発側は「いろいろな人の使い方に対応できるよう、多様な使い方を提供したい」という考えのもと、コントロールパッドの機能を用意したという。ただし慣れれば使いやすいとはいえ、やはりアナログデバイスには一長一短がある。そのため端末にはコントロールパッドの任意の機能を無効にする設定も用意されている。
ユーザーが機能させたくないスクロールはオフにできる |
方向キーだけでは操作が追いつかないほど、端末機能が複雑化する中、これまでもさまざまなメーカーが操作性を上げるためのデバイスを端末に付加してきた。ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ端末の「ジョグダイヤル」(特集参照)や「ディスクジョグ」(2003年12月)、パナソニック モバイルコミュニケーションズ製端末「P505iS」の「ロールナビ」(2003年11月の記事参照)などがその例だ。
新しい出入力インタフェースを探す中、三菱電機が選んだのは押圧式のコントロールパッド。端末を閉じた状態でも、開いた状態でも使える位置にレイアウトできることが、ポイントの1つだったと冨森氏は話す。「携帯電話の側面に装備できるので、(デジタルカメラのように)閉じたまま横撮りスタイルで使うときにも、開いた状態の時にも機能する」。
ジョグダイヤルやロールナビに比べて操作上のメリットもある。「例えば画面をスクロールし続ける場合、(ジョグダイヤルやディスクジョグは)物理的に回し続けなければならない。コントロールパッドは、指を下に滑らせてそのまま止めておけば、指を離すまで、そのままスクロールさせておける。(コントロールパッドは)方向キー回りに取り付ける必要もないので、方向キーや決定キーの操作性を損ねることもない」(富森氏)。
コントロールパッドには、V401Dに採用された押圧式以外に、PCのトラックパッド部によく使われている静電式のものがあるが、「静電式は消費電流の問題がある上、搭載に当たって大きなICが必要」という理由から、押圧式のものが選ばれた。
ただ押圧式のパッドには、指以外の何かが触っても反応してしまうという欠点もある。カバンの中に入れたときなどの誤動作を防ぐため、閉じた状態ではメニューボタンを押さないと機能しないように設定している。
搭載に当たっては、既に発売されている三菱電機製の端末にコントロールパッドをつなぎ、スピードや操作面の問題を洗い出しながら開発を進めたという。課題になったのはスピードだ。「コントロールパッドのようなアナログデバイスは、画面の表示スピードがついてこないという問題がある。例えば画面のスクロールの際には、早いイベントがガンガンあがってくる。描画速度や反応を最適化するため、描画の下のロジックを変更したり、リスト表示の仕方を変更したりしている」(冨森氏)。カメラズームへの対応も、できるだけスムーズに反応させるところでかなり苦労したそうだ。
コントロールパッドは、操作を便利にするだけではない。着信時や通話時に光るなど、着信通知の機能も兼ねているのだ。
「最初の企画段階では光っていなかったが、試しに光らせてみたら、案外よかった。パッド部分がシリコンラバーのため、うまい具合にぼんやり光る」(冨森氏)。
端末を開閉時に光らせたり、指の動きに合わせて光らせたりと、さまざまなシーンで光らせることができ、光りのパターンも10種類用意される。その中の1つが、米テレビドラマの「ナイトライダー」に登場する車「キッド」のように光りが行ったり来たりするものだ。「LEDは3つしか入っていないが、それぞれの明るさをデューティ制御(デジタル調光)することで、イルミネーションのように光るようにした」(冨森氏)。
「青いLEDは高いけれど、ちょっと無理して入れた」(冨森氏)と、こだわりぬいた部分だ。
次回は、進化したカメラ機能や一新された内部機能、加速度センサについて紹介する。
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