価格競争力に強み、「日本の端末メーカーの世界進出をサポートしたい」――インフィニオン 横山氏ワイヤレスジャパン2008 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)

» 2008年07月09日 07時00分 公開
[元麻布春男,ITmedia]
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強みは“価格競争力”、日本メーカーの世界進出にも「貢献できる」

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ITmedia 日本の携帯電話機メーカーに、インフィニオンとして貢献できる点はなんでしょう。

横山氏 なんといっても価格競争力です。Infineonは携帯電話用のRFチップだけで2006年に2億3000万個、2007年に2億9000万個を出荷しました。こうしたスケールメリットの強みと、ワンチップソリューションの提供を積極的にすすめていくことで、インフィニオン製品の価格競争力は極めて高いと考えています。

 ワンチップ製品も単にワンチップ化するだけでなく、いかにして周辺チップの数を減らし、基板の実装面積を縮小できるかに気を配っています。例はEDGE対応品になりますが、2006年に発表されたXMM2010プラットフォームは、CMOSのRFトランシーバ、パワーマネージメントチップ、ベースバンドプロセッサの3チップ構成でした。が、2007年に発表したXMM2060で、この3チップを1チップ化することに成功しました。その結果、部品コストが最大30%下がっただけでなく、基板面積の20%縮小、部品点数の15%削減が実現しています。

 しかし、やみくもにワンチップ化を行えば良いというものではありません。(ムーアの法則で進歩していく)アプリケーションプロセッサと、国際規格の標準化や各国政府の法規制の問題があるベースバンドでは、自ずと進化の速度や方向性が異なります。技術や規格が十分成熟する前にワンチップ化を行うと、かえって使いにくい製品になってしまいます。そのあたりも見極めた上でワンチップ化を進めていくことが重要です。

ITmedia どんな製品分野であっても価格競争力は重要ですが、特に携帯電話市場で価格競争力が重要になる理由について教えてください。

横山氏 総務省の指導等もあり、今後国内の携帯電話市場ではSIMロックが後退し、よりオープンな競争になっていくと思われます。世界の他の地域に比べて、現在の国内市場は極端にハイエンド志向の強い市場になっています。ヨーロッパや北米でも、ハイエンドの端末は存在しますが、同時にモノクロ液晶を使った安価なエントリー機も共存しています。これらは国内市場には見あたりません。

 市場がオープン化していくと、現在のようなハイエンド一辺倒という市場のあり方も変わらざるを得なくなるのではないでしょうか。そこでは今以上に端末のコストが問われることになるでしょう。コストパフォーマンスの悪い端末では生き残っていけません。

 国際的な競争に鍛えられた当社の製品は、そのコストパフォーマンスに自信があります。また、端末の価格競争力が高まることで、国内だけでなく海外の市場でも端末を販売するチャンスが増えるでしょう。インフィニオンは、コスト競争力を助けることで、日本の端末メーカーが世界市場へ復帰するのを助けられればと願っています。

ITmedia 世界市場ということであれば、インフィニオンの経験が役立つ機会も増えそうですね。

横山氏 普段、国内で利用している携帯電話を、海外旅行時にもそのまま持ち出して利用する「世界携帯」のようなサービスが注目を集めています。世界の大半の国や地域で利用されるのはGSM/GPRS/EDGE方式の携帯電話であり、世界携帯と言えばこの方式に対応可能な電話を指すことが大半です。これはインフィニオンが最も高い競争力を持つ分野です。

Photo InfineonのGSM/GPRS対応チップセット「X-GOLD101」

ITmedia 最近の注目といえば、いわゆるスマートフォン、さらにはもっと大型のMID(モバイルインターネットデバイス)のような製品が挙げられると思うのですが、インフィニオンのアプローチはどのようなものでしょうか。

横山氏 スマートフォンやハイエンド携帯電話市場分野における当社の特徴は、この市場で不可欠となるアプリケーションプロセッサを手がけていない、ということです。競合する製品を持たないため、Marvell、Samsung、NVIDIAなどの主要なアプリケーションプロセッサベンダーすべてと良好な関係にあります。したがって端末メーカーがソフトウェアの都合を優先して、自由にアプリケーションプロセッサを選んでいただいても、ほとんどの場合に当社のRF/ベースバンドソリューションと組み合わせることが可能です。

ITmedia インフィニオンは、自社で半導体の生産設備を持つメーカーですが、ファウンダリの利用も発表しています。どのような戦略なのでしょうか。

横山氏 現在、Infineonの製品は、通信市場向けも含め、大半を自社の工場で生産しています。が、CMOSのRFチップも含め、サンプル出荷が始まった65ナノメートル世代からは台湾のUMCやシンガポールのChartered Semiconductorなど、海外のファウンダリを積極的に利用していく計画です。パワーICなど、自社のファブで製造した方が良い製品は自社での生産を継続しますが、そうでない製品は製造をファウンダリ企業に任せることになるでしょう。自社の生産でなくてはノウハウが生かせないということはありません。

ITmedia 最後に現在最も注目されている新技術を1つ紹介してください。

横山氏 期待される新技術の1つにソフトウェア無線(SDR)技術があげられます。ソフトウェアの更新により、1つのハードウェアで複数の通信標準に対応可能なSDRは、今後の発展が期待されている技術です。

 65ナノメートル CMOSプロセスで製造されるX-GOLD SDR 20は、GSM/GPRS/EDGEさらにはW-CDMA/HSPAやLTEといったGSM系の通信規格に対応するほか、衛星通信やWi-Fi、モバイルTV規格(DVB-H/SHなど)にも対応できる見込みです。

 1つのハードウェアでありながらソフトウェアで複数の規格に対応できるということは、複数の規格に対応した製品を小型かつ安価に提供できるだけでなく、将来新しい規格が登場した場合も迅速に対応できる可能性を秘めています。注目の新技術に違いありません。

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