新しいメディアの開拓に挑む――地デジラジオ(2/2 ページ)

» 2004年11月19日 11時58分 公開
[中村実里,ITmedia]
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 「今後、デジタル化によってCD並みの音質やデータ放送などが実現できれば、思い切った業態転向も可能。新しいビジネスチャンスと考えている」。

 実用化実験では、今後も新しいサービスを模索していく予定だ。簡易動画配信や楽曲ダウンロード、データ放送からEコマースサイトへ誘導して物販を展開するなど、多くの構想があるという。

1セグテレビ放送と競合する?

 とはいえ、携帯端末向け放送といえばテレビの1セグメント放送もある。こちらも簡易動画やデータ放送を予定しており、デジタルラジオとは競合するようにも見える。

 この点について、TBSラジオの塩山氏は「携帯電話でラジオ放送を受ける場合、テレビのように映像主体の放送スタイルではない。このため、例えば、音声を楽しみながらフル画面でデータ放送やインターネット画面を見ても(通信と)“画面を食い合う”心配がない」と説明する。

 これこそテレビとラジオと異なる部分であり「サービスの差別化も図れる」。

 KDDIのFMラジオケータイが実証したように(9月16日の記事参照)、もともとラジオと携帯電話の相性は良い。テレビ以上に、放送と通信が連携する自由度の高いサービスも生まれそうだ。

 最近始められた携帯向けデジタルラジオ放送の規格化では、ラジオの運用を考慮しつつ、テレビの規格とはデータ放送や画面構成などで若干異なる仕様を盛り込む方針。ただし、端末メーカーが開発しやすいように、テレビの規格と共通化したほうが良い部分は、なるべく共通化していくという。

1セグなのか、3セグなのか?

 9月14日、エフエム東京、ニッポン放送、JFNC (ジャパンエフエムネットワーク) が共同運営する地上デジタルラジオの「Digital Radio 98 The Voice」とKDDIが披露したのは、3セグメントを使った、H.264方式による簡易動画付放送のデモだった。

 現在東京地区では、3セグメント放送を試みるグループ(FM東京、ニッポン放送)と、1セグメント放送を試みるグループ(NHK、TBSラジオ、FM横浜、BAYFM、ラジオNIKKEI、文化放送、NACK5、J-WAVE、メガポート放送、RFラジオ日本、ソニー、伊藤忠商事)とがある。

 3セグ放送であれば、帯域が広い分高音質の音声・データ放送のほか、より高画質な動画配信が行えたり、5.1Chサラウンド放送なども可能になる。ラジオ局は、より質の高いラジオ放送を実現できる。

 他方、1セグ放送のメリットは、テレビの1セグ放送と互換性が高く、テレビとラジオの共用受信機を開発しやすいことだ。つまり、1セグテレビを搭載した携帯電話には、1セグラジオも付加しやすい。ある種テレビに「便乗する」形で、ラジオの受信端末を普及できるという期待もある。

 今のところ、地上デジタルラジオの本放送用として、周波数帯をどう各局へ割り当てるのかといったチャンネルプランが決まっていない。本放送で3セグ放送、あるいは1セグ放送が行われるのかは、このチャンネルプランが決まってから整理されるようだ。


 総務省では、9月22日から「デジタル時代のラジオ放送の将来像に関する懇親会」を開催した。デジタル時代における地上ラジオ放送の役割やビジネスモデルなどの模索を行い、来年3月を目途にチャンネルプランなどを取りまとめていく予定だ。

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