着実に加入者を増やし、欧州iモードの中でも“成功例”として挙げられることが多い仏Bouygues(12月1日の記事参照)。
iモード部隊を率いるブノワ・ルヴェ氏(マルチメディアモバイル iモード本部長)に、導入から現在に至るまでの過程と成功の秘訣を聞いた。
そもそも、どうしてBouyguesはiモードを提供しようと思ったのだろうか。ルヴェ氏は「マルチメディアサービスを提供しようとなったときにiモードを検討した。世界で最高のモバイルマルチメディアサービスと思ったし、この意見はいまでも変わらない」と話す。日本を訪問したBouygue Group会長のマーティン・ブイグ氏が、街頭で小さなケータイの画面に向かっている日本のiモードユーザーを見て感動し、「同じものをわが社でも!」と命じたというエピソードも教えてくれた。
ルヴェ氏はiモードの提供が決まった当初から、Bouyguesのiモードチームを率いてきた立役者(日本でいうとドコモの榎啓一常務取締役や、マルチメディアサービス部長の夏野剛氏のような存在だろうか)として世界的に知られている。そのため日本以外でiモードを展開するオペレータ各社からアドバイスを求められることも多い。先日もイスラエルの担当者とやりとりをしたばかりだ。
成功の秘訣は「“ドコモに学べ”の一言に尽きる」とルヴェ氏。iモードの採用を検討した際、iモードが機能するためにはiモードの経済モデル(エコシステム)が不可欠と学び、まったく同じ体制をフランスでも構築することを心がけた。同氏が率いるiモードチームの人員構成や比率までもが、ドコモと同じだという。
「iモードは技術をシンプルに、容易に、安価で提供したから成功した。これを再現するには、同じモデルでなければ無理」(ルヴェ氏)。社員にも、なにか困ったことや分からないことがあれば“ドコモに学べ”という意識を徹底させている。
通信事業者が主導するiモードモデルは、端末メーカー主導が主流だった当時の欧州モデルとは異なるものだった。そのため、当初は端末供給について欧州系端末ベンダーとやりとりするのに苦労したという。現在ではドコモがiモード対応端末の開発について、欧州系を含めた多くの端末ベンダーと関わるようになった。そのためBouyguesとしてもラインアップの拡充がしやすくなったという。
マーケティング戦略としては、“ポケットに入るインターネット”というフレーズを常にiのロゴとともに並べ、「シンプル」「簡単」「動く」の3つのメッセージを伝えるようにしている。
Orangeの「Orange World」、SFRの「Vodafone live!」といった、他事業社が展開するサービスとの競合については、「まだ競合とは呼べない状態」だと余裕の表情。「(2社には)競えるレベルのものを提供してほしい。それが、全体としてのユーザー啓蒙につながる」。ルヴェ氏はまた、「コンテンツプロバイダはみな、iモードモデルを好んでいる」ともいい、iモードのエコシステムがフランスでも機能していることを強調した。
今後の展望についてルヴェ氏は「年内に100万ユーザー獲得を目指す」と明言。11月には年末商戦に向けにカメラ付きの「N401i」などの端末を投入した。ターゲットユーザーは女性。年齢層では10代後半を狙う。N401iは赤、青、シルバーと3色展開、折りたたみ式と女性にアピールするデザイン。新サービスの着うた、着モーションも女性ユーザー獲得につながりそうだという。
端末ラインアップは常時5〜10機種揃っている程度がベストと見ており、来年以降は新しい端末ベンダーも加わる予定。3GサービスのUMTSは「まだ先」だという見方で、来年にはGSMの発展形であるEDGE(用語参照)サービスを開始する。当分の間はEDGEとiモードに注力する方針だ。
実際、iモードはこの2年で着実に認知を得ている。仏大手携帯端末ショップPhoneHouseの店員も、「他社のサービスと比べ安くて速い。コンテンツが多いから人気がある」と説明していた。日本発のビジネスモデルは、少なくともフランスでは認められたといえそうだ。
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