3.1インチのフルワイドVGA液晶に、回転式十字キーの「スピードセレクター」を搭載したスライドケータイ「D905i」。一見すると、従来モデルとデザインが大きく変わっていないようにも見えるが、細部にはさまざまな改良が施され、カラーリングもトレンドを意識したものになっている。
D905iインタビューの前編では、デザインへのこだわりと使い勝手を向上させるための改良点について、三菱電機の開発陣に聞く。
D905iは、三菱電機が「D901i」からハイエンドモデルに採用し続けているスライド型を踏襲した携帯電話。常に表に出ているメインディスプレイ、円形の十字キー、十字キーの両脇に位置するソフトキーというスタイルを貫いており、デザイン的に一定のイメージが定着しているようにも思える。
スライドモデルは表に出ている限られたエリアの中に、メインディスプレイと十字キー、6個のソフトキー、クリアキーをレイアウトすることになるため、折りたたみ型に比べてデザインを大きく変えるのが難しい形状ともいわれている。D905iのデザインを担当した三菱電機デザイン研究所の山名新二氏は「確かにそういう側面はある」としながらも、「フロントのデザインは操作性を考えて、ポリシーとして変えていない」と説明する。
「従来モデルのデザインをベースとして作っているわけではなく、デザインは常に進化させていこうという意識でやっています。フロント部分はデザインの話ではなくて、機能的な要因が大きい。メインの操作を基本的に変えていないので、インタフェース上のポリシーとして変えていないんです」(山名氏)
「分かりやすい変化より、スライド端末としての完成度が大事」だと話すのはNTT事業部の荻田良平氏。「“ボタンの形を変えたり”といったことも、開発の段階ではいろいろ試していますが、“パッと見て変わったことが分かる”デザインがいいかというと、そうでもないような気がします。それよりは、使い勝手を含めた全体的な完成度の高さに意味があると思います」(荻田氏)
D905iをじっくり眺めると、端末のイメージや使い勝手を意識した細かいこだわりがあることに気づく。D905iは前モデルのD904iのような一体感を意識したデザインではなく、ディスプレイパネルを囲むフレームと、その下の操作部のパネルが別パーツで構成されている。これは両者の差を出すために意図的に分けられたものだ。また、各ボディカラーの持つ個性を際だたせるため、フロントキー部分のパネルに波形とフラットの2タイプの形を採用するというユニークな試みを行った。
「波形の方は少しカジュアルで優しく、心がなごむような雰囲気を出しています。フラットの方はメタリック感を強調した高級な雰囲気を狙いました。雰囲気作りを重視して、2つのタイプのパネルを用意しました」(山名氏)
波形のパネルを搭載したのは、4色のボディカラーのうちオレンジイエローとナチュラルホワイトの2色。ウェーブはパッと見ただけでは違いが分からないほど微かなもので、“形を主張する”というよりは、実際の使いやすさや使いやすさを感じさせるイメージをを重視したものだという。「実は、使ってみて初めて分かる、細かいこだわりが結構あります」(井上氏)
90xiシリーズはフラッグシップのハイエンドモデルであり、デザイン面でも高級感をアピールする端末が多い。しかしD905iは、高機能という言葉のイメージからくる緊張感や先鋭的なイメージを極力排し、人に優しい雰囲気や、親しみやすさを持つ端末作りを目指したという。三菱電機の90xiモデルは、男性ユーザーが多い90xiシリーズの中でも女性に人気が高く、D905iでもその流れを引き継いだ格好だ。
「フラッグシップが好きなイノベーター層だけではなく、もっと幅広いユーザー層に支持してもらいたい。『D902i』も、大画面の薄型モデルで最新の機能を盛り込んでいましたが、ポップな黄色いボディカラーやラウンドフォルムが、最先端の機能をちょっと違ったように見せてくれたと思います。それと同じような狙いです」(山名氏)
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