表面にステンレス素材を用いた“素材感”と目を惹く極薄ボディが特徴の、世界最薄折りたたみFOMA──。それが、パナソニック モバイルコミュニケーションズ製の「P703iμ」だ。
その厚さは2007年2月現在、折りたたみFOMAとして最薄の11.4ミリ。“ケータイにとって価値のあるデザインは何か”を追求し、たどり着いたというそのフォルムにどのような狙いがあるのか。そして、薄さと機能との両立にどのような開発上の苦労があったのか。パナソニック モバイルのP703iμ開発チームに話を聞いた。
「最近の携帯のトレンドの1つに、“薄型”があります。従来から当社は軽薄短小をテーマにした端末を多く投入してきましたが、“一番小型で一番使いやすい”──この座をほかのメーカーさんに取られるわけにはいきません。パナソニック モバイルが作る薄型はこうだという答え。それが“P703iμ”です」(P703iμプロジェクトマネージャーの林氏)
パナソニック モバイルの薄型FOMAといえば、2005年11月に発表された「prosolid II」が思い出される。prosolid IIはカメラを非搭載とし、アルミニウムおよびマグネシウム素材の採用により厚さ16.7ミリ/重量99グラムを実現。30代から50代のビジネスユーザーなどを中心に、シンプルに携帯を使いたい層に高い評価を得た端末だ。そのため、そのスリム&スクエアなボディ形状から、P703iμはprosolid IIの後継とイメージしたユーザーも多いと思われる。
「いえ。P703iμは何かの後継とは考えていません。この薄さも今まで培ってきた技術を組み合わせて実現したもので、長年仕込んだ努力の結晶という感じでしょうか。prosolid IIの開発において得た経験も大きいことは間違いありませんが、コンセプトやデザインワークなどのアプローチもやや異なる方向で開発を進めました」(林氏)
「ユーザーの嗜好は現在、かなり多様化しています。最近、“薄型”というトレンドの波がありますが、これも単に薄ければいいというものではないと思います。例えば、薄いけど“ぺこぺこしなる”あるいは“重量バランスが悪い”と、とたんに不安/不満感が生じますし、薄くするがために機能を大幅に省略することも望まれないし許されない。デザインワークのアプローチもここがスタートになっています」(商品企画グループの富澤美玲氏)
「その“薄型”に何を付加していくのか──我々はそこに圧倒的な“高級感”を演出したいと考えました。一目見て“おっ”、触れて“あ、いいね”と思ってもらえるような商品にしたいと思いました」(林氏)
“高級感”とはどういうことなのか。人により嗜好は違うと思うが、どんなことが高級なのだろう。
「ここはコンセプトワークの中で大変難しかった部分ですが、“王道”が1つの軸になっています。例えばむりやり薄くしていくと、技術的な制約が生じてきます。そうなると、そのプロポーションも変わっていきがちです。しかしP703iμは“今までと変わらないプロポーション”をあえて目指しました。正面から見ると、今までの携帯と変わらない形状です。カメラやサブ液晶もいつもの場所にありますし、サイズの縦横比も大きく変わりません」(林氏)
「“薄型化”による技術的な制約を、今まで培った技術やノウハウをいかして技術・開発陣に超えてもらいつつ、パッと見、今までのものと変わらない見た目にしたい──でも“予想外に高級だ”と思ってもらうことがポイントです」(富澤氏)
一般的に、機能が少ない/樹脂感/軽すぎる/しなる、などの要素があると安っぽく感じてしまうことがある。prosolid IIが一部のユーザーに評価を得たのも、この“王道”を軸にした、ターゲットユーザーを惹きつける何かがあったためと思われる。同社は、ソフトバンクモバイル向けの薄型端末「705P」(開発者インタビュー/レビュー)に投入した、“メインの制御基板をディスプレイ側に移す/基板を樹脂で固めて強度を増す”などの技術ノウハウをさらに磨き上げ、薄型化とともに強度 イコール 安心感の向上を目指した。
P703iμはprosolid IIより5.3ミリも薄い、11.4ミリの厚さを実現しながら、イン(11万画素COMS)/アウト(130万画素CMOS)カメラのほか、背面ディスプレイ(56×12ピクセル/0.4インチ)や背面着信/充電LEDも搭載する(ちなみにカメラや背面液晶を搭載する705Pの厚さは14.8ミリ。それより3.4ミリの薄型化を実現している)。そのような王道の中に、さらなる薄型化を追求し、かつ高級感を演出する──これが狙いだ。
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