「子供のお小遣いで持てる」Android端末を――日本通信が目指す“スマホ価格破壊”戦略

» 2010年12月22日 13時50分 公開
[山田祐介,ITmedia]
photo 「IDEOS」を持つ日本通信代表取締役社長の三田聖二氏

 「実現したかったのは、子供のお小遣いで持てるスマートフォン」――日本通信は12月22日、SIMロックフリーのAndroid 2.2搭載スマートフォン「IDEOS」を2万6800円で12月第4週末に販売し、同端末向けに基本料490円の“モバイルIP電話サービス”を1月中旬に始めると発表した。

 今回のIP電話サービスと、同社が従来から提供するデータ通信SIMカード「b-mobileSIM U300」を組み合わせると、月換算にして2973円から音声通話とパケット定額サービスが利用できる。

 同社は発表に合わせて報道関係者向け説明会を行い、新サービスの内容や狙いを説明した。


契約なしで携帯電話が買える

photo 販売体系を説明する日本通信代表取締役専務COOの福田尚久氏。端末は契約なしで販売し、その後の使い方はユーザーの自由。Webサイトからデータ通信サービスや通話サービスを申し込めるほか、何も契約せずに既存の無線LAN環境などで利用することも可能だ

 同社が今回発表した一連のサービスは、大手キャリアが展開する携帯電話サービスとは違うユニークな特徴がいくつかある。1つは、端末の提供方法だ。

 一般的に日本の携帯電話は、キャリアが独自のサービスを搭載し、他社の通信網では利用できないように制限をかけた上で(SIMロック)、キャリアのブランドで販売される。新規購入時には、通信契約が必要だ。

 一方、日本通信が新サービス向けに用意したIDEOSは、キャリアブランドを冠さず、SIMロックの制限もなく、購入時に通信契約をする必要もない。通常の家電と同じような感覚で端末を購入できる。


photo IDEOS。100グラムのコンパクトなボディを採用し、付け替え可能なボディカバーを同梱する

 パッケージにはお試し版のb-mobileSIM U300が同梱され、データ通信サービスを10日間無料で体験できる。b-mobileSIM U300を正式に購入するかや、音声サービスに加入するかはユーザー次第だ。他社のSIMカードを入れて使ったり、モバイル回線を使わずに無線LAN環境で利用してもいい。

 「SIMロック解除の動きが来春から始まり、携帯電話はキャリアブランドからメーカーブランドになっていく」と、同社代表取締役専務COOの福田尚久氏は語る。総務省が6月に公表した「SIMロック解除に関するガイドライン」によって、通信キャリアは2011年4月からSIMロック解除に向けた対応が求められる。さらに、昨今注目されているスマートフォンの分野では、特定のキャリアのために開発されたものではない“グローバルモデル”をベースにした機種が国内でも続々と投入されている。こうした流れの中で、端末を購入してから通信キャリアを自由に選択するスタイルが広がると同社はみている。

目指したのは「携帯電話よりトータルで安いスマートフォン」

photo IP電話技術による音声サービスの低価格化、b-mobileSIM U300による低価格なパケット定額、さらにグローバル端末の導入で、スマートフォンのトータルコストを下げる

 その上で同社は、SIMロックフリーのiPhone 4向け通信サービスを提供するなど、以前からSIMロックフリー端末向けのサービスに注力してきた。しかしこうした端末はキャリアの販促施策が適用されず、端末代が高価になりがちで、ITやガジェットにそれほど関心のない一般的なユーザーには手の出しにくいものだった。

 今回は「携帯電話よりもトータルで安いスマートフォン」(福田氏)を目指し、Huaweiがグローバル市場向けに開発した普及価格帯のAndroid端末であるIDEOSを、2万6800円で提供する。端末には日本の電波法に準拠するための最低限のカスタマイズのみ施し、機能制限やサービスの追加などはしていないという。「メーカーの思いをそのままの形で提供したい」と、福田氏は説明する。

