ソフトバンクモバイルの「X01HT」やNTTドコモの「hTc Z」など、Windows Mobile搭載のスマートフォンを供給するHTC Nipponが、新宿駅西口のQ's Cafe内に「HTC モバイルインターネット Cafe」をオープンした。カフェは期間限定で、4月11日から4月30日まで営業する。
店内には3月16日に発売されたホワイトモデルを含む15台のX01HTを設置し、くつろぎながら実機のタッチ&トライができ、必要に応じて同社スタッフから操作や活用方法の説明を受けられる。Webブラウジングなどインターネット接続も自由に行えるが、飲食店内でのマナーを考慮し通話は許可していない。
またカフェの出口付近には、同社の海外向け製品を展示中だ。3GSM World Congress 2007で発表され話題となった「U1000(Advantage X7500)」と、ダイヤルキーとスライド式キーボードを備えるWindows Mobile 6.0搭載端末「S710」(モックアップ)の2つは日本初公開のスマートフォンだ。そのほかFMラジオを内蔵したPDAタイプの「P3350」や、17ミリというスリムなボディにスライド式キーボードを搭載した「P4350」、ノキアの「E61」やBlackBerryのようにボディ表面にQWERTYキーボードを備えた「HTC S620」、ダイヤルキーのみで操作するストレートタイプの「HTC S310」など計6モデルを紹介している。
これまで、キャリアショップでの体感イベントを実施してきたHTC Nipponだが(3月8日の記事参照)、端末メーカー単独でこのようなカフェを開く目的はどこにあるのだろうか? 同社マーケティング部の佐野由香氏は、「まずは“スマートフォン”という存在を知っていただくため」と話す。
世界的なスマートフォンメーカーであるHTCだが、日本ではコンシューマー向けにソフトバンクで1機種、法人向けにNTTドコモで1機種を供給するのみ。同社は、携帯電話先進国でありスマートフォン普及が始まったばかりの日本を、最重要市場と位置付けている。まずは2台目需要や法人需要で足場を築き、コンシューマー層へ打って出たい考えだ。
一方で、日本の携帯電話市場の特殊性にも注意を払っている。
「日本は1億台以上の携帯がある携帯電話大国。しかも、ほとんどの端末がインターネット接続機能を持ち、メールやWebブラウジングが行えます。さらに、カメラ機能やマルチメディアプレーヤーを備えるなど非常に多機能で、海外でスマートフォンと呼ぶような高機能なモデルが安く買える。その上、ワンセグやFeliCaチップを搭載し、そのインフラもサービスも整っている。こんな市場は日本だけです」(佐野氏)
海外の携帯電話のとらえ方は、いくら多機能でもあくまでコミュニケーションツールでありビジネスツールだが、日本では財布になり鍵になり、テレビになる存在。こうした環境に暮らすユーザーが持つ、スマートフォンへの要望とはどんなものなのか? 数々の端末を世界中のオペレータに供給してきたHTCにとって、日本市場の課題は技術面でなくニーズの把握にあるという。カラーバリエーションを増やしたり(3月1日の記事参照)、就職活動中の学生をターゲットにしたプロモーションなどは、ニーズを探るための一環だ(3月16日の記事参照)。
「“これって電話できるんですか?”と聞く方もいる。でも、それだけでも大変ありがたい反応です。今後、より日本市場に合った製品を提供するには、ユーザーの大多数である“スマートフォンを知らない”層の声も重要です」(佐野氏)
Q's Cafeはもともとイベントスペースも兼ね備えた店舗であり、さまざまな利用客が行き交う巨大な新宿駅の中にある。HTC モバイルインターネット Cafeを設置するにはぴったりの場所だった。
ある人がこのHTC モバイルインターネット CafeでX01HTの存在を知っても、すぐに購入に結びつくとは限らないだろう。むしろ、自分の携帯と違う点や、欲しいと思わない点ばかりが目に付くかもしれない。“サイズが大きい”“欲しい色がない”“ワンセグが見られない”……。しかし、今のHTCにとって、こうしたスマートフォンへの不満を直接聞ける場は貴重だ。
「HTCのテクノロジーであれば、よほど荒唐無稽でない限りほとんどの要望には応えられるはず。まずはこのカフェを利用してもらい、X01HTというスマートフォンを知って欲しい。その上で、さまざまな声を聞かせてほしい」(佐野氏)
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