車はどこまで“ナイトライダー”に近づいた?

» 2005年05月13日 16時25分 公開
[斎藤健二,ITmedia]

 「こんにちはマイケル──」。約20年前に初放映された「ナイトライダー」を覚えている人も少なからずいるだろう。

 主人公の愛車「ナイト2000」に搭載されているコンピューター「KITT」は、会話はもちろん自動運転もこなす。ハイテク自動車の夢の形だ。しかし、仕組みこそ違えどその一端は、すでに実用的な形で実際の車に搭載されてきている。

日産、カーウィングスのオペレーターに未来を感じた

 昨今のカーナビは、“対話形式”で操作できるものが増えつつある。対話する相手は機械ではなく、携帯でつながった先の人間のオペレーター。本当の会話でナビを操作できるというわけだ。

 これまでのカーナビの目的地選択には多くの問題があった。まず、入力が面倒くさい。十字キーで住所を入れていくのは手間もかかる間違いも発生する。各社のカーナビが音声認識機能を搭載していることからも、十字キーによる操作の難しさが分かる。

 そして、明確ではない目的地を探すのはかなり難しい。

 これが相手が人間になると当然優秀になる。行きたい住所を告げるだけでいいわけだし、多少略して話しても、うまく理解してくれる。かなり適当なリクエストでも、オペレーターがうまく具体的な目的地に落とし込んでくれるので、複雑な操作法を覚える必要もない。

 こんな有人オペレータを使ったサービスに、関心を持つメーカーは多い。トヨタは新型の「G-BOOK ALPHA」で内蔵通信モジュールを使ったオペレータサービスを提供(4月14日の記事参照)。「AirNavi」など通信カーナビの実績のあるパイオニアも、「有人サービスは高い評価を受けているので、検討している」としている。

 そんな中、有人オペレーターを使ったサービスで先行しているのが日産のカーウィングスだ(2004年10月6日の記事参照)。数日間、「フーガ」を借りて実際に利用してみた感触をお伝えしたい。

素晴らしき、コンシェルジェ

 車に乗り込んだら最初にエンジンをかける。続いてBluetoothで携帯電話がナビに接続されたのを確認する。では、早速センター部の「オペレータ」ボタンを押してみよう。電話呼び出しの音が鳴り、「はい。カーウィングスオペレーターです」との返事が。

インパネ中央部に設置されたカーナビと、そのコントローラー。回転も可能な中央部の十字キー付きダイヤルで操作を行う。「目的地」「現在地」「ルート」「広域」「詳細」などのカーナビ基本操作ボタンのほかに、「オペレータ」ボタンが目に付く。ここを押すだけで、オペレーターに電話がつながる

 「近くのラーメン屋で、広い道に面した店を探しているんですけど。できればトンコツは避けたいです」

 相手が人間だけに、こんな無茶な内容でもしっかり聞いてくれる。

 「広い道というのが判断しかねるので、国道沿いのお店を案内します。ラーメンの種類までは分かりませんので、それはご容赦ください」

 機械なら「エラー!」とか「もう一度入力してください」と言われるような内容でも、うまく意図をくんでくれるのが素晴らしい。まさに、ホテルにいるコンシェルジェを使っている気分というか、秘書を連れている気分というか。今回はラーメン屋だからいらないが、ついでにお店の予約もしてくれたらいいのに。

 ちょっと謎だったのが、オペレータに現在の自車位置までは伝わらないこと。オペレーターに「いまどちらでしょうか?」と聞かれ、ナビ画面を見ながら、「東京駅のあたりです」と答えなくてはならなかった。

 結局、近くのラーメン屋はいくつかあったようで、3件の情報がヒットした。

 「3件分の情報をお送りします。このあとコントローラー中心のボタンを押してください」

 画面には「ダウンロード」の文字が出ている。コントローラ中心の決定ボタンを押すと、目的地情報のダウンロードが開始された。待つこと1分ほど。受信した3件のデータから、良さそうなお店を選んで決定。あとはカーナビが自動的に案内を始める。

オペレータ接続から、情報ダウンロードまでの流れ。操作は基本的に簡単だが、途中でトラブルが起こったときの対処は難しい。例えば途中で通信が切れた場合、再ダウンロードが必要になるが、その方法は分からなかった。また、目的地データをダウンロードしたあと、すぐに目的地設定を行うのは簡単だが、いったん地図画面にもどってしまうと、ダウンロードした目的地データがどこから呼び出せるのかを見つけるのには戸惑った。ちなみに、オペレーターに操作法を聞いても教えてくれないので、そこにも注意

 気になる料金は新車購入時から3年間無料。あとは通話や通信に使う携帯電話の通話料金がかかる。今回、Bluetooth内蔵端末2機種、ドコモのFOMA「F900iT」とKDDIの「W21T」の2機種で試したが、どちらでも問題なく利用できた。

 気になるポイントは、通信が回線交換ベースだということ。特にFOMAでは、テレビ電話などに使われる64K通信を使うため、データ通信の料金が時間単位となり通話の約1.8倍かかる。またオペレータとの音声通話は、長くかかる場合もあるため、料金は少々気にかかる。

「海に行きたい」に応えるカーナビ

 カーウィングスのような有人オペレータサービスはまさに画期的だ。月額料金が下がったのに加えて、他社が参入してくることで、ますますサービス品質は向上するだろう。

 このサービスはいったん体験してしまうと、普通のカーナビに戻るのがためらわれる。なにしろ、「海に行きたいんだけど……」と言って、行き先を案内してくれるカーナビなんて、まずないのだから。

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