KDDIは、原宿にオープンしたばかりのKDDI DESIGNING STUDIOで(3月2日の記事参照)、au design project端末「PENCK」(2月7日の記事参照)の発売記念レセプションを開催した。会場には、デザイナーのサイトウマコト氏やau design projectを率いる小牟田啓博氏をはじめ、PENCK開発の課程で苦楽を共にした開発陣が顔を揃えた。
レセプションのメインイベントは、サイトウマコト氏と小牟田啓博氏のトークセッション。PENCKという端末で何を目指したのかが明かされた。
「自分が使いたいもの(携帯)を作っただけ」──。サイトウマコト氏はPENCKを作ったいきさつについて、こうコメントした。世界に名だたるデザイナーが“使いたい”のは「携帯っぽいのはイヤ。何なのか分からないけどしゃれてる」「今までと違う」「デザインしないで存在感がある」といった要素を満たす携帯。完成したPENCKを改めて見てみると、たしかにこうしたデザイナーの意図が伝わってくる。
「“新しい”のではなく“新鮮な”ものを」というのもポイントの1つだ。「新しいものは飽きられる。(飽きさせないために)新しいものを提供し続ける作業に飽きた。PENCKは、“主張はしないが、飽きない”ものを目指した」(サイトウマコト氏)。
「この端末はカンバス。ユーザーが思い思いのカスタマイズができるようなもの」(小牟田氏)。“シンプルでありながら、カスタマイズ映えする(飽きない)のがPENCKの個性”というのが2人の一致した考えだ。
内蔵の着信音にもこだわりがある。サイトウ氏が思い描いたのは「どこから来たのか分からない、聴いたことがないような音。メロディじゃなく、交信しようとする音」。これを音として作り上げたのがカシオ日立の濱島秀豪氏。「言っていることは分からないが、何かを訴えかけている──。そんな音を作った」(濱島氏)。こうしてできた着信音が「携帯をいきもののような存在に」というサイトウ氏の想いを形にしている。
「思ったものができて満足。でも僕の周りの人たちは大変だった」(サイトウ氏)──。その言葉通り、PENCKの完成までには、並大抵ではない苦労があった。プロジェクトに関わったスタッフのチームワークと根性でPENCKが完成したというのは、既報の通りだ(2月24日の記事参照)。
ものづくりに対するサイトウ氏のポリシーは、このコメントからうかがえる。「経験から語る人には未来がない。データや経験はゴミみたいなもの。新しいものは、そういうのを無視した想いから生まれる。想いは強ければ強いほど形になる」
小牟田氏は、こうしたサイトウ氏の人間的な魅力がPENCK開発の求心力になったと話す。「コワいけど言うことが新鮮で、気が付くと好きになっている。それが挑戦する気持ちやエネルギーにつながった」(小牟田氏)
「やろうとしていることに、腰が引けていてはだめ。(端末開発を担当した日立カシオの)上杉さんは、最初から向かってきていた。温度が違っていて、『これならできる』と確信した」(サイトウ氏)
「できると思ってやらないと、ものごとはできない」というサイトウ氏と、プロジェクトに関わったスタッフたちの間に同じ想いがあったことが、PENCKを完成に導いたといえそうだ。
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