モバイル市場活性化のために、選択肢と多様性を増やしたい──総務省 谷脇氏に聞く神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)

» 2008年01月08日 14時25分 公開
[神尾寿,ITmedia]
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 むろん、現行制度ではMVNO側の「課題」や「障壁」となる部分も存在する。特に取引条件面や交渉で、MNO側に優位性がある点は見直す必要があると谷脇氏は指摘する。

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 「今の電気通信サービスの“原価(コスト)”には、端末販売をはじめとする販売奨励金が上乗せされていて、これが既存キャリアが設定する『接続料』や『回線卸し価格』の算出根拠に含まれている。このままですと、MVNO事業者はMNOのインセンティブ負担が加味されて算出されたコストを負担させられることになります。MVNOの参入促進と公平性確保の観点からも、(既存キャリアの)電気通信サービスの原価からインセンティブを抜く形に会計規則を改めなければなりません。これは電気通信事業会計規則の改正として2007年度中に行います。

 また、MVNO標準プランの策定は、これまで“MVNO参入はしたいけれど、投資額が見えない”という不透明さを改善するものです。標準的なプランを策定して透明性を増しますが、これはMNOとMVNOの相対交渉を否定するものではありません。標準プランの策定により、(MVNO)新規参入の負担額が見えればビジネスモデルの検討がしやすくなる。モノサシとなる標準プランをお作りいただくことで、MVNO参入が検討されやすくなる環境整備をしたいのです」(谷脇氏)

 これらの環境整備を行った上で、谷脇氏が登場を期待するのが、データ通信やコンテンツサービスを主軸とした「日本型のMVNO」だという。

 「欧米のMVNOというと、音声再販モデルで格安料金を売りにしたサービスが多い。我々が推進したいのはそれらと違う日本型のMVNOなんです。

 音声再販中心ですと、MNOとの競合関係になる。しかし、データ通信サービスが中心ならば、さまざまな形で付加価値をつけられます。(価格競争で)モバイル市場全体を縮退させるような形ではなく、市場全体の裾野を広げて拡大する方向で、MVNOの新規参入が活性化していく必要があるでしょう」(谷脇氏)

2008年、総務省の活動は?

 昨年、総務省はモバイルビジネス研究会の設置など、市場活性化のために積極的な取り組みを行った。しかし、同省の市場活性化に向けた取り組みは、モバイルビジネス研究会での議論やモバイルビジネス活性化プランの策定で終わったわけではないと、谷脇氏は言う。

 「(2008年は)昨年の活動をきちんとフォローアップしていく活動が大切だと思っています。まず、近日中にモバイルビジネス活性化プランの評価会議を立ち上げたい。これは(業界と直接的な利害関係のない)第三者の有識者によるもので、活性化プランの進捗状況や、見直しをすべき項目があるかなどを議論する場とします」(谷脇氏)

 評価会議の既存のモバイルビジネス活性化プランをベースにするものであるが、議論の行方によっては、内容の見直しや項目の追加もあり得るという。

 「モバイルビジネス活性化プランの再評価は多角的に行いますが、特に販売代理店の議論は重要なテーマの1つだと考えています。

 昨年の段階でも、この業界の発展に占める販売代理店の果たしている役割は大きいという問題提起がなされて、スタッフの資質向上のための資格認定制度を設けてはどうか、といった議論がありました。これ(資格制度)については引き続き進めていきたいと思いますけれど、それだけで十分だとは思っていません。

 2008年早々にも、消費者保護の観点から、どういった(販売分野の質向上と市場活性化)施策を講じていくのが有効かについて、研究会を設けたいと考えています。この中で販売代理店に対して、政策的にサポートできることがあるのかないのかも含めて、もういちど議論していきます。昨年段階の施策で十分だとは私どもも思っていません」(谷脇氏)

 もう1つ今年、注目のテーマになるのが、各種契約時に販売代理店に支払われる奨励金だ。これは昨年、見直し議論があった端末販売に伴う奨励金とは別のものであり、通称「契約インセンティブ」として今も残されている。

 「各種契約に伴うインセンティブについては、何も携帯電話に限ったものではなく、通信サービス全般に定着しています。これを我々が是正していくかという議論には、相当慎重な姿勢で臨まなければならないと思っています。

 契約インセンティブはキャリアにとって“販売コスト”ということになりますから、競争がしっかり行われているかという市場環境整備の観点から見ていくべきものだと認識しています。単純にこれを引き下げればいい、というものではありません」(谷脇氏)

 各種契約に伴う奨励金は、通信サービスの販売代理店にとってビジネスモデルの主幹をなすものであり、総務省は「そこに総務省が口出ししたり、是正を促すのは適切ではないのではないか」(谷脇氏)という考えだ。しかし、その一方で、端末販売の奨励金と同様に、各種契約に伴う奨励金は、携帯電話の利用料金や回線コストの透明性を損なう要因になっている。そのため“透明性を増す”というアプローチで、この部分の見直しを図る。

 「利用料金とインセンティブの関係が透明性を増していけば、利用者がキャリアを選ぶときにも、料金体系が妥当かどうか、納得できるものかが分かりやすくなります。また、総務省では(キャリア以外の第三者が)公平なスタンスから、携帯電話の利用料金比較をするサービスの支援制度なども考えています」(谷脇氏)


 2007年、携帯電話・PHSの契約総数は1億の大台を突破し、市場規模は成熟の極みに達した。一方で、技術革新は続いており、携帯電話の性能やサービスはさらに進化していく。未来を見据えたモバイル市場の活性化は、「ユーザーの利益拡大」と「モバイル産業の持続的成長」のためにこれまで以上に重要になるだろう。

 モバイル市場の“公平な審判”として、この分野の健全な成長に貢献できるか。2008年、総務省の役割は、昨年以上に重要なものとなりそうだ。

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