1分間で充電可能なバッテリーを東芝が開発した。機器の長時間駆動が可能なリチウムイオン二次電池と、急速充電が可能なキャパシタ(コンデンサ)の特徴を併せ持つ。
携帯電話など小型機器で使われることの多いリチウムイオンはエネルギー密度が大きく、長い時間の駆動が可能。ただし充電時間が非常に長く、また繰り返し使うと性能が落ちてしまう。
対してバッテリーのバックアップ用などに使われるキャパシタは、急速充電性能を持ち、繰り返し利用の寿命も長いのが特徴だ。しかしエネルギー密度が小さく、長い時間駆動することができない。「原理的には体積当たりのエネルギー密度はリチウムイオン電池の数十分の1以下。携帯以上の大型機器を駆動させるのはなかなか難しい」(東芝研究開発センターの高見則雄工学博士)
「従来のリチウムイオン電池がもつ高いエネルギー密度と、キャパシタが持つ短い充電時間を併せ持つもの」(高見氏)。それが今回の新型電池となる。
小型機器向けのバッテリーの代名詞ともいえるリチウムイオン電池だが、充電速度の高速化には課題も多かった。「リチウムイオンは2、3時間の充電が一般的。無理にやると電解液が分解し、電極が劣化する」(高見氏)
ナノ粒子を使うと表面積が広がり、リチウムイオンが入っていく(充電される)時間は短くなる。しかし、ナノ粒子にすると電解液が分解してしまうという問題があった。
今回の新型電池では、数百ナノメートルオーダーのナノ微粒子を使って、ナノ微粒子を均一に固定する技術を開発したことで電解液の分解を抑えられた。「炭素材料ではなく、それ以外の金属材料のナノ粒子化した材料を使った。重要なポイントとしては電解液を分解しない、安全な材料であることだ」(高見氏)
これにより、リチウムイオン電池とキャパシタのメリットを兼ね備えた電池ができあがった。
万能にも見えるこの電池だが、すべての用途に使えるわけではない。「電車、自動車、2輪車、自転車、そういうところにフィットした電池ではないかと考えている」と高見氏。
理由の1つは、エネルギー密度が高いといっても150〜250ワット時/リットル(Wh/L)と、リチウムイオン電池(一般に300〜400Wh/L)に比べて小さいことだ。
「今回、携帯機器というよりも産業用、車両用に絞って出力性能を重視した。将来的には携帯機器用への展開もあり得ないわけではない。そのときには高エネルギー密度化もあり得るが、逆に出力はそれほど取れないようになる」(高見氏)
今回の新電池は出力密度10キロワット/リットル(kW/L)と、リチウムイオン電池に比べて2ケタほど出力が大きい。つまりモーターなどパワーを必要とする機器を動かすのに向いている。
「高出力で取り出すと、電池がカラになるまでの時間が短い。(電力回生機能など)別のパワーソースがあるときに有効な電池だ」(説明員)
会場での説明も、極寒環境──-40度でも室温の80%の放電性能を持つことや、回生電力機能利用時も大電流を流せるため、環境に優しいなど、自動車などでの利用を想定したものが多かった。
もっとも携帯電話でも、短時間で充電できることが生きる使い方があれば、この電池の特徴を生かすことができる。
この電池は、一般的なリチウムイオン電池の製造ラインをそのまま使える。また使用する材料も「量産規模になったという前提で、リチウムイオン相当のコストにはなると思っている。資源的に問題のある材料は使っていない」(高見氏)。
今回は技術発表であり、事業化の方針は未定としたが、2006年度の商用化を目指して開発を進めている。
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