EU圏向けのMediaFLO端末を初公開、PC向けUSB接続型の展開も想定──クアルコムブースMobile World Congress 2008

» 2008年02月14日 06時41分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
photo 展示されていた歴代のQUALCOMMチップを搭載する端末

 Mobile World Congress 2008のクアルコムブースは、同社が推進する携帯向けマルチメディア放送技術「MediaFLO」やAndroidによる動作デモ、携帯用ノイズリダクションシステム、複数のHSPAキャリアを束ねて高速化する「HSPA+」技術、そして次世代のOFDMAデモなど、商用化間近から近未来の技術まで幅広く展示する。

 すでに米国で商用サービスとして展開するMediaFLOは、国内でもサービス実用化に向けた屋内実証実験などが実施され「あとは“電波”関係をクリアするだけ」(説明員)という具体的なところまで来ているという。Mobile World Congress 2008会場では、6MHz帯を用いるアメリカや日本向けとは異なる、ヨーロッパ圏向けの8MHz帯を用いる実機も初めて展示した。

 全30チャンネルほどで展開するMediaFLOは、映像の動きによってビットレートを随時変動させることで限られた周波数帯を効率的に使う仕組みが特徴の1つ。チャンネル数が比較的多いため、携帯キャリアだけでなく、コンテンツホルダーとしてもビジネスチャンスにつながる。

 また、国内では対比して語られることも多い、無料のワンセグ放送。MediaFLOはワンセグとの排他サービスではなく、共存できるものと想定されている(ワンセグとFLOを1チップにまとめた第2世代のFLOチップセットもすでに開発)。無料サイマル放送のワンセグに対し、携帯向けコンテンツの1つとしてモバイル向けプレミアム映像を購入する、あるいはコンテンツプロバイダ(例えばEZwebサイト)の月額会員になる、というようなイメージだ。それは、無料の地上テレビ放送のほかに、スカパー!やWOWOWなどに加入する人もいるといったシチュエーションに置き換えると分かりやすい。

 同じく並列して話題に上りやすいモバHO!が国内でそれほど普及しないのは、携帯キャリアの1サービスとしてではない単独のサービスとして展開するという、ビジネスモデルの考え方の違いによるものかもしれないと説明員は述べている。

photophoto 各国各キャリアの端末でMediaFLOを実演。8MHz UTMSによるヨーロッパ地域向けのMediaFLOも今回、初めて公開。会場内に設置した設備で実際に受信するデモが行われた
photophoto そのときの映像の動きによりビットレートを随時可変させることで、限られた帯域を有効に活用する。空いた帯域にはデータキャスト(例えば株価情報データを配信し、待受へ表示)や蓄積配信(例えば、ある時間帯に放送波経由でダウンロードし、後ほどローカルで視聴)を組み合わせて提供する、ストリーミングだけではない活用も想定されている(左)。Windows OS(MobileやVistaを含む)向けのUSB外付けタイプも展示。このプロトタイプは受信のみであり、送信も含めた課金システムや仕組みを確立しなければならず、かつ販売チャネルもどう設けるかといったハードルはあるが、ビジネスモデルさえ確立できればハードウェア的な実現は容易だという

 基本的な考えは「携帯キャリアがモバイルコンテンツサービスの1つとしてユーザーに提供する」ことであり、「広告収入がほぼすべてテレビ局に行ってしまう」ワンセグ放送とはビジネスモデルの根本が異なるのがポイントだ。携帯キャリアとしても「テレビ受像器を“コストをかけて配る”」より、収入につながるサービスも展開したいと考えるだろう。

 なお、KDDIとクアルコムが出資する「メディアフロージャパン企画」やソフトバンク傘下の「モバイルメディア企画」といった企画会社により、サービス提供の可能性が長期に渡り検討されている。国内でサービスが始まるのであれば、auとソフトバンクモバイル端末の多くで対応すると予想される。実際、モバイルメディア企画は「(地上アナログ放送が停波する)2011年まで待つつもりはない。2009年中に部分的にでも開始したい」と述べている。

photophoto クアルコムの「MSM7601A」チップセットで展開する、Windows MobileとAndroid端末のデモも展示。「基本のBREWベースのプラットフォームもやりながら、Windows MobileやAndroidもきちんとサポートする」(説明員)
photo 通話マイクのほかにもう1つマイクを搭載し、入力音の遅延などを演算することにより周囲のノイズを消すというノイズリダクション機能「Fluence」。騒がしい場内かつ意図的に装置でノイズを発生した環境下でも相手の声が驚くほど“普通”に聞こえる。市場投入済みのチップセットにもすでに機能は含まれているとし、マイクを1つ追加するだけで容易に実現できるので、現在、携帯キャリアやメーカーに売り込み中だという。クアルコムチップを搭載するau端末には、ぜひ標準で搭載してほしい機能だ

 そのほか、HSPA+技術は次世代規格としてドコモなどが推進するLTEとは別に、比較的容易に通信の高速化が望める、ごく近未来の技術。KDDIの「EV-DO Rev.B」などが代表的だが、電波(キャリア)を複数束ねて“太い1本”にするマルチキャリア方式を採用する。

 既存のインフラと互換性を保つのがポイントで、例えば都市部で増強した設備は“つながりやすさ”と同時に、帯域が空いているときはそれを“高速化”に切り替えることが可能。実施した設備投資をいかしながら、いかにユーザーが望む高速化に応えるかも、世界的な規模で見ると現実的な選択肢の1つといえる。

photophoto 5MHzのキャリアを複数束ねて高速化する「HSPA+」技術。増強した設備をいかしながら、効率的な面展開ができるのが特徴
photo 16Mbpsほどで通信
photophoto もちろん、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)のデモも実施。最大288Mbpsの速度を実現し、電波状況が悪くなってもQoSにより特定の通信のための帯域(例えば映像ストリーミングなど)を確保する
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