ITmedia Mobile 20周年特集
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» 2006年12月30日 23時58分 公開

番号ポータビリティーがもたらしたもの──3キャリアはどうなる?2006年の携帯業界を振り返る(3)(3/4 ページ)

[聞き手:房野麻子,ITmedia]

ソフトバンクの問題点──ショップ・エリア・スピード感

神尾 ソフトバンクは家電量販店を重視しすぎです。全国規模で考えると、普通は家電量販店と専売店の販売比率が、せいぜい50対50くらいなんですよ。(販売の)7割8割が専売店という地域も少なくない。でも今のソフトバンクは、端末施策にせよ料金施策にせよ、家電量販店ばかりを重視しているように見えます。例えば端末を見ても、専売店はあんなに大量の在庫を抱えられないですよ。端末の種類も多いし色も多い。すべてが家電量販店向けの施策でやっているから、都市部で健闘しても地方や郊外で負けてしまう。この「いびつさ」が、今後の禍根になりそうだと感じています。

ITmedia ショップはお客さんに一番近い部分となる一方、家電量販店は売るだけで、何かあったときに面倒を見てくれません。そういう意味で、ショップは重要なはずですね。

石川 それこそ2年間、端末をずっと使わせようとしているわけですからね。そのためにもショップのケアを大切にしなきゃいけませんよね。

神尾 MNPの貢献の中の1つに、auショップがすごく良くなったことがあります。地域で多少の差はありますけれど、(専売店の質は)ドコモショップとほぼ並んだといっていいと思う。ソフトバンクショップは、忙しそうにしているときに行くと、何もしてもらえませんからね。

 あと、ソフトバンクは基地局展開を甘く見ているように見えます。

石川 そう。

ITmedia 基地局は「作ります」といってポンポン作れるものではないですね。

神尾 端末と違って、工場で大量生産できるものではないし、お金を積めば作ってもらえるものでもない。特に地権者交渉と住民説明会が大変なんですよ。

石川 3月までに4万6000局に増やす(2006年11月の記事参照)のは無理でしょう。

神尾 “まったく”無理です。

石川 3万カ所くらいじゃないかと言われているらしいですね。

神尾 基地局建設は地域コミュニティとのコンセンサスが大切で、そのための組織や人材がドコモやauはしっかりしている。しかしソフトバンクは、ボーダフォン買収後に社員が大量離職したこともあって、「人や地域のつながり」が少なからず寸断してしまった。

 あと、昨年の耐震偽装問題の影響から、マンションやビルへの基地局設置が難しくなってきています。建てやすい場所、建てられる場所にはドコモやauの基地局がすでに建っていて、地主やビルオーナーがこれ以上の基地局設置を拒むケースが多いとも聞いています。

ITmedia ドコモが立てられなかった場所に立てなきゃいけない、ということですね。

神尾 そう。ますます話がまとまりにくいってことですね。基地局は本当に難しくて、それ以外にも色々とデリケートな問題があって、キャリアがちゃんとしたケアをしなければならない。だから、基地局の整備を舐めてはいけない、と言いたい。時間がかかるということを考えておかなきゃいけないですよ。しかもデリケートにやらなくてはいけない。

石川 簡単に裁判が起きますからね。

神尾 それこそ、住民全員が来るまで説明会を何回も開いたりしなきゃいけません。交渉に何カ月もかけるとか。(基地局整備は)スピードが出したくても、無理して出してはいけない領域のひとつなんです。

ITmedia がんばってほしいと思いますよ。だからこそ文句も言うし、批判もする。

神尾 今、ソフトバングに必要なのは、歩調を緩めることですね。スピードを下げる。それが一番大事です。急いで何かをやりたいという気持ちはわかるんだけど、携帯電話事業はどう考えても時間がかかるものだから、それはむしろマイナス効果にしかならない。スピード感を抑えて抑えて、1年後、2年後に反撃のきっかけを作るにはどうしたらいいか、それまで今いるお客さんに、自分たちのお客さんでいてもらうには何ができるのかと考えなきゃいけないと思います。

石川 確かに。

神尾 auだって、ドコモに挑戦できる状態になるのに5年かかったんですよ。ソフトバンクはスタートラインにたったばかり。繰り返しですけど、「焦りは禁物」です。

テレビCMと企業イメージ、そして2007年の課題

石川 ソフトバンクだからって、そうそうすぐできるものじゃないですよね。あと……僕は、なぜあのCMが出てきたのかが、よくわからないんですよね、あのラクロスで「ごきげんよう」CMが……

神尾 あのCMの担当は、(企画時に)お酒でも入っていたんでしょうかね(苦笑)

石川 あれがちゃんと会議で通って、映像化されて、流される、というプロセスがわからないんですよ。誰が見ても最初に、「これ、本当に流していいの?」って言いましたからね。それに、決してソフトバンクのプラスイメージにはつながらない。しかもこのご時世、さんざんいじめ問題がいわれて、漢字の「命」が2006年の一文字になっちゃうのにもかかわらず、あのCMでしたからね。

神尾 「空気を読めよ」以外の何ものでもない。それすらできんのか、と。

石川 そう。また、キミちゃん(他キャリアユーザーに設定されているキャラクター)が可愛いかったんですよ。可愛いだけに、よけい不憫なんですよ。

神尾 石川さんとしては、そこが重要ポイントですね、「可愛いキミちゃんをいじめるな」と(笑)

