iPhoneのカメラ機能は急激に進歩した。それこそ、デジカメ界やケータイ界が数年かけて上ってきた道を、2年で駆け上がったような感じ。「iPhone 3G」は200万画素で固定フォーカスだったが、「iPhone 3GS」は300万画素でAF付きになり、そして「iPhone 4」は500万画素でHD動画撮影に対応した。
でも実のところ、300万画素が500万画素になったことはあまり大きなトピックではない。PCやMacのディスプレイで等倍表示をすれば画素数の差は確かに出るけれども、その行為自体にたいして意味はないのだ。
重要なのは、画素数以外の面で大きな画質向上が見られたことだ。よくiPhone 4のカメラはきれいになったといわれるが、それは画素数が増えたからじゃない。根本的に絵作りが変わったからなのだ。
とはいえ、最初にハードウエアの話もしておこう。
iPhone4が採用した撮像素子は、裏面照射型CMOSセンサー(BSI型センサー)。どこのどんな部品かは公表されてないが、iPhone 4発表時に公表されたスペック(画素サイズが1.75ミクロン)から類推するに、米OmniVisionのOV5650あたりが怪しい。
この製品は1/3.2インチサイズの裏面照射型CMOSセンサーで、フルHD動画にも対応している。1.75ミクロンという画素サイズは、現在のコンパクトデジカメと同等かちょっといいくらいのレベルだ。
レンズはF2.4。F2.8だった3GSよりちょっと明るくなった。一般的なハイエンドケータイのレンズもF2.8が多く、それらより2分の1段ほど明るく撮れる計算だ。暗い所で有利に働く。焦点距離は3GSよりちょっと広角になった。焦点距離は3.85mm。大雑把にいうと、35ミリフィルム換算で32mm相当くらい。やや広角目の扱いやすい画角だ。
裏面照射型のCMOSセンサーは、従来のCMOSセンサーより「画素サイズを大きく取れる」のが特徴だ。画素サイズが大きければ、その分多くの光を受けられるので感度がよくなる。といってももともとの感度がそこそこ高いので劇的によくなるわけではないが、F2.4のレンズに裏面照射型センサーという組み合わせはかなりいいレベル。現在多くのメーカーが裏面照射型CMOSセンサーの量産を行っており(筆頭はソニーだが、米OmniVisionや東芝も作っている)、近い将来、ケータイのカメラはみな裏面照射型CMOSセンサーに移行していくだろう。
カメラに関しては、もう1つ注目すべきポイントがある。それはLEDフォトライトが付いたこと。このライト、LEDにしてはすごく明るくて強力だが、強力なLEDは必要以上にまぶしいという問題もある。これで撮られると、写される方はまぶしくて文句を言いたくなるはず。普段はオフにしておくのがいいと思う。
それ以外はOSをiOS4にアップデートした3GSとほぼ同等だ。カメラを向けるとAFが自動的に働き、指でタップしたところにフォーカスと露出を合わせてくれる。そしてiOS4の機能である最大5倍のデジタルズームも利用できる。起動も撮影もすべてが高速でキビキビしてるのは相変わらず。この快適さがいい。
さらにカメラそのものの機能ではないが、写真を撮るときの快適さに大幅に寄与しているのが新しいRetinaディスプレイ。要するに縦横2倍の解像度になったディスプレイなのだが、これのおかげで、撮影時にピントが合ってるかどうかが従来より分かりやすく、再生時も見栄えよくなっている。快適に使えるという意味ではとても重要だ。
なお、例によってシーンモードも露出補正もホワイトバランス調整も手ブレ補正も何もない。ただシンプルなカメラ機能である。それは素晴らしい。大事なのは機能の数ではなく、撮りたいときにすばやく撮れるか、なのだ。
では実際に撮ってみる。
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