MediaFLOの技術的特徴や今後の展開について話したMediaFLOテクノロジ部門プロダクトマネージメント スタッフ・プロダクト・マネージャのジム・コイヤー氏は、MediaFLOが携帯電話向けにデザインされた放送技術であり、ゼロから新しいシステムを考案したこと、また同技術が単なる技術にとどまらず、サーバからクライアント、チップセットまでを含めた“End to End”のシステムであることを改めて紹介した。
MediaFLOは、開発当初から以下の4つの条件を満たすことを目指していたという。
さらにコイヤー氏はMediaFLOの特徴として、変調方式にOFDMを用いていること、周波数利用効率が高いこと、導入が容易で運用コストはそれほど高くないことを挙げた。レイヤードモジュレーションを採用しているため、電波状態の悪い場所でも最低限の画質(15fps)で、電波状態のいいエリアでは30fpsの高画質で表示でき、市街地などのビルが密集した地域でも幅広いエリアで視聴可能だ。
また、1チャンネルに割り当てるビットレートをフレキシブルに変えられるため、ビットレートが固定の放送に比べ、番組に合わせた画質が設定可能なほか、ライセンスキーを利用した有料放送も容易に行え、1つの周波数で全国的な統一サービスだけでなく、地域別のサービスも提供できる。
さらにコイヤー氏は、MediaFLOのユニークな特徴の1つとして、オペレーションセンターを用意する点を挙げた。オペレーションセンターとは、携帯電話キャリアとは別に設置される、コンテンツプロバイダからコンテンツの供給を受け、配信を行う部門だ。米国では、MediaFLO USAがCBSやComedy Central、FOX、MTV、NBC、Nickelodeonなどから番組の提供を受け、全米に配信する業務をつかさどる。番組の受信に当たっては、対応端末を購入し、携帯電話キャリアと契約を結ぶ必要があり、受信に必要なライセンスキーなどは3Gネットワーク経由でやり取りする。携帯電話事業者自らが番組の収集や配信を行うわけではない。
MediaFLOが受信できる機器の製造は、現在ベースバンドチップのMSMチップセットに加えて2チップ構成のFLOチップセットが必要だが、新チップ「MBP 1600」がサンプル出荷中で、今後は1チップ追加するだけで対応可能になる予定だ。
ちなみにQUALCOMMがMediaFLOの技術やサービスを開発中に想定していた主なユーザーは18歳から30歳の男性だった。彼らはスポーツやニュースに興味があり、通勤の途中や休み時間などに5分から10分程度視聴し、動画の画質についてはそれほど高いとは思わないと考えていたそうだ。しかし、実際にサービスを開始してみると、女性や子供にも好評で、さまざまなジャンルの番組が視聴されているという。平均視聴時間は30分以上で、自宅でもよく視聴しており、画質も8割の視聴者が十分よいと考えている。「この点には非常に驚いた」とコイヤー氏は話した。
なお現在はあくまでも携帯電話向けのサービスとしてのみ展開しているが、「今後は“モバイルテレビ”だけにとどまらず、さまざまな可能性を考えている」(コイヤー氏)という。
「携帯電話は基本的に使ってないときはポケットに入れ、その存在を忘れてしまうデバイスだ。モバイルテレビが本当の意味で成功するためには、テレビから違うサービスに誘導できるようなシステムを作らなくてはいけないだろう。インタラクティブ性などを持たせ、テレビを見ながらSMSでアンケートに答えたり投票をしたりできるようなシステムだ。例えばMTVを見ていて、視聴者が楽曲やアーティスト情報を取得したい場合などに、インタラクティブな方法で何かを提供できないかと考えている」(コイヤー氏)
テレビ番組のライブ配信だけでなく、番組ごとにバックグラウンドでダウンロードしておける「クリップキャスティング」にも注目しているという。「クリップキャスティングは、番組を自分の都合、タイミングに合わせて視聴できる。好きなとき、時間があるときに見られるので、とてもパーソナライズされた“マイテレビ”になる。今後はクリップキャスティングも非常に重要な配信スタイルになっていくだろう」(コイヤー氏)
さらにコイヤー氏は、携帯電話だけでなく、車載用のテレビや、ポータブルメディアプレーヤーやポータブルゲーム機などとの融合も視野に入れていることを明らかにした。具体的な製品化の予定はないものの、ベースバンドチップMSM6550とFLOチップセットを組み込み、1.8インチのディスプレイを搭載した手のひらサイズの小さなMediaFLO受信デバイス「v.card」を試作しており、手軽にMediaFLOが楽しめるデバイスの普及にも期待を寄せた。
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