携帯キャリアと有識者が考える“携帯向けマルチメディア放送サービスの在り方”「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」第6回会合(2/2 ページ)

» 2007年12月21日 13時46分 公開
[石川温,ITmedia]
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MBMSを導入する上でも配信に適した技術が必要──ソフトバンクモバイル

 ソフトバンクモバイルは、この先コンテンツがリッチ化することで、周波数不足や設備投資増加の懸念があることから、「ブロードキャストの技術が必要不可欠である」との意見を述べた。

 ソフトバンクモバイルでは、今後MBMS(Multimedia Broadcast and Multicast Service)の導入を予定しているが、MBMSは現状のネットワークの容量の一部を割く必要がある。そのため、「大容量コンテンツの配信には不向き。配信に適した技術が必要だ」(ソフトバンクモバイル)と語る。

 技術方式に関する質問では「日本もしくは世界で、標準化されている技術の採用が不可欠。周波数が効率的に使える技術が望ましい」とした。資本関係のない放送事業者からの要望への対応は「具体的な要望があれば、そのビジネスメリットをもとに検討する」という。

マルチメディア放送サービス検討に重要な4つの点──NRI 北氏

 続いてビジネス分野の有識者として、構成員でもある野村総合研究所の北俊一氏が登壇した。

 北氏は、今回のマルチメディア放送サービスを検討するうえで、4つの視点が重要だと説いた。

 まず1つめは「ゴールをどこに置くのか」という点だ。北氏は「我が国におけるICT(Information and Communicatio Technology/情報や通信に関する技術)の国際競争力向上がゴール。さらに国民の福祉向上が図れることが望ましい」と語る。端末(携帯電話)のグローバルシェアの拡大とともに、地域の防災やコミュニティメディアとして両立することが大事だという。

 2つめのポイントは「誰が事業主体となるのか」。これから恩恵を受けるであろう端末メーカーや携帯電話事業者、放送事業者などがリスクを負い、イニシアティブをとっていくべきだと話す。

 さらに3つめとして「時間軸を強烈に意識すべき」だと語る。マルチメディア放送が始まるのは、早くても2011年のアナログ停波以降になる。そのころには、モバイルWiMAXや次世代PHSが始まり、携帯電話も3.9Gとなり、LTEやUMBが始まっている可能性がある。これらの高速通信とどう棲み分けて、いかに競争優位性を築くことができるかが重要だとの考えだ。

 そして最後が「規格選択の考え方」だ。これまで日本では、PDCやW-CDMAにおいて、「ガラパゴス化現象」に陥ってきた。ここから脱却するには「国際共生力」を高める必要があり、日本がアメリカやヨーロッパと戦うのではなく、アジアで仲間作りすることが大切だという。南米ではISDB-T方式の採用に向けて活発な活動が行われており、この活動をアジアでも展開すべきだとした。

基幹性も統一規格も不要──日本総合研究所の倉沢氏

 もう1人、有識者として登場したのは日本総合研究所の倉沢鉄也氏。「ビジネスモデルは、ユーザー人数×時間×払えるお金×必然性でほぼ自動的に決まる」として、そのビジネスに最適な制度や技術も自ずと選ばれてくるだろうと説いた。

 倉沢氏は、過去の調査データを元に、「日本人は減少傾向にあり、総視聴時間も減る。課金はもちろん、広告効果、メディア収入も減っていく」「ワンセグは国民的番組をどうしてもリアルタイムに観たいときだけの“緊急”の道具にすぎない」「日本人は多チャンネル放送を見ていない」「映像に支払える金額には限界がある」と、一刀両断。

 「ユーザーを理解し、ユーザーに身を委ねることが大切だ」と語り、腰を据えて事業を展開できる会社が、帯域内で自由にやればいい、だから基幹性も統一規格も不要だと主張した。その上で、「既存の放送事業者も、ケータイキャリアも、ネットのIT企業も、メディアのマネジメントが決して上手ではない。これから出てくる若者に委ねるべき」と語った。


 なお、第7回目の懇談会の開催日程は、別途告知される。次回はこれまでの経緯をふまえ、議論が展開される予定だ。

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