石川 「大丈夫、僕がウィルコムで話してあげるから。21時以降に電話するから」みたいな(笑)。まあ、とにかくあのCMが、なんで出たかという理由を本当に知りたい。

ITmedia 確かに不可解ですね。

神尾 みんな働きすぎちゃって……

石川 感覚がずれてしまっているのかもしれない。

神尾 ソフトバンクの皆さんに「休養は大切に」と言ってあげたいです。過去のドコモとは別の意味で、現世の感覚から乖離しちゃっていませんかね。

石川 それまでの「予想GUY」とか、キャメロン・ディアスとか、ブラッド・ピットとかは、ブランドイメージにはプラスになっていたように思うんです。実際評判は良かったし、「キャメロン・ディアスだからいいブランド」っていう女性もいましたよ。でもなぜ、あれでカタっと崩れたのかが、う〜ん……。

ITmedia 0円の表記が問題になった他のCMも、修正後のものは文字が全部同じ大きさでバーっと書かれているんですが、ナレーションでは結局0円とか通話し放題としか言っていません。聞いている人には今までのCMと同じですよね。

神尾 文字も小さいですしね。

ITmedia 文字の大きさを全部同じにすればいいという問題でもないですから。

神尾 0円ってそこまでの訴求力はないのに、それにこだわりすぎて失ったものの方が多いんですよ。

石川 結構多いですね、ホントに。

神尾 むしろ、淡々と何もしなかったほうが彼らは良かったのではないかと思う。料金施策はやらずに、エリアに関して堅実にがんばります、という姿勢で、端末だけ充実させた方が伸びたんじゃないかと思うんですけどね。なぜ、「奇襲」とか「桶狭間だ」とか言い出しちゃったのかなあ。

ITmedia 料金プランも、旧ボーダフォンのプランが良かったというわけではありませんが、新しくして、かえってわかりにくくなってしまいました。

石川 「LOVE定額」が二股OKとなっていただけでも、盛り上がっていたような……

神尾 まあね。LOVE定額はなかなか定着しないんですけどね。

ITmedia LOVE定額は一定期間利用すると、(結婚して)ファミリー割引になるか、(別れて)解約か、どっちかですから。

神尾 ともかく、ソフトバンクの来年のやるべきことは……

ITmedia 既存ユーザーにまず、何かほしいです。

神尾 何かというのが、プラスじゃない可能性が考えられちゃうからなあ(苦笑)

ITmedia さらにひどい仕打ちが? 例えば、5年縛りとか(笑)

神尾 しかもそれは、SMSで通知が来て、一定期間内に返信しないと自動的に5年縛り、とか。で、自動的に毎月50円割り引きますってことで(笑)。まあ、こんなことはやらないでしょうけれど、冗談でもそう思わせるというのが、一番の問題なんですよ。今のソフトバンクのね。

石川 そうそう!

神尾 冗談は止めて、ソフトバンク起死回生の策ってありますかね。

石川 真面目に実直にやることだと思いますけれどね。

神尾 とりあえず、MNP後にやってきた施策をすべて見直せ……というところでしょうか。まず見直して、ユーザーの支持が得られるようにしましょう、ということです。端末は評価できますから。

ITmedia 基地局を増やすというのも、方針は間違っていないと思います。着実にやってほしい。

神尾 あと、あらゆる面でのコンセンサスを大事にしてほしい。

ITmedia おそらくすべての事情を把握している人はほんの一握りしかいなくて、ある日突然、上から命令が落ちてくるわけじゃないですか。よく回っているな、と思います。孫さんの頭の中には、すごくたくさんのイメージがあって、まとまっていると思うんです。でも周りの人にしてみれば、結局自分が考えたアイデアではなくて、決定は孫さんになっちゃうことがたぶん多いと思うんです。でも事業は一人でやっているわけではないですからね。

神尾 そういう意味では、もう孫さんはソフトバンクモバイルの社長から引退した方がいいんじゃないかと思う。

石川 おお!

神尾 それは悪い意味で言っているのではなくて、携帯電話事業のプロにソフトバンクモバイルの社長職は譲って、大局的な方向性を考える会長になるべきでしょう。孫さんは大局的にものを見る人であって、フロントラインで細かい指示を出すべき人ではないんじゃないかと、感じているんです。実務レベルで、もうちょっと携帯電話事業に精通していて堅実なビジネスをできるような人が、今のソフトバンクには必要でしょう。携帯電話事業は大きくて複雑だから、孫さんが何もかもやるのは、ちょっと厳しいと思うんですよね。

石川 孫さんが素人の発想で色々やって、ああだこうだと言うのはいいのかもしれないですけど、その周りにちゃんとプロがいないと、というのは確かにありますね。でも、孫さんは今、すごい燃えてますからねえ……

神尾 孫さんがやろとしていることの中で、携帯電話事業は「重要だけどすべてではない」はずです。今のソフトバンクモバイルから一歩ひいたところから道筋を示した方がいいのではないか、と思いますね。

ITmedia 基本的に孫さんはアイデアを出す人、というわけですね。

神尾 そのアイデアが全部間違ってるわけではないとは思うんですけど。とにかく来年は堅実になってほしいですね。

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