「3年前、携帯にカメラを付けようという議論をしていたとき、ゴールってどこなんだろう? と考えた。結果ゴールイメージとして出てきたのが、折りたたみスタイルで3Mピクセルだった」──。
世界初の320万画素カメラを搭載した「A5406CA」が、間もなく発売される(5月17日の記事参照)。製造元のカシオ計算機、通信統括部商品企画室の石田伸二郎室長は、3Mピクセルカメラの構想は、携帯に初めてカメラを載せた時から描いていたものだったと明かす。
社内には、実際に3年前に書かれた企画書があるそうだ。当時は社内でも笑われたというが、「だんだん市場がエスカレートしてきて、『じゃあ、やっちゃおうか』と」(石田氏)。
なぜカシオは3Mピクセルをゴールと考えたのだろうか。「お客様はまだ満足していないんじゃないか、というのが1つ。2つ目は、画素数競争は“もういいんじゃないか”と思った瞬間に負けるんですよ」と石田氏。
3年前はデジカメで写真に残せるような画質というと、3Mが一般的だった。現在でもデジカメのエントリークラスの画素数が3M。ユーザーがカメラとして満足できるレベルを考えてたどり着いたのが、この画素数だった。
とはいえ、携帯をデジカメにしたいわけではない。カシオはこれを強く否定する。「全然そういう気持ちはなくて。ほかのメーカーさんはデジカメスタイルってやってるじゃないですか(2003年10月24日の記事参照)。僕らから見れば不思議だったんです。本当にそれ(デジカメスタイル)がいいんだったら、デジカメ買えばいいじゃないですか」。
「カシオが目指しているのは、あくまで携帯電話」だと石田氏が話す。クオリティはデジカメ並を目指しても、利用用途は異なる。撮った画像を、携帯でいろんなことに使えるよう、工夫を凝らした。
「携帯のズームで一番重要だと思っているのは、再生ズームや切り出しズーム。適当な画角で撮っておいて、切り取って送信したり、スライドショーにしたり。それが、ストレスなくできることが魅力的な使い方なんじゃないか。そのために専用のチップを入れているんです」
画素数がいかに多くても、それを印刷したりPCで鑑賞したりする人はまだ少数だ。携帯単体で高画素を生かした使い方は何かを考えたとき、再生ズームの魅力は大きい。撮影した画像をリニアにズームして、必要な部分をアップで見たり、トリミングできる。動作も高速だ。カシオ製端末を買ったユーザーの評価が非常に高い部分だ。
複数のメーカーが2Mピクセルクラスのカメラを採用してきたが、3Mはすんなりと載せられるものではなかった。
「2Mくらいだと工夫して済ませてきたところが、3Mになるとあまりに画素数が多いので、割とシンプルに作っている。AFのタイミングが早くなったり、暗いところでの性能向上、レンズも4枚に──よりデジタルカメラの作り方に近づいた」
高画素化に伴い、カメラとして素直に作らざるを得なかったことが、逆に使い勝手の向上につながった。前作「A5403CA」の弱点でもあった、AF(オートフォーカス)速度の遅さやプレビュー時のフレームレートの低さも改善されている(2003年12月25日の記事参照)。
“デジカメ的な部品”を象徴しているのがCCDだろう。画素数ばかりがクローズアップされることが多いが、性能を大きく左右するのがCCDのサイズだ。
「1/1.8インチという、デジタルカメラ用のCCDを使ってるんですよ。ほかのメーカーさんは、どんどんモバイル用になるべく小さいCCDを開発して載せる手法を取っている。やってみて分かったのは、大きいCCDだから感度もよかったり、発色もいいということ」
携帯では、30万画素クラスで1/7インチ程度、130万画素クラスでも1/4インチ、200万画素クラスで1/2.7インチといった大きさが普通だ。1/1.8インチというサイズがいかに大きいかが分かる。
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