ドコモとゼンリンデータコム、資本提携の狙いとは? ──NTTドコモに聞く神尾寿のMobile+Views(1/2 ページ)

» 2007年08月15日 07時00分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 GPS機能の普及や液晶の大画面・高解像度化などが追い風になり、携帯電話向けのデジタル地図関連サービス市場が急拡大している。

 この分野の草分けはKDDIとナビタイムが協業する「EZナビウォーク」であり、2003年のサービス開始以来、着実にサービスを進化させて利用者数を拡大してきた。KDDIのauがGPSの標準搭載を推し進めてきたこともあり、“GPSケータイと言えばau”というイメージを確立。今ではauの先進性を構成する分野の1つにまで成長している。

 そのような中で、NTTドコモとゼンリンデータコムが業務・資本提携をすると発表した(6月4日の記事参照)。ゼンリンデータコムは住宅地図の大手ゼンリンを親会社に持ち、携帯向け地図サービスも手がけている。そこにドコモが出資し、関係を深めるという。

 ドコモは今回のゼンリンデータコムとの協業で、どのようなシナジー効果を狙うのか。また、この分野で先行するKDDIにどう対抗していくのか。

 NTTドコモ プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部コンシューマーサービス企画コミュニケーションサービス企画担当課長の正垣学氏と、同コミュニケーションサービス企画担当の山田俊之氏に話を聞いた。

Photo NTTドコモ プロダクト&サービス本部マルチメディアサービス部コンシューマーサービス企画コミュニケーションサービス企画担当課長の正垣学氏(左)と同コミュニケーションサービス企画担当の山田俊之氏(右)

ドコモが提供するのは「デジタル地図」のみ

 あまり知られていないが、携帯電話におけるGPSの活用では、ドコモの方が歴史が古い。同社は1990年代後半に、1995年に誕生したアメリカの位置情報ベンチャー企業SnapTrackとともにGPS携帯電話向けサービスの開発に着手。KDDIよりも先に、携帯電話におけるGPS活用を模索している。しかし、2000年に米QualcommがSnapTrackを買収。また当時のドコモもGPS分野のサービス開発に消極的になり、iモードとの連携や主力ラインアップへのGPS搭載は長期にわたり棚上げされた。

 一方、KDDIは、旧SnapTrackの技術やノウハウをQualcomm経由で手に入れ、ナビタイムと協業しながら独自のサービス開発を行った。その結果、GPSとデジタル地図の活用と先進性において、ドコモはKDDIに水をあけられることになってしまったのだ。

 しかし、ここにきてドコモも再びGPS分野に注力し始めた。2006年冬に発売されたFOMA 903iシリーズ、そして2007年夏のFOMA 904iシリーズにはGPS機能が標準搭載されており、ゼンリンデータコムもしくはナビタイムの地図ナビゲーションアプリがプリインストールされている。また、これらGPS機能を内蔵したFOMAでは、アプリを使わなくてもiモード上で位置と地図の確認ができる。だが、ドコモでは、これらのGPS関連サービスの利用促進という点で、課題も多く感じていたという。

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 「我々としては、より多くの人にGPS機能を活用していただきたい。しかし、最もシンプルな(iモードブラウザでの)位置と地図確認は、地図のスクロールがスムーズではないなど、必ずしも使い勝手がいいとは言えないと感じていました。そこで『もっと使いやすい地図サービス』を作りたいと考えたわけです。ゼンリンデータコムとの提携の背景には、そういった理由があります」(正垣氏)

 また、これはKDDIとナビタイムの協業のように、デジタル地図やGPSナビゲーション分野で幅広く“キャリア提供型のサービス”を展開し、ともすれば他のサービスプロバイダと競合する形とも違うという。903iシリーズ登場時から、ドコモはGPS分野でキャリア提供型サービスを用意するのではなく、プラットフォーム提供に徹してサービスプロバイダと等距離な関係を築くとしてきたが、「そのスタンスは今後も変わらない」と正垣氏は話す。

 「ゼンリンデータコムとの協業は、(GPS関連分野に対する)スタンスを変えたわけではありません。我々としては“デジタル地図そのものがプラットフォーム”という考えを持っています。ですから、ドコモとして提供するのは“基本地図サービス”の部分です」(正垣氏)

 GPS関連サービスでは、(1)デジタル地図、(2)GPSナビゲーション、(3)位置・地図情報活用のサービスやコンテンツがあるが、ドコモが提供するのはデジタル地図の部分と地点情報の検索のみであり、GPSナビゲーションを筆頭とする付加価値サービス分野には手を広げない。GPSナビゲーションなどのサービスは、ゼンリンデータコムやナビタイム、インクリメントPなど複数の企業がサービスを提供し、競争する環境が残るという。

 「(ゼンリンデータコムとの提携に関する)一部報道では“ドコモがGPSナビゲーション分野に進出、無料でサービス提供する”という書き方をされていましたが、それは誤りです。ドコモが提供するのはあくまで地図関連のアプリとサービスのみで、これは今後のGPS携帯電話全機種にプリインストールする予定です。しかし、そこ(地図アプリ)からGPSナビゲーションのアプリへの遷移については、ゼンリンデータコムだけでなく、ナビタイムやインクリメントPのアプリにも導線が張れる形を考えています」(正垣氏)

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