“自宅でもWiMAX”という選択肢はアリ?──据え置きWiMAXルータ「AtermWM3400RN」のメリットとデメリット“WiMAX Speed Wi-Fi”レビュー(3/3 ページ)

» 2010年11月19日 11時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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IEEE802.11n+有線LAN対応のメリットとは

 本機は据え置き型のWiMAXルータとして、ポータブル型のAtermWM3300Rと比べると、無線LANのIEEE802.11nへの対応が無線LANの主な強化点になる。

 まずはWiMAX通信時の通信速度をチェックしよう。同一のノートPCから有線LAN、IEEE802.11n、IEEE802.11gでの接続、比較としてAtermWM3300RでのIEEE802.11gでの接続、計4パターンで比較した。

photo 本機を窓際に設置し、PCを2メートル離れた位置に設置して「speed.rbbtoday.com」で3回ずつ計測。WiMAX通信でのインターネット接続であれば、PCと本機間の無線LAN接続方法の違いによる通信速度の差はほとんどない

 結果としては、基本的に誤差と呼べる程度の差しかなかった。測定は下り16Mbpsを超える良電波環境下で実施したので、モバイルWiMAX通信だけを利用する分にはIEEE802.11nであってもこれといったメリットはない。

 次は本機の無線ルータとしてのパフォーマンスをチェックしよう。2台のWindows 7搭載PCを本機に有線、および無線LANで接続し、巨大なサイズのファイルをPC間でコピーして実際に要した時間からファイルコピー時の通信速度を算出した。厳密に言えばファイルコピーではオーバーヘッドもあるので、物理的な通信速度はもう少し速いことになるが、こちらは実利用時の目安として見てもらいたい。

photo 2台のPCは本機からそれぞれ2メートル程離れた位置に設置。LAN内での通信速度では、やはり有線LANやIEEE802.11nの恩恵が大きい

 PC1:有線LAN→PC2:IEEE802.11n接続でのファイルコピー速度は80Mbpsを超えた。有線LAN側の物理通信速度は最大100Mbpsなので、ファイルコピーの実測値で80Mbps超えとなれば、なかなか優れているといえる結果だろう。

 一方、無線LAN同士となるPC1:IEEE802.11n→PC2:IEEE802.11nでは56.8Mbpsとなった。単純計算すると無線LAN区間のスループットは最低でも133Mbpsは超えているということになる。一般的な据え置き型のIEEE802.11n対応無線ルータと比べると少々劣る傾向にあるが、大型の外部アンテナを持たず、コンパクトな筐体を採用しているということで、この辺は致し方ない部分ではある。

 いずれにせよ、PC1:IEEE802.11g→PC2:IEEE802.11gとの速度比は約7倍にもなり、体感値でもハッキリと高速だと分かる。屋内、つまり自宅やオフィスにおいて、複数のPCでのインターネット接続に加えて、ファイルをPC間でネットワークコピーしたり、NASを利用するいったシーンにおいては、IEEE802.11n対応の恩恵が相当に大きいだろう。

WiMAXならではのフルワイヤレスブロードバンドに安心・便利をプラス

photo  

 高速で定額、通信量制限も課されないメリットがあるモバイルWiMAXだけに、3Gデータ通信サービスと比べてポータブル無線LANルータ機器のラインアップがすでにかなり増えている。これらのほとんどは屋外ではバッテリー動作、対して屋内ではACアダプタを利用することでバッテリー残量を気にせずに利用するできる──つまり、1台ですべてのインターネット接続をまかなうことが可能である。このため、本機より小型・軽量な製品も多く、まったくモバイルでは利用しないという人を除けばあえて選択するメリットが見えないと思うかもしれない。

 しかし、ポータブル対応モデルはバッテリーでの動作が基本に設計されており、ACアダプタによる利用時はバッテリーを常時放電しつつ、充電する状態になる。充電用の電源回路とACアダプタ動作用の電源回路を別々に備えるより、小さく軽量であることが重要であるためだ。充電しながらの放電はバッテリーを酷使し、劣化が早くなる使われ方であり、発熱も多くなる。

 対して、本機は「据え置き用」と割り切った電源設計になっている。バッテリーを内蔵しないため当然バッテリーの劣化を心配する必要はないし、動作中の発熱もかなり抑えられる。

 このため、WiMAXだからこそ自宅やオフィスでは本機にて、という使い方は大アリだ。UQコミュニケーションズや代表的なMVNOは、1つの契約に対して最大2台のWiMAX機器を追加登録できる(初期登録機器と合わせて合計3台を登録可能)。自宅の奥まった部屋ではWiMAX電波は入りにくいが、窓際ならバッチリ。そういう現WiMAXユーザーは、本機の導入で利便性がかなり向上すると思われ、検証結果にも表れたように家庭やオフィスで使うなら有線LANポートを持つメリットもかなりあるといえる。

 1つ注意したいのは、1契約あたりの同時WiMAX通信は1台・1か所からに限られることか。複数台の機器を登録して使い分ける場合、標準設定では「後に接続」したほうが有効になるわけだが、どちらも「切断されたら自動再接続」の設定となっていると堂々巡りの無限ループ状態になりかねない。……と思っていたら、この「機器追加オプション」は2010年11月16日に機能が拡張され、「機器の優先度を3段階に指定」できるようになった。これまでは一律で「後から接続した機器が優先」となるので、上記の無限ループ状態を避けるために本機は手動接続とする設定にしておく必要があったが、この設定をうまく使えば安心で、手動でつながなくてはならない面倒も減る。この拡張は大変喜ばしい。ただ、接続が1台・1か所に限られるのは変わらないため、自分は外で、家族も自宅で同時に利用するシーンにはどうしても向かない部分はある。

photophoto 例えば、外出先で使うノートPCの優先度を本機より高くすれば、本機は「ノートPCで利用開始:(いったん)切断→ノートPC利用中:接続保留状態で待機→ノートPCの利用終了:自動で再接続」といった感じで運用できるようになる。他方を切断(利用を終了)すれば自動で再接続する──ように設定できるわけだ

 ともあれ、1人で外と自宅のWiMAX機器を使い分けるモバイルユーザー以外に、高速・低料金・その場で契約OK──というポイントは、自宅に固定ブロードバンド回線がない人にとっても大きなメリットだ。自宅がWiMAXエリアであれば本機を買ってくるだけですぐオンライン契約でき、ワイヤレスサービスのため、工事不要ですぐ高速なインターネット環境が開通することになるわけだ。

 これは、電話局が遠くADSLでは通信速度が遅い、光ファイバーは高額で工事も面倒そう──と固定インターネット回線をどれにするか迷っている人のほか、月の通信費を抑えたい一人暮らしの人、引っ越しで一時的に固定インターネット環境がなくなってしまう場合、工事やオフィス移転などで一時的に利用する仮オフィスなどへの導入シーンにも大変適している。


8時間動作+11nテクノロジー、クレードルで有線対応にもなる新モデルも

photo AtermWM3500R+オプションのクレードル利用時

 NECアクセステクニカは、AtermWM3300Rおよび本機Aterm3400RNに続く新モデル「AtermWM3500R」を2010年11月下旬に発売する。

 AtermWM3500Rは、ポータブル型としての機能や仕様を向上させつつ、オプションで有線LANポートを搭載する据え置き利用向けのクレードル(3000円前後)も用意するのがポイント。無線LAN機能やソフトウェア面でAterm3400RNとは少し仕様が異なるようだが、AtermWM3300Rおよび本機Aterm3400RNのメリットを合わせたような、魅力ある製品となりそうである。

 こちらも製品を入手次第、機能検証を行う予定だ。





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