固定/移動/通信の融合が進むと、その先には家電との連携という世界が広がる。その場合、家庭内にホームネットワークを整備することが重要で、それがFMBCの基本だと伊藤氏は指摘する。
「ホームネットワークで、テレビやカメラ、エアコン、冷蔵庫、PC、ビデオが全部つながり、互いの連携ができるようになる。出先で録画の予約をしたり、冷蔵庫の中に何が入っているかをチェックしたり、エアコンを適温にしておくこともできる」(伊藤氏)。
さらにこうした利用が進むと、連携は家の中だけにとどまらず、ほかの家庭との間での連携も求められるようになると伊藤氏。「例えば家にある面白いビデオを、携帯から友達の家に送るようなこともできるようになる」(伊藤氏)
ここで重要になるのが、“誰がネットワークにアクセスしているか”を識別するための認証だ。ホームネットワークの認証については、各通信事業者のネットワーク間/機器間のスムーズな連携を視野に、「携帯3社や家電メーカーと話をしながらプラットフォームを作ろうと考えている」という。またKDDIとしては、Digital Living Network Alliance(DLNA)のホームネットワークを作り、家庭内のビデオをさまざまな場所から視聴したり、ビデオを友達との間で自由に転送したりする実験を行っており、CEATECのブースでも実験の成果を披露した。
携帯網と固定網をIP化し、1つのネットワークでまとめるというウルトラ3G構想の中では、次世代固定ネットワークをどうするかも重要な課題だ。伊藤氏はインターネットとNGNの共存/連携をどうするかが鍵になるとし、そこで重要なのはP2Pとオーバーレイネットワークだと説明する。「ここがうまくNGNの上に取り込まれるかどうかが1つのキーになる」(伊藤氏)
ネットワーク上のコンピュータが相互に接続して情報をやりとりするP2Pは、現状ではファイル転送などの利用が主流だが、「今後はアドホックネットワークを作ったり、グループウェアのコラボレーションなどの用途に向けた安全なクローズドネットワークを作るといったことが重要になる」(伊藤氏)。携帯網でもP2Pに関するニーズが高まっており、さまざまな利用を想定して開発を進めているとした。
次世代ネットワークでは、各種の通信規格が統合に向かい、その上でさまざまなサービスが展開されることになる。伊藤氏は、こうした融合の時代に重要なこととして、3つの要素を挙げた。
1つは携帯のブロードバンド化に伴うエージェント化。これまでにも、携帯がパーソナルゲートウェイ化に向かうという話は出ていたが、それがさらに進化してエージェントになりつつあるという。「自分の分身となってあちこちで作業をして戻ってくる、エージェントの役割を携帯が担うようになる」(伊藤氏)
2つ目は、次世代インターネットに対する取り組みだ。ワールドワイドでNGNが語られるようになる中、インターネットとNGNの共存/連携をどうするかが事業者の今後を占うポイントになると見る。
3つ目は、遅延の少ないネットワークをいかに構築するか。これまでのインターネットはノンリアルタイムのベストエフォートでも問題視されることはなく、少しの遅れは許容されていたが、SNSやメールコミュニケーションの活性化が進む中では「リアルタイム性をしっかりしないとサービスにならない」とする。「最近の若い携帯世代は、実はもう、リアルタイム文化に浸っている。安全で遅れの少ないネットワークをいかに実現するかが、キャリアとしてのキーワード」
KDDIとしては、FMBCを推進する中で携帯のワイドバンド化とエージェント化を進め、それを支えるプラットフォームを構築する計画。NGNについては、インターネットの進化を見ながらP2Pをどう使うかを検討し、最適なネットワークを構築する考えだ。「すべての可能性のあるテクノロジーを使ってリアルタイムを目指し、今後のサービスを提供していきたい」(伊藤氏)
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