「EM・ONE」や各種データカードなど、これまで発売されたイー・モバイル端末はそれぞれSIMカード(EM chip)を入れ替えて利用することができた。「EMONSTER」も同社のSIMカードを差し替えて、複数の回線を使い分けることができるのだろうか。そこで、EM・ONEのSIMカードをEMONSTERに装着してみた。

EMONSTERのSIMカードスロットはディスプレイの裏側にある。QWERTYキーボードをスライドさせれば見えるため、アクセスしやすい(左)。「圏外」表示になるが、接続先を“emb”に変更することでHSDPA通信が可能に(右)結論から言うと、データ端末としての利用は可能だ。イー・モバイルの音声端末向けパケット通信サービス「EMnet」に加入していると、端末の接続設定が“EMnet”になっている。これを、あらかじめ用意されている“emb”に変更すれば、問題なく通信が行える。
ただし、接続先を変更すると、EMnet経由のアクセスが必要なサービスは利用できなくなるので注意が必要だ。例えば、SMSやEMnetメールなどのプッシュメール、EMnetサービス向けのWebサイト、EMONSTER用のNAVITIMEが利用できなくなる。それ以外のネット接続は、おおむね問題なく利用できるようだ。
また、音声端末としての利用もできなくなる。電話番号は装着したSIMカードのものが使われるが、着信はできず、電話をかけた相手には「現在使われておりません」という旨のメッセージが流れる。これはEM・ONEの時と同じだ。
逆にEMONSTERから発信しようとしても「処理が失敗しました」というメッセージが出て発信できない。緊急通報だけはできるかもしれないが、これはさすがに試しようがないので、今回は未検証だ。
では、逆にEMONSTERのSIMカードをEM・ONEに挿すとどうなるのだろうか。試してみたところ、EM・ONEのSIMをEMONSTERに装着したときと同様、そのままではイー・モバイル網を使ったネット接続はできなかった。
ただこれも、接続先をembではなくEMnetに変更すれば、ネット接続が可能になる。設定はEM・ONEの「HSDPA設定」内で行う。初期設定では接続先が「w1.emb.ne.jp」となっているが、“w1”を削除し、「emb.ne.jp」に変更すれば、ネット接続が可能になるという。
EMONSTERは、SIMロックフリー端末の発売実績があるHTC製の端末だ。同じイー・モバイル同士であれば利用可能だったが、他キャリアのSIMカードを差し替えて使えるのだろうか。

今回用意したSIMカード。左からイー・モバイルのEM・ONEとEMONSTER、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル(ボーダフォン時代のもの)。EM・ONEとEMONSTERでSIMカードの色が違うことに注目(左)。ドコモのSIMカードを挿したところ。やはり圏外表示で利用できない(右)試してみたところ、NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、auといずれのSIMカードを挿しても利用できなかった。圏外表示になり、発着信やデータ通信のいずれも利用できなかった。
EMONSTERがサポートする3G規格はW-CDMAの1.7GHz帯のみ。au網は別規格のCDMA2000を使うため利用できず、W-CDMAの2GHz帯を使うソフトバンクモバイル網も周波数が違うため接続できない。ドコモは一部のエリアで1.7GHz帯をFOMA(W-CDMA)用に使っているが、イー・モバイル広報によると、ドコモの1.7GHz帯の周波数とイー・モバイルの1.7GHz帯の周波数は帯域が異なるため、SIMカードをEMONSTERに装着しても認識しないという。EMONSTERで国内他キャリアのSIMカードを使うことはできないようだ。
EMONSTERについては、イ−モバイルの音声サービス発表会見で同社社長兼COOのエリック・ガン氏が「EMONSTERはSIMロックフリー端末」と紹介している。しかし同社広報によると、「イー・モバイル端末は購入時のSIMカードが接続された状態でのみサポートする」とのことだ。
GSMによる国際ローミングは今後提供予定だというが、現時点で海外のキャリアのSIMカードを使い、海外で利用できるかどうかについても不明だ。ハードウェア上の仕様としてSIMロックフリーかもしれないが、実際にSIMカードを差し替えて利用するのは自己責任になる。
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