まるで“すずり箱”――「らくらくホン プレミアム」はこうしてデザインされた

» 2008年03月17日 20時20分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 NTTドコモが行った「らくらくホン プレミアム」「らくらくホンIVS」「らくらくホン ベーシックS」の発表会では、NTTドコモ 執行役員 プロダクト&サービス本部 プロダクト部長の永田清人氏、富士通 常務理事 モバイルフォン事業本部副本部長の大谷信雄氏、そしてデザイン監修を行った日本デザイン研究所所長の原研哉氏らによるトークセッションが催された。永田氏が「本音で物を言えた」というらくらくホン プレミアム開発の裏側を、3人のコメントから垣間見た。

photophotophoto 閉じると“すずり箱”のように見える「らくらくホン プレミアム」。カラーバリエーションは、アクティブなシニア層をターゲットとしたブラックとレッド、そしてらくらくホン定番のゴールドという3色。メタリック塗装で仕上げるなど、上質感を演出している
photo NTTドコモ 執行役員 プロダクト&サービス本部 プロダクト部長の永田清人氏

 目指している方向は一緒だが、それゆえ、意見の対立もあった――。らくらくホン プレミアムは、従来のらくらくホンの使いやすさを継承しつつ、ワンセグや国際ローミング(3G+GSM)、3メガカメラ、おサイフケータイといった905iシリーズなみの機能を備えている。永田氏は、“高機能でも使いやすく”という相反する問題をクリアするため、NTTドコモと富士通、そして原研哉氏の3者が真正面からぶつかって取り組んだと振り返る。

 「幸い、私と大谷さん、原さんは年齢も近く、同世代と言える間柄。新機軸のらくらくホン プレミアムを生み出すのにあたり、本音の話し合いができた。信じる物がそれぞれあり、いい形でコラボレーションできたと思う」(永田氏)

 大谷氏も「最新機能を搭載しつつ、らくらくホンの使いやすさを実現するのは非常に高いハードルだった」と話す。らくらくホン プレミアムはそのフォルムから分かるように、2007年秋冬でモルの「F905i」をベースにしている。F905iは、「F903i」で採用した“ヨコモーション”を進化させつつ、3.1インチの大型ディスプレイ、さらにワンセグや3メガカメラ、3G+GSMの国際ローミングといった機能を搭載している。厚さも21ミリと、F903iの厚さ24ミリからスリム化した。

photo 富士通 常務理事 モバイルフォン事業本部副本部長の大谷信雄氏。「らくらくホンは海外にないタイプの携帯電話。将来、海外進出した時は重要なブランドになるだろう」

 「F905iも相当苦労した端末で、ようやく実現した厚さ。機能面に加え、特にデザイン面では原さんから“ここが気に入らない、ここも気に入らない”と、かなり厳しいご指摘を頂いた」(大谷氏)

 F905iの背面パネルは、ヨコモーションを支える部分が金属調パーツで縁取りられている。また、ダイヤルキー側ボディは2色一体成形技術を使ってツートンカラーとなっている。特にこの2カ所について、原氏はシンプルなデザインにするよう改善を求めたという。また、ヨコモーション機構の段差を減らすことや、端末を閉じた際のすき間を小さくすることも強く訴えたという。

 「できあがったものは“すずり箱”のようなシンプルなデザイン。何度も試作を繰り返し、すずり箱になってようやく(原さんから)OKがでた。らくらくホンは、機能をいかに押さえ込み、優しく使ってもらうかがポイントだった。控えめなデザインにすることで、“プレミアム”な機能とデザイン、そして使いやすさを実現できたと思う」(大谷氏)

photo 日本デザイン研究所所長の原研哉氏

 原氏は「らくらくホンはすごく重要な機種」と切り出し、「今や、成人人口の半数は50歳以上。シニア向けだからといって手はぬけない。きちっとした仕上がりが必要だ」と意気込む。しかし、どんなこだわりがあるかというと、「こだわらないことにこだわる。それがらくらくホンのデザインコンセプトだ」と解説する。原氏は携帯電話のインタフェースが変化しつつあることにも触れ、らくらくホンのデザインを通じて携帯電話全体のデザインを考えたいと語った。

 「今後、若者向けの携帯電話には、タッチパネルやタッチセンサーが今以上に搭載されるだろう。しかし、出っ張っている物を押すというボタンの良さは変わらない。シンプルでこだわらないデザインが長続きするものだ。プッシュボタンは、大きさや形状、位置やボタンの間隔を工夫することでインタフェースとしてもっと長生きできると思う。らくらくホン プレミアムも、いかに無駄なアールを落とすか、いかに必要最小限のでっぱりにするか、といった検討を繰り返した」(原氏)

 こうして完成したらくらくホン プレミアムについて原氏は「富士通さんには、“すずり箱みたいで面白くない”といわれたが、それでいいと思う。今は、なにもなくて普通であることが、一番先進的。らくらくホンのデザインは、野球のピッチングに例えると、そこそこのスローボールをストライクゾーンのど真ん中に投げるようなもの。基本すぎて誰もやらないようなこと」と感想を述べた。らくらくホン プレミアムのユーザーに対しては「50歳以上の人のコミュニケーションに奥行きを与えたい。らくらくホン プレミアムで能動的にコミュニケーションをしてほしい」とメッセージを投げかけ、トークセッションを締めくくった。

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