携帯電話向けプラットフォームのエコシステム競争が激化してきている。
これまでこの市場で大きなプレゼンスを占めていた「Symbian OS」、「Linux」だけでなく、新たな勢力としてMicrosoftの「Windows Mobile」やAppleの「iPhone OS」、Googleの「Android」など新勢力も台頭。モバイルの未来に向けた覇権争いは激しさを増してきている。
このような中で注目が集まるのが、Symbian OSをベースに発展を目指す「Symbian Foundation」の動向である。Symbian OSは日本ではシャープの一部モデルや富士通などが積極的に採用し、グローバルではNokia端末などに搭載されている。モバイル向けとして発展してきた歴史も長く、高い実績を持つプラットフォームだ。
モバイル機器向けOSのエコシステム競争が激化する中で、Symbian Foundationはどのように日本市場と関わっていくのか。エグゼクティブ・ディレクターのリー・ウィリアムズ氏に話を聞いた。
──(聞き手:神尾寿) 日本の携帯電話業界を取り巻く経営環境は厳しく、例えばNTTドコモのように複数のOSプラットフォームに全方位投資をするのは難しい状況にあります。そのような中で、日本メーカーがSymbian Foundationに先行投資していくメリットはどこにあるのでしょうか。
リー・ウィリアムズ氏 Symbian Foundationが提供しているプラットフォームは完全な形になっており、特に(メーカーが)グローバル展開を目指す上では適切な環境が整っています。例えば言語では50の国と地域をサポートしていますし、各国キャリアでの認証プログラムも受けています。こういった(グローバル展開での)価値が、Symbian Foundationのプラットフォームには付いてくるのです。
また開発環境は、C++やJava、Rubyなど多くの開発言語をサポートしています。アプリケーションが作りやすい環境を整えており、そこがほかのOSプラットフォームよりも投資する価値がある部分だと考えています。
── それはつまり、日本の携帯電話メーカーが「海外進出する」ことを前提に端末を開発するなら、Symbian Foundationへの投資が有利ということなのでしょうか。
ウィリアムズ氏 その通りです。
── Symbian Foundationのメンバー構成を見ますと、やはりNokiaの存在感が圧倒的に大きく、プラットフォームの環境や今後のUIシステム設計において「Nokia色」が濃くなるのではないかという懸念もありますが、いかがでしょうか。
ウィリアムズ氏 確かに現在のSymbian OSのS60プラットフォームはとても堅牢で完成されています。しかし、Symbian FoundationではNokiaもS60のラベルでのマーケティングをやめて、新たなプラットフォームを構築します。(Symbian Foundationでは)多くのメーカーが自らの特色を出せるようになるでしょう。
── 現在、Symbian OSを採用しているメーカーに話を聞くと、日本市場のニーズに合わせた開発サポート体制に不満の声がありました。Symbian Foundationもグローバルな組織となるわけですが、その中で『日本市場のニーズ』や『日本メーカーへのサポート』がきめ細かく行われるのでしょうか。Symbian Foundationの日本に対するスタンスをお聞かせください。
ウィリアムズ氏 我々は日本市場に対するサポート体制を強化すべきと思いますし、実際に強化していく方針です。また、Symbian Foundationのビジネスモデルやエコシステムは、単なる技術的サポート以上のものが得られる仕組みです。Symbian Foundationからもしっかりとサポートをしていきますし、エコシステムの中のパートナー企業からも、(日本の市場やメーカーへの)サポートが提供されていきます。
── 日本のマイクロソフトは、Windows Mobileの採用を日本メーカーに促すために(日本での)開発サポート体制を強化しています。Symbian Foundationでは、メーカーの開発支援において、マイクロソフトなどライバル企業とも積極的に対抗していくのでしょうか。
ウィリアムズ氏 もちろん、マイクロソフトをはじめ他社の(メーカー)開発支援の強化には対抗していきます。Symbian Foundation全体として、(他のOSプラットフォームと対抗するには)サポート体制強化など開発支援への投資は必要なものです。また技術やマーケティングへの投資も積極的に行っていかなければなりません。
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