デバイス部門、家電部門との連携と“初”へのこだわり──シャープが見通す携帯の未来Symbian Summit Tokyo 2007

» 2007年11月08日 12時21分 公開
[園部修,ITmedia]

 Symbian OSを搭載したドコモ向けFOMA端末を開発している端末メーカー各社が集ったSymbian Summit Tokyo 2007。MOAP(S)プラットフォームを有効活用し、幅広い端末ラインアップを展開するシャープからは、常務取締役 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏が登壇し、シャープの端末開発へのこだわりと携帯電話のこれからの進化について語った。

国内最後発の端末メーカーからシェアナンバーワンへ

photo 常務取締役 通信システム事業本部長の長谷川祥典氏

 シャープが携帯電話事業に参入したのは1994年。国内メーカーとしては最後発での参入だった。携帯電話事業が大きくなり、成長軌道に乗ったのが、カラー液晶搭載端末を開発した1999年のことだという。その後、2000年にカメラ内蔵端末や世界初のTFT液晶搭載端末などを投入。“カメラ内蔵、TFTカラー液晶搭載”という、今や当たり前になっている携帯の流れをシャープが確立した。

 ドコモ向け端末の開発に本格参入したのは2002年で、翌2003年に業界初のメガピクセル(100万画素)カメラを搭載した端末を発表した。OSにSymbianを採用したのは2005年からだ。

 シャープの端末開発の特徴は、“世界初”や“日本初”、“オンリーワン”にこだわっている点にある。ユーザーに新しい利便性を提供するための、こうした“唯一”の製品開発を実現できた理由が、垂直統合モデルによる端末開発と通信事業者との連携、そして開発スピードの速さだ。

PhotoPhoto シャープのドコモ向け端末開発は、2002年にムーバ初のカメラ内蔵ケータイとして登場したSH251iからとなる。シャープ製端末は“初”へのこだわりを持って開発されている

 特に、シャープは自社でさまざまなデバイスを開発しており、これが“初”を実現するのに大きな力になっていると長谷川氏は言う。たとえばAQUOSケータイ「SH903iTV」ではモバイルASV液晶を筆頭に、白色LED、バックライトの自動調光システム、赤外線通信モジュール(IrSimple対応)、カメラモジュール、ワンセグモジュールなどがシャープ製だ。デバイス部門との連携により、他社に先駆けて先進のデバイスが搭載できる。

 またAV機器や情報機器を扱う他事業部と連携した技術融合により、特徴的な製品が多数生まれてきている例として、携帯電話と液晶テレビの融合で生まれたAQUOSケータイ、MebiusやZaurusといった情報機器と携帯電話の連携で生まれたスマートフォンなどを紹介した。

PhotoPhotoPhoto シャープならではのオンリーワン商品開発には、デバイス部門との連携、そして他の商品部門との連携が重要な鍵を握っている。デバイス面では、数々のデバイスを自社開発している垂直統合モデルが有効に働いているという。またAQUOSやZaurusといった他の機器と連携して、高機能な端末開発にノウハウを生かしている

 この“オンリーワン”商品の展開がユーザーに高い評価を受け、2001年度には10%だった市場シェアは、2005年度に16.3%に増えて国内1位の座を獲得。2006年度もさらにシェアを21%に伸ばして引き続き国内ナンバーワンの座にある。

Photo MM総研の調べによると、シャープのシェアは2005年度と2006年度で国内ナンバーワン

シャープが考える携帯の進化

 自社の強みを最大限に生かして、今や国内ナンバーワンの端末メーカーになったシャープは、携帯電話の進化をどうとらえており、どう進化させていくのか。長谷川氏の講演では、その一端も紹介された。

 長谷川氏は、携帯電話の進化には大きく2つの方向性があるという。1つが端末単体での進化で、もう1つがネットワークやサーバ、サービスと連携した進化だ。「今後は単純に“いい端末”という個別の価値ではなく、サービスも含めたシステムの価値が求められるようになる。ユーザーニーズを満足させるためには、いろいろなしくみが必要になってくる」(長谷川氏)

 端末の進化という点では、ワンセグの標準機能化とユーザーインタフェース(UI)の進化、そしてニーズ・嗜好の多様化が大きなポイントだ。

PhotoPhotoPhoto 「ワンセグは標準機能になる」と長谷川氏。UIはさらに重要な要素になり、セグメント特化型端末も多く登場すると見る

 “携帯電話”の名が示すとおり、かつてケータイは電話のための機器だった。しかし、メール機能やWebブラウザ、写真/画像、映像、テレビ(ワンセグ)と、メディアのリッチ化が進んでいる。特にワンセグは、2007年7〜8月には推定搭載比率が36.6%と、携帯電話の約3分の1にまで搭載され、標準機能になりつつある。最近は視聴スタイルも多様化しており、“ワンセグが見やすい”ことを考慮した端末の形状も生まれた。家電メーカーが自社の液晶テレビのノウハウや技術を携帯に融合する取り組みを積極的に行っており、今後もワンセグの多様化と多機能化が進む。

