ムーバ時代、“N”端末は、「アンテナの位置まで変えない」といわれるほど、統一したデザインを踏襲していたことで知られる。“おしゃれ”“上品”“ベーシック”といった路線のアプローチで、突拍子もない色やデザインを採用することもなく、そのコンサバティブなところが“N”らしさでもあり、多くの固定ファンをつかんだ理由の1つでもあった。そして900iシリーズからは、新たに「アークラインデザイン」を打ち出し、その人気もすっかり定着してきている。
ところが新モデルの「N901iS」(N901iS記事リンク集参照)では、人気の高いアークラインデザイン(2004年3月の記事参照)をあっさりとやめてしまった。その上ボディカラーも、これまでの路線から一転、複数の色を使ったスリートーンを採用した。
「いったい“N”に、何が起こったのか」──。N901iSの企画を担当したNEC モバイルターミナル事業本部商品企画部の岡本克彦主任、商品企画部エキスパートの溝口民行氏、商品企画部の島村孝博主任に話を聞いた。
NEC モバイルターミナル事業本部 商品企画部エキスパートの溝口民行氏 |
「今までとは違うFOMAを見せたい」──と、開発陣が路線を大きく変えたきっかけは、700iシリーズの登場にある。かつてのムーバ25xiシリーズと50xiシリーズのように、FOMAもハイエンド機と普及機という2シリーズ構成になったが、現状では両者はムーバに比べて機能面での差がそれほどない。
普及機といっても700iは、1世代前の90xiシリーズとさほど変わらない性能を持つため(2月2日の記事参照)、メーカーとしては差別化が難しい。特に、どちらかといえばデザイン志向寄りの90xiシリーズを開発してきたNECは、差別化に苦戦したと見える。販売ランキングを見ても、700iシリーズでは他メーカーに上位を奪われることもしばしばだ(6月17日の記事参照)。
「700iは、90xiシリーズの下位モデルのように捉えられていて、想定しているターゲットユーザーへのアピール向上の余地がまだまだある」(溝口氏)
こうした状況を踏まえて出した解が、「90xiシリーズではデザインと機能のバランスを考慮しながらも、FOMAならではの機能に重点をおいて訴求する」という戦略だ。「かたや70xiシリーズは、デザインやカスタマイズ志向を訴求する。多様化するユーザーの嗜好に応えるべく、両者の攻め筋を大きく変えて商品距離を離していく」(同)
そんな中で生まれたのが、「2.5インチの大画面、フルブラウザ搭載、デザイン一新のN901iS」というわけだ。
NEC モバイルターミナル事業本部商品企画部の島村孝博主任 |
N901iSは、2.5インチの大画面を機能の主軸に置いた。“まず、大画面ありき”で開発したと岡本氏。フルブラウザの搭載も、「ムーバのハイエンド機で採用した2.4インチを上回る、大きな2.5インチ液晶をどう使うか」という観点から決められたという。
デザイン面でフォーカスしたのは、“機能を活かしたデザイン”。ポイントは、FeliCaや大画面液晶、カメラのオートフォーカス機構などを搭載しながら、ボディは薄く仕上げたところだ。
「アークラインにこだわるあまり、元々狙いたかった薄さを表現できなくなるのはいやだったので、そこにはこだわらなかった。ただアークラインの特徴だった“側面から見ても美しいラインを”という部分は、違う形で今回も盛り込んでいる」(島村氏)
側面は、開発陣の間で“逆アークライン”といわれていたデザイン。反るような円弧のラインだ。
新たに採用したスリートーンカラーは、「端末を開いた時の驚き」を演出する。「端末を開くと目に入る、2.5インチの大型液晶が1つの驚き。画面だけにイメージがいってしまうのは面白くないので、キー側にもインパクトのある表現を施した」
全部をスリートーンにするのではなく、ボディカラーごとに、ツートン、スリートーンを用意したところが、NECらしいところだ。「コンセプト色が強いスピリットブラックは、はっきりしたコントラストで新しさを表現したスリートーン。色の異なる部分は質感も変えている。アトランティックブルーは若者を意識したポップな色合い。輝度の高いシルバーと色みの強い青を持ってくることで、スポーティな感じを出している」
エナメルホワイトとクラレットピンクは「こうした色を好むユーザーは、あまり派手なものよりまとまり感のある雰囲気を好む場合が多い」という理由から、ツートンで仕上げている。
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