2009年、来る“次の10年”を前に、率先してビジネスモデルやサービスの変革に乗り出すNTTドコモ。携帯電話業界のリーディングカンパニーは今年、どのようなかじ取りをし、どのような未来を見据えるのか。
Mobile+Views新年特別編は、前編に引き続き、NTTドコモ 代表取締役副社長である辻村清行氏のインタビューをお届けする。
── 1999年の「iモード」から始まった携帯電話の普及拡大期は、ハンドセット(電話機)をベースにした革命でした。その後、この10年で携帯電話は巨大なコミュニケーションプラットフォームとなり、メディアとなりました。iモードからiアプリ、そしておサイフケータイまで、ドコモが切り開いてきた「iモードのエコシステム」は今の日本を支えるパーソナルなコミュニケーションおよびメディアの“インフラ”になったと言ってもいいでしょう。
一方で、ドコモは今後、オープンOSをベースにした新しい水平分業型のエコシステムも多岐にわたって育てていくということでした。これは従来型のiモードエコシステムと並立・共存していくそうですが、それをユーザー視点で見た時に、どのようなアプローチで実現していくかという部分にも興味がわきます。
より具体的に質問しますと、(2分野の並立が)「従来型の携帯電話とスマートフォンの2台持ち」で実現していくのか、それとも「1台の次世代ケータイの中に、従来のiモードエコシステムとオープンOSのエコシステムが共存する」モデルになるのか。この点についてビジョンをお聞かせください。
辻村清行氏 いろいろな方法論があるし、あっていいと考えています。
世の中には、サイズの異なる“重要な画面”が3つあります。1つは「テレビ」、これは近い将来、50インチや100インチといった大きなサイズになるでしょう。2つ目が「パソコン」で、こちらは12インチから24インチくらいのサイズです。そして、3つ目が「ケータイ」ですね。今後の(コンテンツやサービスで)重要なところは、この3つの画面の中で、どのような利用環境を構築するのか、ということです。
その上で、(提供形態の)質問に答えますと、重要なのはサービスの部分であって、それをどういう形で使うかは、ユーザーが今より自由に選んでいくことになるでしょう。従来型のiモード携帯電話にパッケージ化されたものが最も使いやすいというお客様もいれば、PCとシンプルな携帯電話の組み合わせを使う、またはスマートフォンで(従来型の)携帯電話のニーズもカバーするというように、いろいろな選択肢があっていい。我々はそういった多様な選択肢を、お客様に提供していかなければなりません。
── 今後はモバイルで利用するフォームファクター自体が、柔軟かつ自由になっていくということですか。特定の“形態”をキャリアがプロダクトアウトで提供すべきではない、と。
辻村氏 そうです。今回(端末ラインアップを)4シリーズ化した狙いも、まさにそうした選択肢の拡大、多様性の確保を第一に考えていますから。
実際、2009年は年明け早々から、スマートフォンを中心に新分野のプロダクトを積極的に投入します。その一部は昨年の新商品発表でご紹介させていただきましたが、スマートフォンや新たなUI、Bluetoothなどに注力していきます。今年、そして2010年でユーザーの選択肢はあっという間に広がっていくことになるでしょう。
── スマートフォン市場を見ますと、昨年は「iPhone 3G」が発売され、その後にHTC製のモデルなども投入されたことで、少しずつですが一般普及に向けて「変化の兆し」も見え始めたのかな、と感じています。ドコモとして、スマートフォン市場に変化を感じますか。
辻村氏 変化していますね。今は基本的に「2台目」として使われています。iPhone 3Gもそうですし、当社が提供しているBlackBerryもそうです。この2台目のスマートフォンが携帯電話市場に与えているバラエティ(多彩さ)、影響は徐々に大きくなっています。今年はお客様のライフスタイルに合った「2台目の選択」がどうなるかは、とても注目だと思っています。ひと言でスマートフォンといっても、海外メーカーがさまざまな製品を出していますので、とても裾野が広いですからね。
── バラエティ感、2台目の選択という観点では、ドコモが(自社ブランドの)Netbookを出してもおかしくないかもしれませんね。
辻村氏 そうですね(笑) ただ、少し昔を振り返りますと、ドコモもNetbookに似たコンセプトの製品には何度かチャレンジしたことがあるのですよ。しかし、残念ながら売れませんでした。時代が早すぎたのかもしれません。
── 2009年の端末市場を見据えますと、スマートフォンなど「2台目」市場の盛り上がりに期待がかかる一方で、既存の携帯電話端末は昨年夏からの販売不振が続いています。ドコモから見て、携帯電話メーカーのビジネス環境はどのようになると思われますか。
辻村氏 これまでの国内携帯電話出荷台数は5000万台前後(2007年は5168万8000台)だったわけですが、2008年は4000万台を下回るくらいの数字になるでしょう。1000万台の販売減というのは非常に大きなインパクトなわけですけれども、ではこの状況が2009年ににわかに回復するかというと、そうはならないと思います。なぜなら、この(販売規模縮小の)原因が、分離プランの導入でお客様の購入価格が上がったからです。これまでのように最新モデルが安価で買えるという時代ではなくなりました。
さらに携帯電話の機能・性能が成熟したことで、お客様は「(今ある端末から)すぐに買い換えなくてもいい」と考え始めています。それに加えて、昨今の景況感の悪化から消費マインドにも逆風が吹いています。
これらどの要因をとっても、2009年に端末販売市場が好転するものはないのです。ですから、この1年で起きた(端末販売台数の)1000万台の減少という状況は、今後しばらく続くと考えています。
── しかし、それは国内メーカーにとって、大変きびしい状況ではないでしょうか。
辻村氏 ええ。ですから、メーカー各社は構造的な変化を考えていく必要があるでしょう。
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