「(携帯電話向け燃料電池開発では)必要なら、業界内のデファクトスタンダードを作ったらいいと思っている」
KDDIの技術開発本部開発推進室の沼田憲雄次長は1月21日、東京・ビッグサイトで開催された国際燃料電池展のセミナーでこう話した。
「(携帯電話向け燃料電池開発では、他キャリアと)競争も火花を散らすつもりもない。協調していきたい」(沼田氏)
KDDIはドコモと並んで携帯電話への燃料電池搭載に積極的な通信キャリアだ(10月5日の記事参照)。背景には、2006年にも始まるモバイル向け地上デジタル放送に向けた端末開発の難しさがある。
沼田氏によると、現在のau携帯電話は待受時の消費電流が2ミリアンペア(mA)程度。600ミリアンペアアワー(mAh)程度のバッテリーを搭載すれば、待ち受け300時間となる計算だ。
ところが「液晶を開いてメールなどを打っていると、メール送信をしなくても、画面の照明などで消費電流が120mA。4〜5時間しかもたない」(沼田氏)。メール利用の普及など利用スタイルの変化により、「使用時間が短いというクレームが非常に多くなっている」状況だ。
さらに地デジテレビ受信は少なくとも200mA以上の電流を消費する。「技術者には200mAでも無理だ、と言われている」(沼田氏)。これでは2〜3時間しかバッテリーが持たない。
現行のリチウムイオンバッテリーの進化にも陰りが見えてきたため、理論的にはリチウムイオンの10倍のエネルギー密度(容量)を持つ燃料電池に期待している。
燃料電池を携帯電話に搭載するに当たっては、auでは「メーカーの技術を尊重し、技術進歩を妨げない範囲で仕様標準化を模索」する方針だ。
携帯キャリアが燃料電池を共同開発する利点として、沼田氏は“日本の特殊事情”を挙げる。海外とは異なり、日本では携帯キャリアが端末を買い上げ販売してきたため、キャリアのコントロールの元で仕様標準化が進んできた。
「いい例がI/Oコネクタ。外国では端末メーカーごとに違うのが普通だが、日本では違う機種でもコネクタは同じ」(沼田氏)
端末のメーカーを変えても同じ接続ケーブルを利用できたり、コンビニで緊急用の充電機が買えるのも、携帯キャリアが仕様を統一したおかげだと沼田氏は説く。
「結果、お客様には便利になった。燃料電池も、もしかしたらこういうことがあり得る」
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