グラスをイメージしたボディデザインと、端末の傾きに合わせて液体がゆらぐ様子を表現したユーザーインタフェースが印象的な携帯電話「N702iS」(7月4日の記事参照)。この、一風変わった端末をデザインしたのが、デザインオフィス「nendo」の代表で、コンセプトクリエーターの佐藤オオキ氏だ。グラススタイルが生まれるまでの経緯や端末に込められた思いについて、佐藤氏に聞いた。
ドコモは701iシリーズを皮切りに、数々のデザイナーコラボモデルを市場に投入している。2006年の夏モデルも、全6機種のうち3機種が著名なクリエーターとのコラボレーションモデルだ(7月4日の記事参照)。こうした一連のデザイナーズケータイを含めた昨今の携帯電話について、佐藤氏はどんな印象を持ち、その中でどんな携帯を作ろうと考えたのだろうか。
「携帯電話は、一家電製品を超えた生活のインフラ。コンビニや駅、タクシーといったものと同じレベルで、生活するために不可欠なものという位置付け」と話す佐藤氏が、N702iSのデザインを依頼されたのはおよそ2年前。auの「INFOBAR」(2003年10月の記事参照)の登場をきっかけに、さまざまなデザイナーズ携帯がリリースされ始めた頃だ。
「さまざまなデザイナーズ携帯が注目を集めるようになっていましたが、このプロジェクトを始めた頃には、また流れが変わってきているのかな、という印象もありました」
すでに携帯電話は必要最低限の機能を満たしつつあり、ユーザーのニーズは機能的なところから、精神的・感情的な部分に訴えるものへとシフトし始めているのではないかと佐藤氏は分析する。
「去年くらいがデザイナーズケータイというもののピークだったと思うのですが、そのときはハードや形状といったフォルムに重点が置かれている印象がありました。N702iSは、第六感に訴えるというか、内部的なところからイメージが出てきていて、これまでの流れとはちょっと違う。“その次”のことができたかな、という気がしています」(佐藤氏)
このユニークなグラス型携帯が生まれたのは、ソフトからアプローチした結果だという。
「携帯電話は高機能化や多機能化でどんどんバージョンアップしていきますが、人間の感性や感覚は、それと同じようにはバージョンアップできないと思っていて、そのギャップを埋めるものとして携帯電話をデザインしたいという思いが最初にありました。その際、外からではなく中から、つまりインタフェースやソフトから考えていったほうが、より感覚的なものになるのではないか、と考えたのです」(佐藤氏)
こうして「ハードとソフトの関係が、グラスとそこに入っている液体の関係に似ている」というイメージが生まれ、今回のグラスデザインに落とし込まれた。これはまた、情報を水になぞらえたイメージでもあるという。
「新しい液体を入れて古くなったのを捨てるとか、振り回すと波打ったり泡立ったり──という関係性は、ハードとソフトの関係に似ています。なおかつ、いろんな表情を持っているけれど親和性が高く、人が違和感なく接することができるのではないかと考えたのです」(佐藤氏)
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