 2007年6月29日に発売されたiPhoneが携帯電話業界に与えた影響も、無視できないものだと長谷川氏は指摘した。タッチパネルによる直感的な操作や、グラフィカルで動きがあり、エンターテインメント性の高い魅力的な画面表示などによって、UIに関する注目度がさらに高まった。「タッチパネルのUIがどう進化するかはまだまだ未知数な所もあるが、iPhoneを研究した上での進化も起こるだろう」(長谷川氏)

 また今後は、キッズ向けやシニア向け、ビジネス向けなど、特定の用途に特化した端末も増えていくという。たとえばシニア向けであれば文字を拡大表示できるような機種であったり、ビジネス向けであればフルブラウザやQWERTYキーといったPCライクな機能、操作性に対するニーズを追求した機種など、特定セグメントのニーズに合わせた端末が伸長すると予想する。

 さらに、もはや端末の進化だけではカバーできない点もあるとして、ネットワーク化が重要になるという見解を示した。

PhotoPhoto ホームネットワーク内の家電などとの連携や、ビジネスユースでのイントラネットとの連携なども視野に入れて端末を開発していくという

 現在シャープでは、IrSimple(高速赤外線通信)を利用したシャープ製端末と液晶テレビAQUOSの連携のような単純なものだけでなく、家庭内のAV機器や家電との連携によって生まれる携帯電話の新たな価値に注目しているという。その理由は「家電と連携することで携帯電話を使いやすくする機能だけでなく、携帯電話と連携することで家電もより使いやすくなる、という時代が来る」(長谷川氏)と考えているからだ。

 企業内では、会社あてのメールを携帯で見たいというニーズも顕在化しており、イントラネットなどへ接続する機能を持った携帯というのも出てきている。シャープでは、こうした機能も今後は欠かせなくなるだろうと見る。昨今はセキュリティ強化の観点から、会社からPCを持ち出せなくなるケースが増えている上、携帯電話自体も個人用と会社用を分けるような使い方も出てきた。「そんな時にどんな携帯がいるか、どんなサービスがいるかを考え商品を作っている」(長谷川氏)

 長谷川氏は「今後は誰もが24時間肌身離さず持っていて、常時電源が入っている唯一の電子機器として、携帯電話は“モバイルライフツール”へと進化していく」と話す。新たな機能の融合やシームレス化、ウェアラブル化、生活スタイルとの密着などのキーワードを挙げ、まだまだいろいろなものが携帯電話と融合していくとの考えを明らかにした。

Photo 携帯電話は“モバイルライフツール”へ進化する

シャープがプラットフォームに求めるもの

 こうした機能の融合や進化を着実に進めていく中で、問題になっているのが競争環境の激化による端末開発サイクルの短期化と端末バリエーションの増加、ネットワークの高速化による必要な処理量の増大と処理速度の高速化だ。またユーザーからはさらなる低価格化に対する要望と品質に対する高い要求もある。そのため開発現場の負荷はかなり高いものとなっている。

 これらの問題を解決するために、プラットフォーム化はとても有効な手段だと長谷川氏は言う。特にソフトウェアの開発効率が向上する高機能OSは「切り札」となる。同氏は高機能OSの重要性はこれからもさらに高まると指摘する。

 シャープがプラットフォームに求めるのは、市場の要求条件に応じて常に進化し続けることだ。ネットワーク機能やマルチメディア機能の強化、動作パフォーマンスの向上、消費電力の低減、安定性の向上などは、継続的に行なわれる必要がある。さらに、実際の端末開発の場面では、開発スピードと安心、コストという3つの点が重要になる。エコシステムの構築や機能のモジュール化による開発効率アップ、安定性やセキュリティ向上による安心感、そして開発負荷の軽減とロイヤリティの低価格化によるコストダウンが必須だからだ。長谷川氏はSymbianに対し、この点を継続的実行してほしいと要望した。

 また、プラットフォームを構築する際には、コア技術と拡張機能のスムーズな融合が必要であり、そのためには拡張機能のフレームワーク構築が大切になる。このフレームワーク構築は、現在主にOSベンダーが行っているが、「そのOSを使って独自機能などを追加する端末ベンダーやソフトウェアのミドルウェアベンダーなどの知識も取り入れ、拡大・循環させることで、融通の利く拡張性、スピードなどが実現できると思う」と長谷川氏は話した。

PhotoPhoto 端末の高機能化やインフラの進化により、ソフトウェアの開発工程は増大している。しかし競争環境の激化にともない開発期間は短くなり、それでいて低価格化も求められる。ソフト開発の効率化の切り札として、高機能OSは重要だと長谷川氏は話す。さらに、プラットフォームはOSベンダーだけでなく、端末メーカーやミドルウェアベンダーなどのノウハウも融合していくべきだとした

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