インタビュー
» 2008年04月15日 18時34分 公開

「うちの端末もこんなに薄くなるんだ」と驚かれた、auの薄型ワンセグ──「W61P」 (3/3)

[房野麻子,ITmedia]
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ボードモールド工法と前2モデルの積み重ねがあったからできた薄型化

 W61Pにはもう1つ、「今、望まれる機能“も”しっかり搭載したスリムケータイ」という大きな開発テーマも存在する。ミドルクラスのモデルであっても多彩な機能を搭載するau端末の中にあって、機能やバッテリー容量を大きく削ってまで薄型を追求するのはパナソニック モバイルのau端末として本筋から外れる。そのためW61Pには、ワンセグもEZ FeliCa、GPS、さらに最近は省かれたり統合されることもあるフォトライト(撮影補助用ライト)や独立した平型イヤフォン端子も備える。

 「auのWIN端末初号機のW51Pは、ドコモのP703iμと同時期に出たこともあり、“結構厚いね”と言われました。もちろん最初から薄型で行きたかったのですが、2007年2月当時は正直、au携帯向けにそれを投入できる技術がありませんでした。3機種目でようやくここまでたどり着きましたね」(増田氏)

photophoto 前モデルW52P(厚さ18.4ミリ)の基板と比較(左)。ボードモールド工法と部品の厳選、配置の工夫などによりこれだけ薄くできる。W61Pの中身はこのようになっている(右)
photophoto 特に分かりやすく進化したのが通信用のアンテナ。左からWIN初号機のW51P、W52P。そしてペラペラになったW61Pのアンテナ

 au端末はドコモやソフトバンクモバイルとは通信方式が異なり、QUALCOMM製チップを中心に共通部品として決まっているものが多い。また、パナソニック モバイルが長年開発し、ノウハウの蓄積があるドコモ端末と異なり、搭載する部品が大きく違う初めてのWIN端末が“難産”であったことは想像しやすいことである。そのため、3機種目でここまで洗練した端末を見たKDDIの担当者を「ウチの端末でもこんなに薄くなるんだ」とびっくりさせたという。

 「基本チップは共用できませんが、弊社の持つ薄型化のための“工法”のノウハウは存分に駆使しました。その1つである、“ボードモールド工法”がなかったら、これほどの薄型化は達成できなかったと思います」(大平氏)

 ボードモールド工法は、基板に実装した部品の間を樹脂で固めて基板自体の強度を上げる技術。ソフトバンクモバイルの「705P」で初めて採用し、ドコモの9.8ミリ極薄端末「P705iμ」にも採用する。W61Pも、コンマ数ミリでも小さな部品があればそれを選び、調整を重ねて厚さ12.9ミリの薄型化を実現した。

 「いまでこそ安堵感でいっぱいですが、開発中は絶体絶命という時が何度もありました。薄型化の追求が大テーマだったので、何か問題が生じてもサイズを大きくして解決──というわけにはいきません。部品の配置は“ここ以外は絶対ありえない”ほどまで夜通し煮詰めました。この基板、120%のできです。我ながら惚れ惚れするくらいです(笑)」(増田氏)

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photophoto 多くスペースを取る部品はカメラとスピーカー、そしてmicroSDスロットなどだろうか。底面にある通信/充電端子はバッテリーで分断されるので、ダイヤルキーのフレキシブルプリント基板を経由してつながっている

 単に部品を寄せ集めて組み立てればとりあえず形にはなるかもしれない。しかし部品1個1個の特徴やくせ、ノイズ発生レベルなどを把握し、計算して配置しないと、薄型化を実現するための基板はできないという。

 「CADの設計図は数倍に拡大して作業するわけですが、この中でカードスロットがとてつもなく大きくてじゃまなんです。なんとかならないかと思いましたね(笑)」(増田氏)

 このカードスロットとは、爪ほどのサイズの超小型メモリカードであるmicroSD用のスロットのこと。携帯は、いかにミクロの世界で設計されているのかがうかがえる。

 また、薄型化を追求した結果、通信用アンテナも3機種目で非常に小型化した。かつて通話時にはホイップアンテナを延ばして使っていた時代もあったが、今ではペラペラのフィルムだ。

 「auが使う800MHz帯のアンテナは結構大きくなりがちです。パッと見るとありきたりの形状のように見えますが、形状の1つ1つに、1ミリ1ミリに意味があります。置く場所や長さ、周りの条件など、こうなっているからきちんと性能が発揮されるという合わせ込みになっています」(増田氏)

今後の課題──KCP+、高解像度ディスプレイ

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 スリムボディに機能やノウハウを凝縮して完成したW61P。au端末としての今後の課題は、端末のテーマを今後どう設定するのかということと、ワイドVGA以上の高解像度ディスプレイや新プラットフォーム“KCP+”の採用といった、さらなる高機能化への取り組みが望まれる。

 「大きくていいならできると思いますが、ケータイなのでサイズとのバランスが重要です。W61PはKCPプラットフォームがかなり完成されたものなのでうまく作れましたが、果たしてKCP+でできるかとなると、同じように苦労があることでしょう。取り組みたいとは思っています」

 「高解像度ディスプレイのニーズも痛いほど理解しています。こちらも苦労することは同じですが、高解像度化は必須だと思っています」(増田氏)

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