ではドコモユーザーにとってパケ・ホーダイ ダブルはどのような影響をもたらすだろうか。
すでにパケ・ホーダイに加入し、常に上限金額に達するレベルのパケット通信を利用している場合は、そのままパケ・ホーダイを契約していればいいだろう。完全定額である代わりにパケ・ホーダイの定額料金は月額4095円と、パケ・ホーダイ ダブルの月額上限料金の4410円より315円安いからだ。少なくとも2008年8月末現在でパケ・ホーダイのサービス終了は告知されていないし、パケ・ホーダイ ダブルへの自動移行にもならない。
一方、パケ・ホーダイ フルを契約しているのであれば、パケ・ホーダイ ダブルに移行してもデメリットはほとんどない。パケ・ホーダイ ダブルでフルブラウザを利用した場合の上限月額料金は5985円で、パケ・ホーダイ フルの定額料金と同じだからだ。つまりヘビーユーザーにとってデメリットは今のところない。
ではライトユーザーはとってもどうだろうか。最低月額料金の1029円をどう判断するかは人それぞれだが、とにかく1029円を払っておけば月額5985円以上のパケット料金を請求されることはない(PCに接続してモデム利用さえしなければ)。“保険”という意味でのパケット定額サービスを待っていた多くのドコモユーザーにとっては、メリットと言っていいはずだ。
もっともパケ・ホーダイ ダブルの登場で生まれる“影”の部分もある。
パケ・ホーダイ ダブルの提供開始に合わせ、現在提供しているパケ・ホーダイ/パケ・ホーダイ フルの新規申し込み受け付けが終了する。同時に、パケット料金の割り引きサービス「パケットパック10」「パケットパック30」も新規申し込みを終える。ユーザーにとって影響が大きいのは後者だろう。
パケットパック10は月額1050円で1万パケット(0.105円/パケット)まで、パケットパック30は月額3150円で6万パケット(0.0525円/パケット)まで使うことができるサービスだ。
パケット通信分で比較すれば、パケ・ホーダイ ダブルは定額料金1029円に1万2250パケットまでの無料通信分が含まれるから、パケットパック10の存在意義は薄くなる。パケットパック30の場合、パケ・ホーダイ ダブルが完全な代替にはならないが近い存在にはなる。パケ・ホーダイ ダブルであれば音声端末の利用分は定額料金が適用されるので、モデムとして利用した場合の超過パケット分のみが追加パケット料金として発生するだけで済む。ドコモがこの2つのパケット割引サービスの新規申し込みをやめるのは確かに合理的だろう。
サービス名 | 定額料金 | 無料パケット通信量 | 無料パケット通信量/MB換算 | パケット単価 | 日割り | 音声料金としての利用 | 2カ月繰り越し | 2009年1月以降の契約(加入) |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
パケ・ホーダイ ダブル/最低月額 | 1029円 | 12250パケット | 1.5Mバイト | 0.084円 | ○ | × | × | ○ |
パケ・ホーダイ ダブル/上限月額 | 4410円 | 52500パケット | 6.4Mバイト | × | × | × | ○ | |
パケ・ホーダイ ダブル/上限月額(内蔵フルブラウザ利用時) | 5995円 | 71250パケット | 8.7Mバイト | × | × | × | ○ | |
パケ・ホーダイ | 4095円 | - | - | - | × | × | × | × |
パケットパック10 | 1050円 | 10000パケット | 1.2Mバイト | 0.105円 | ○ | ○ | ○ | × |
パケットパック30 | 3150円 | 60000パケット | 7.3Mバイト | 0.0525円 | ○ | ○ | ○ | × |
パケットパック60 | 6300円 | 300000パケット | 36.6Mバイト | 0.021円 | ○ | ○ | ○ | ○ |
パケットパック90 | 9450円 | 600000パケット | 73.2Mバイト | 0.01575円 | ○ | ○ | ○ | ○ |
ただし、パケットパックのメリットもある。定額料金分を音声通話料金としても利用可能で、2カ月繰り越しの対象にもなる点だ。例えば、“パケット割引サービス未契約でパケット通信料が毎月1000円程度”というユーザーがいたとする。このユーザーが月額1050円でパケットパック10を利用すれば、パケット単価が半額になるためパケット通信料は500円程度になる。残りの約500円分は音声通話に利用できるし、翌月翌々月への2カ月繰し越りも可能だ。こまめに音声通話料金やパケット通信料金をチェックしていればかなり合理的に利用できるのだ。
さらにパケットパックは、随時加入/解除が可能で(ただし月3回以降は手数料1050円が必要)日割計算なので、短期的にパケット通信料が増える場合に活用できるのだ。例えばパケットパック30を10日間だけ利用した場合、定額料金は日割で約1000円になるが、加入期間中のパケット単価は0.05円/パケットとなり、定額料金内で2万パケット分の通信が行える。パケット割引を一切使用しない場合、単価は0.2円/パケットとなり、2万パケット利用するとパケット通信料は4000円になる。かなりの料金節約になるだろう。
筆者は仕事柄、常時複数台の携帯電話を契約している。全体の使用料金を抑えるため、ドコモ端末は定額料金のパケ・ホーダイではなくパケットパック10を活用している。パケット料金をある程度安くでき、音声通話料金への転用も可能だからだ。必要に応じて上位のパケットパックにしたり、特定月だけパケ・ホーダイに加入している。
2009年1月以降、こうした使い方がかなり制限されてしまう。これまでドコモの柔軟な料金制度を活用してきた既存ユーザーにとって、一部パケット割引サービスの終了が、結果的に改悪になってしまうケースも少なからず存在する。
パケ・ホーダイ ダブルの登場でなにが変わるのか。今回はキャリア3社の2段階制パケット定額料金を比較し、ドコモユーザーにとってのメリット・デメリットをまとめた。
デメリットに関しては重箱の隅を突付いたような話と受け取る人も多いと思うが、ドコモユーザーがメリットを1つ失うことも事実。基本的に筆者は、「プランSS」+「パケットパック10」を使って月ごとに変動する通信料の帳尻を合わせてきたが、パケ・ホーダイ ダブルへの移行に合わせて、音声プランの変更も考慮しなければならないようだ。
ドコモにとって2段階制パケット定額料金の導入は、料金プラン改革の“最後の砦”と言われていた。(家族間の)定額通話よりも導入が遅れたくらいだ。2段階制パケット定額料金の導入は保険としての利用価値も高く、多くのユーザーにとってメリットが大きい。対してキャリアにとっては諸刃の剣だ。パケット定額サービスの加入者は増えるが、従来の完全固定制よりもARPUが予測しにくくなる。
もちろんユーザーも注意が必要だ。パケ・ホーダイ ダブルの最低月額料金は1029円だが油断は大敵。ケータイを使っていてパケット通信量を的確に把握することは難しく、“どうせ定額だから”とiモードなどを頻繁に使うと、すぐに上限金額に達するだろう。
上限料金分に達する5万2500パケットとは、たった“6.4Mバイト”でしかない。着うたフルなら数曲、ビデオクリップ(10Mバイトiモーション)なら動画1つのダウンロードで月額上限料金なる計算だ。もちろんそこはドコモの狙いの1つでもあるのだし、“ビジネス”の邪魔をするつもりもないが、パケ・ホーダイ ダブルを活用したい人は、十分に注意してほしい。
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