懇談会の報告書案を提示──割り当て方法、事業者数、技術方式などは将来に含み「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」第13回会合

» 2008年05月21日 15時49分 公開
[石川温,ITmedia]
PhotoPhoto 第13回目の携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会の模様(左)と座長の甲南大学法科大学院教授 根岸哲氏(右)

 総務省が5月20日、第13回目の携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会を開催した。2011年に停波する地上波アナログテレビ放送の空き周波数帯の活用方法や、空いた周波数帯を利用するにあたってのビジネスモデル、社会的役割などをテーマに、制度面と技術面の課題を検討しており、一定の方向性を示すのが目的だ。

 第13回会合では、これまでの議論を踏まえ、事務局側が報告書案としてまとめ、内容の確認が行われた。報告書案は全6章で構成されており、周波数の割り当てや制度のあり方、今後のスケジュールなどが記載されている。

全国向けマルチメディア放送、地方向けデジタルラジオ、新型コミュニティ放送の実現へ

 まず報告書案では、新たな放送を実現するための基本的な考え方が提示されている。それによると、地上アナログテレビ放送が終了し、周波数帯に空き地ができる2011年頃のメディア環境、諸外国における携帯端末向け放送に対する動向、国民のニーズや関係する事業者の考え方を踏まえる必要があるとしている。

 その上で、新たな放送に求められる要素として、移動受信を前提とした携帯端末向けの放送であること、またこの移動端末というのは、実際には携帯電話が有力視されていることが改めて示された。なお受信用端末の多くが携帯電話になることから、全国どこででも使えるサービスが必要であり、かつ、地域情報を提供する放送も実現できるように考慮すべきとの方針を示した。

 放送の内容は、映像や音声の組み合わせ、リアルタイムとダウンロード型の提供形態を柔軟に選べることが必須としている。

 これらの視点をもとに、携帯端末向けのマルチメディア放送は「全国向けマルチメディア放送」「地方ブロック向けデジタルラジオ放送」「デジタル新型コミュニティ放送」の3つタイプを実現するのが適当だとまとめている。

全国向け放送はVHF帯ハイバンドの割り当てを提言

 MediaFLOやISDB-Tmmが狙う全国向け放送での周波数割り当てについては、参入を検討している事業者からのヒヤリングにより、「単一のチャンネル(SFN/Single Frequency Network)で、5年後までに90%を超える世帯カバーを実現でき、かつSFN混信があってもすべて対応できる」という回答が得られたため、「全国放送については、SFNの単一チャンネルのみを用いる方法により置局を行うことを前提として周波数帯域幅を割り当てる」のが適当と定めた。

 割り当てられる周波数は、全国向け放送については、携帯電話と関連性の高いビジネスモデルが想定され、携帯電話へのアンテナ内蔵が可能と見込まれる周波数が望ましいという理由から、V-HIGH(VHF帯ハイバンド/170M〜222MHzのうちの207.5M〜222MHz)を割り当てることが適当であるとした。また地域ブロック向け放送はV-LOW(VHF帯ローバンド/90M〜108MHz)の割り当てが望ましいとしている。

割り当て方法、事業社数、技術方式の結論は先送り

 懇談会の行方で最も注目されていた、実際の割り当て方法、事業者数、技術方式などについては、報告書内で限定することはせず、将来に含みを残した記述となっている。

 例えば、ハードウェア事業者に関しては、1つに限定すれば全体の設備投資が少なくなり、ガードバンドの確保が原則不要になるなど、周波数の有効利用が期待できるとしている。しかし、事業者を2つにすれば、サービスエリアのカバー率や屋内の受信環境の向上について効果が期待できるとした。さらに現在、参入を検討している事業者が複数になっても事業性を確保できると考えているならば、ハード事業者を2つにすることもあり得るとしている(ちなみに3つ以上となると、周波数の有効利用の観点などから現実的ではないと言及)。

 国内での携帯端末向けマルチメディア放送の規格を統一すべきか、という課題に関しても、報告書案では2つの考え方を示した。

 まず、国内規格を1つに決定すれば、全国向け放送と地方ブロック向け放送を1つの端末で受信できる可能性がある。これが実現すれば、受信端末の低廉化や普及が期待できる。一方、複数の国内規格が認められていれば、事業者が複数の技術方式の中から最適と考えるものを自由に選べる。そのような環境になれば、事業者間の競争が起き、利用者の利益につながる可能性があるとした。

 その上で報告書では、現在国内で導入が検討されているISDB-T系、DVB-H、T-DMB、MediaFLOはいずれも基本的に技術的な優劣の差はなく、またこれによって実現できる放送に差はないと考えられることや、海外では基本的に複数方式を導入している例は少ないという事情を紹介。仮に複数の技術方式が国内規格とされた場合でも、いずれかの段階で、技術方式が統一されることが望ましいとして、「事業者にこうした点についての多面的かつ充分な検討が求められる」と、決定権は事業者にゆだねる書き方になっている。

 今後、具体的な国内規格の決定については、総務大臣の諮問に応じて、情報通信審議会で検討する方向だ。

今後は技術方式の公募、情報通信審議会での検討へ

 これからのスケジュールとしては、技術面では早急に国内規格とする技術方式の公募等を行い、2008年中には、設定した要求条件を満たすものについて、情報通信審議会で検討を開始した後、2009年中に関係の省令を定める必要があるとした。またそれと並行してARIB(電波産業会)において、標準規格や運用規定のとりまとめが早期に行われるようにしたい考えだ。

 今回の報告書案を受けて、出席している多くの構成員からは「一時はどうなるかと思ったが、よくまとまっている」と、作成した事務局に謝意を表していた。実際、何度か非公開で懇談会が開催されているが、その際には構成員の間で、かなり議論が混沌とし、まとまるかどうか危うい状態にあったようだ。そうした経緯を経ているだけに、構成員からは一様に「よくまとまった」という声が上がった。

 今回、技術方式を統一せず、含みを満たせた形になった理由は、世界的に見ても次世代マルチメディア放送の情勢が変わることも考えられ、事業者がギリギリのタイミングまで検討できるように配慮したものだと思われる。

 なお、この報告書案は今週末までに公開された後、約1ヶ月間、パブリックコメントの募集が行われる。集まった意見を踏まえて、次回7月10日に第14回目の懇談会が開催される予定だ。

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