イー・アクセス、アッカを連結子会社化――モバイルBB事業に注力

» 2008年07月31日 19時48分 公開
[平賀洋一,ITmedia]
photo イー・アクセス代表取締役社長の深田浩仁氏(写真=左)とアッカ・ネットワークス代表取締役社長の須山勇氏(写真=右)。「8年間競争してきた相手との提携に感慨深いものはあるが、わだかまりはない」(須山氏)、「アッカは最良のビジネスパートナー」(深田氏)

 アッカ・ネットワークスとイー・アクセスは7月31日、DSL設備の譲渡、保守・バックヤード業務の統合を含む、業務と資本の提携を発表した。

 アッカは8月15日をめどに、イー・アクセスに対し普通株式の第三者割当増資を行い、イー・アクセスの連結子会社となる。アッカを含むイー・アクセスグループはDSL市場で22%のシェアとなり、シェア37.8%のヤフーBB(ソフトバンクBB)に次ぐDSL事業グループが誕生する。

 2社は現在、個別でISP向けにADSL回線などのホールセール業務を行っているが、9月1日にイー・アクセスのDSL設備をアッカに33億円で譲渡。回線設備の保守・運用のほか、レンタルモデムなどの端末物流、カスタマーサポートなどのバックエンド業務もアッカが一元的に行い、効率化を図る。今後イー・アクセスは、アッカに設備使用料を払って、DSLサービスを継続する。

 業務の統合はバックエンドのみで、両社が展開するDSL/FTTH/MVNO事業のサービスとビジネススキームは当面の間、現状を維持するという。提携後の販売チャネル強化とマーケットシェアの拡大、業務効率化により、今後5年間でアッカの売上が140億円伸びるほか、コスト削減効果により、アッカが60億円、イー・アクセスが10億円の収益拡大を図れると見込んでいる。

photophoto イー・アクセスはDSL設備を子会社化したアッカに譲渡し、使用料を払ってサービスを継続する(写真=左)。バックエンド業務一元化して効率化を図るが、フロントエンドは現状を維持。現在、両社が行っているサービスに変更はない(写真=右)

photo 今後5年間で、アッカ60億円、イー・アクセス10億円の増益を見込んでいる

 イー・アクセス代表取締役社長の深田浩仁氏は「両社の経営陣が新体制になってから、提携実現に向けて努力してきた。アライアンスの目的は、業務提携によるスケールメリットを生かし、事業シナジーの創出による収益拡大を目指すこと。そして、財務基盤を強化し、戦略的にモバイルブロードバンドへ取り組むことにある」と説明した。FTTHやモバイルブロードバンドの普及で減少が続くDSL市場は、現在約1300万回線という規模。深田氏は「減少傾向といっても、将来1000万規模の市場が必ず残る。2010年ごろには、30%程度のシェアを確保したい」と語った。

 2月に社長に就任したアッカ・ネットワークス代表取締役社長の須山勇氏は、「今回の事業統合・資本提携は、約2カ月に渡って準備してきた。今後はアッカのDSL基盤を強化でき、またMVNOとして提供しているモバイルブロードバンド事業もより戦略的に行える。140億円の売上増、60億円の利益増は成長の第一歩。シナジー効果は今後どんどん現れる。2社の周りには、宝の山がたくさんある」と述べた。なおアッカは、第三者割当増資後にイー・アクセスから過半数の取締役を受け入れるが、須山氏は引き続き社長にとどまる予定だ。

photophoto 会見には両社取締役も出席した。左から、アッカ・ネットワークス取締役の塚本博之氏、廣野公一氏、イー・アクセス取締役会長の千本倖生氏と取締役のエリック・ガン氏(写真=左)。会見後には調印式が行われた(写真=右)
photo イー・アクセス株式会社取締役会長の千本倖生氏

 業務および資本提携の記者会見・調印式には、アッカ取締役の塚本博之氏と廣野公一氏、イー・アクセス取締役会長の千本倖生氏と取締役のエリック・ガン氏も出席した。もともとイー・アクセスはアッカの株式を純投資目的で保有していたが、株価の下落が止まらないため2008年1月に旧経営陣に退任を要求。さらに株式を買い増し、NTTコミュニケーションズを上回るアッカの筆頭株主になっていた。

 「日本でホールセール事業を行っているのは、事実上アッカとイー・アクセスだけ。経営構造が似ており、アッカのパフォーマンスの高さは昔から良く知っていた。それだけに不当に安い(アッカの)株価に不満があったが、いずれ戻すだろうと投資目的で保持していた。ところが、予想に反して下落を続けてしまった。わたしがステートメントを出した影響は分からないが、アッカが経営陣を刷新し、須山社長が就任したあとから、お互いに前向きな話し合いができるようになった。このころから、今回のような提携を視野に入れるようになった。また、(第2位株主の)NTTコミュニケーションが、こうした考えに理解を示してくれたのも大きい」(千本氏)

 また千本氏は2社の今後について、固定だけでなくモバイルブロードバンドやFMC事業でのシナジーが大きいとし、「日本の小さなホールセール市場でヤフーに対抗するのはあまりよくない。また、モバイルブロードバンドに着地点を見いださなくてはならないが、我々の持つリソースは限られている。アッカはMVNOによるモバイルブロードバンドの動きが積極で将来事業においても親和性が高い。新経営陣の果たした役割は大きい」と話した。

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