ここでもう一度説明を思い起こすと、青は「守り神」に反応したときの色だ。守り神の定義はよく分からないのだが、たぶん人間に害はおよぼさないだろう。現に、記者のまわりに何人か観光客がいるが、誰も「ううっ苦しいっ」とかうめき出したりはしていない。
面白いことに、境内で何回かボタンを押したが表示は青系が多かった。全体的に“守り神傾向”の強い場所なのかもしれない。靖国神社は戦争と関わりの深い建築物だが、平和な日本に住む現代人には優しい場所だったのだろうか? ともあれ、赤が出ないかぎりこっちは安心であり、ゆうゆうと歩いて帰ってきたのだった。
編集部にもどって、はたと考えた。記者はレビュー方法を根本的に間違っていたかもしれない。以前、夜の靖国神社を見たことがあるが、それはもう雰囲気があって、なんというか「RPGなら中ボスが出てきそう」なムードだった。やはりお化けといえば、夜。相手のホームグラウンドに踏み込まずして、お化けを語るのは言語道断ではないのか?
そこで今度は、「夜の墓地」に向かうことにした。これはかなり上級編である。今思えば何でそんなことをしたのだろうかと思うが、靖国神社が楽勝だったので油断していたかもしれない。向かったのは青山霊園。尾崎紅葉のような文人や、大久保利通のような歴史上の偉人、さらには「忠犬ハチ公」の墓なんてものもある、全国的にも有名な墓地だ。
青山霊園はかなり都心にあって、地下鉄外苑前から数分歩けばたどり着く。普通の道を歩いていると、やがて両脇にお墓が目立つようになってくるので、そこが青山霊園だ。夜中はさすがに人影がまばらで、広大な敷地の中で一人立っているとかなり寂寥感がある。
ここで感想をひとこと、怖い。やはり、墓地は違う。なんだこれは、メチャクチャ怖いじゃないか。あたりの景色をデジカメに収めるのだが、そもそも「夜中にお墓にカメラを向ける」という行為が怖い。変なもんが写ったりしないだろうか。
おもむろに、お化け探知機をとり出す。おそるおそる押してみると……「緑」。なにもないようだ。とはいえ心なしか、あたりに不穏な空気がたちこめているような……。時々後ろを確認したりしながら、進む。
墓地の中心部にたどりつき、再びボタンを押す。結果は「黄」。これは「ちょっとお化け」な状況である。やっぱりヤバイんじゃないのか? お怒りになっておられるんじゃないのか? この時点で記者は、相当逃げ腰になっている。
もう一度、ボタンを押す。「黄」! ここで記者が選択した行動は……“くるりときびすを返して、地下鉄の方向へと引き返す”だった。いやもう、正直ムリです。もしも赤なんかが表示されようものなら、ダッシュしていただろう。滞在時間30分にして、ほうほうのていで逃げ帰ったのだった。
というわけでその後もあちこちで試してみたのだが、全体にいえるのは「赤」と「青」が出る確率は相当低いということ。青は靖国神社以外でめったに出なかったし、赤が出たのはこの原稿を書いている時点で、一度しか経験していない。
その1回とは、自分の部屋でボタンを2回目に押したときだ。――アレ? そうすると、靖国神社よりも青山霊園よりも、記者の部屋のほうが心霊スポットだということか。しまった、ここにきて妙なことに気づいてしまった。自室のながめが、今までとは異なって見える。おそるべし、ばけたんストラップ。今後は、部屋での寝つきが少し悪くなりそうだ。
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