インタビュー
» 2005年10月31日 15時11分 公開

「P701iD」で生まれた、ユーザー視点の「意識改革」(2/2 ページ)

[後藤祥子,ITmedia]
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 「佐藤氏のコンセプトを形にするためのソリューションはいろいろある。それらを提案した上で、具体化できるのか、量産できるのか、コストに見合うのか──といった点まで佐藤氏と一緒に検討した。インハウスデザイナーや企画・技術スタッフがコンセプトを理解していたのでソリューションも出てきやすく、コンセプトに近づけるための答えを出しやすかった」(富澤氏)

 こうした開発過程を象徴するのが、スピーカーの位置だった。最終製品で側面にレイアウトしたスピーカーが、この位置にこの形で置かれるまでにたどった紆余曲折は、既にお伝えしている通りだ(10月3日の記事参照)

 「当初は使い勝手を考慮して開口部を正面に置いていたが、佐藤氏は拒否反応を示していた。その意志は我々にも伝わっており、何とかしたいと思っていたので、部品そのものの開発をやり直した。薄いボディの中に入るもので、かつ横から音を出しても正面から音が聞こえるような部品を新たに作った」(大北氏)

 側面に置いたスピーカーの開口部には、P901iやP901iSに見られるような補強のための桟(さん)がない。「お客さんが“なんでだろう”と思うデザインをしちゃいけない」という佐藤氏のこだわりを形にした部分だ。「中に支えを立てるなど、外から見えない部分に強度を保持する構造がある。音を出すルートも、これまでは筐体を使って音を外に導き出す構造を取っていたが、これでは背面が押された場合に音が変わってしまう。音が通るルートをスピーカーの部品として作る自己完結型のスピーカーを開発するなど工夫している」

“エンドユーザーが求める何か”を見直すきっかけに

 「お客さんが何を欲しがっているのか、どこに注目しているのか──それを物作りの観点からないがしろにしていた部分があったことに気が付いた。今回のコラボで、お客さんが望んでいるところに対する努力が少しやれるようになった」。大北氏はデザイナーコラボによる開発を、こんなコメントで振り返る。「中でも一番大きかったのは、技術者の意識改革ができたこと」(大北氏)

 「“ちゃんと使えるか、壊れないかと”いうところは、うちの技術陣が得意とする分野。でも“美しいか”といわれると、技術陣がそこまでの意識を持つのはなかなか難しい」

 多くの場合、技術者に求められるのはテクニカルな部分や作りやすさ、コストといったところ。P701iDの場合、技術者レベルで携帯のコンセプトやデザインが持つ意味、そのデザインであるべき必然性までを共通の意識として持ち続けられたところが、これまでとは大きく異なるという。

 「携帯業界や技術トレンドの中で生活をしていると、どうしても技術サイドや物作りサイドからものを考てしまいがちになる。ただ、ユーザー側では、我々が考える“お客さんに対してよかろう”“技術的に素晴らしいものだから受け入れてくれるだろう”とは異なるところを要求していたりする。ユーザーの側に立ったこだわりを持ち続けるためには、意識改革する必要があった」(大北氏)

 富澤氏はコラボによる開発が、幅広い意味で携帯の原点を見直すきっかけになったという。高機能な端末を短い期間で開発しなければならない上、他メーカーとの競争も激化している携帯電話開発の現場では、できあがった端末とユーザーが求めるものとの間でズレが生じることが少なからずあったという。

 「それがいわゆる“業界の常識は一般の非常識”といわれる部分。そこから“携帯は何をするものだったのか、何を求めているから携帯を使うのか”という原点に立ち返ることを今後の開発テーマの1つに掲げている。“見る”“話す”“聞く”“操作”する──。基本的なところで本当に必要なものは何なのかを見直して、今後の携帯に反映させたい」(富沢氏)

黒いボディは「当初はできないと思っていた」

 P701iDの大きな特徴は、背面のボディ越しに丸く光る「ヒカリドロップス」。直進する光をふわっと広がるように光らせるためにさまざまな仕組みを取り入れているという。「光を拡散させたり導光させたり、反射させたり──。中を開けると光を広げるための部材がたくさん入っている」(大北氏)

 ボディの色も、最初は「黒はできない」と佐藤氏に伝えていた。「黒は光を吸収してしまうため、光を広げることはできないと思っていた」。そういいつつも、技術陣はずっと何とかできないものかと方法を探り続け、「あるとき、ふっと広げる方法を見つけた」。決まった開発日程の中で、最後まで技術陣がこうした想いを持ち続けられたことから実現したのが“黒いボディ”だ。

背面を彩る「ヒカリドロップス」の色も難しかった部分。異なるボディカラーの樹脂を通して光るため、何も手を入れないと光の色に微妙な違いが出てしまうのだ。光り方の見映えが変わらないよう、材料や塗料の選定などで工夫している
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