 1GHz駆動のCPUを搭載したAndroid端末が市場に出回る中、IDEOSは528MHz駆動のCPUを採用し、ディスプレイも約2.8インチQVGA(240×320ピクセル)TFT液晶と、スペック的には見劣りする部分がある。しかし、OSは最新のAndroid 2.2を採用し、Webブラウザやアプリといったスマートフォンの基本機能は利用できる。また、最大5台までの無線LANルーター機能(テザリング機能)も使えるなど、大手3キャリアのスマートフォンにはない魅力も備えている。「日本のスマートフォンはプレミアムな端末が多いが、普及価格帯の端末が空白地帯。海外では普及価格帯モデルが、スマートフォンの普及を押し上げている」(福田氏)

 b-mobileSIM U300の6カ月版(1万4900円)または12カ月版(2万9800円)と組み合わせれば、月換算にして2483円でデータ通信サービスが利用できる。通信速度は300kbps前後と速くはないが、ドコモの広い通信エリアに対応しており、先述の通りテザリングも可能だ。

 さらに、今回新たに開始される専用のモバイルIP通話サービスに加入すれば、基本料490円(15分の無料通話含む)で通話料は30秒あたり10円と、安価に音声通話を利用できる。b-mobileSIM U300の月換算の料金と合わせると、月2973円で通話とデータ通信が可能になるというわけだ。

 モバイルインターネットや高機能アプリをとことん楽しむ、という考えの人にとっては物足りない内容だが、安い料金でスマートフォンの機能を一通り使えればよい、あるいは従来のシンプルケータイの代わりとしてスマートフォンが欲しい、というユーザーにとっては非常に魅力的なサービスといえる。

普通の携帯電話と同じ使い勝手でIP電話の通話を実現

 音声サービスの低価格化を目的に、IP電話サービスを本格的に導入した点も注目すべきポイントだろう。同社代表取締役社長の三田聖二氏は新たな音声サービスの料金について、「IP網を使ってきちんとコストダウンを図った上での値下げであり、単なる値下げではない」と説明する。

photo IP電話サービスの特徴

 IP電話サービスに加入する際には本人確認を伴う契約が必要で、SIM販売代理店や日本通信のWebサイトを通じて申し込める。専用のソフトウェアを端末にダウンロードし、付与されたユーザーコードでアクティベーションすると、050から始まる電話番号での通話が可能になる。3G回線だけでなく、無線LANを介しても通話できる。

 SIMカードとIP電話サービスはひも付いておらず、無線LANを使えばSIMカードが入っていなくても通話できる。海外での利用料金はまだ決まっていないが、現地の無線LANスポットなどを通じて電話をかけることも可能になるという。

 さらに福田氏は、「利用者がIP電話ということを意識することなく、通常の携帯電話と同じような使い勝手で通話できる」ことをサービスの特徴として強調する。専用ソフトウェアを入れる必要こそあるが、アクティベーション以降はAndroid標準の電話機能で着信や発信が可能になる。

 「使ってみるとIP電話という感覚はないはず。独立したアプリケーションとして利用するのではなく、Android標準のインタフェースで利用できる。アドレスブックもそのまま使えるので、同期や他サービスとの連携も行いやすい」(福田氏)

 今回のIP電話サービスはIDEOS向けにチューニングされた専用サービス。最適なパフォーマンスを発揮するためには、機種ごとのチューニングが必要な場合が多いという。技術的には他のAndroid端末に展開することも可能だ。ソフトウェアで提供する機能のため、他キャリアの端末で利用できる可能性もあり、「積極的に進めていきたい」と福田氏は話す。

 なお、端末を初期化した場合は再度ソフトウェアやユーザーコードを入れ直す必要がある。ユーザーコードが分からなくなった場合は、本人照合をした上で、再度ユーザーコードを通知する流れを用意する考えだ。

SIMロックフリー端末向けのビジネスモデル開拓に注力

 購入時に本人確認や契約が不要のSIMロックフリー端末は、「これまで携帯電話を取り扱っていなかった店舗でも販売に乗り出せる」と福田氏は話す。家電量販店や通販サイトはもちろん、大学生協などでの販売も検討されているようだ。また、契約業務を行える販売店では、音声サービスが最初から付与された端末を販売するといったことも可能になるという。

 また、SIMロックフリー端末の市場を拡大するために、今回のような価格競争力のあるモデルをラインアップする重要性を三田氏は指摘する。「日本のスマートフォンはプレミアムな端末ばかり。販売奨励金がなくなれば、5万円、7万円という値段になる。そうしたものだけが店に並べば、消費者は『何だ』と思ってしまう。今回我々がテーマとしたのは、お小遣いで持てるスマートフォン。3000円以下で月々使っていただける。お子さんのクリスマスプレゼントにもしてほしい」(三田氏)

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