ドコモの半額で“快適な通信”を――iPhone 4専用micro SIMの新ビジネスモデル

» 2010年08月23日 19時55分 公開
[田中聡,ITmedia]

 日本通信がSIMフリー版「iPhone 4」専用のmicro SIM「talking b-microSIM プラチナサービス(以下、プラチナサービス)」を発表した。ユーザーは同micro SIMを使用することで、NTTドコモのネットワークを使ってiPhone 4で通信することが可能になる。

photophoto ドコモ網で利用できるmicro SIMと従来のSIM(写真=左)。日本通信は、プラチナサービスの特長として、ドコモの800MHz帯と2GHz帯対応のFOMAネットワークを利用できる「圧倒的なエリア・カバレッジ」、各種アプリやブラウザをストレスなく楽しめる「iPhone快適通信」、BluetoothやUSB接続による「テザリング対応」の3点を挙げている(写真=右)

“レガシーキャリア型”から“NEWモデル型”に

photo 日本通信 代表取締役社長 三田聖二氏

 同社代表取締役社長の三田聖二氏は、総務省が推進する「SIMロック解除」によって新しい市場が固まったことが、「b-mobileSIM U300」「talkingSIM」、そして今回のプラチナサービス導入の経緯だったと話す。「ただし、SIMロックを解除したからといって、ニワトリと卵の状態で製品がなければ仕方ないので、U300というSIMだけの製品を提供した」と振り返る。

 今回のプラチナサービスにより、ユーザーは従来のキャリア→端末(iPhone 4)→料金プランを選ぶという“レガシーキャリア型”から、端末(iPhone 4)→ネットワークを選ぶという“NEWモデル型”が誕生すると三田氏は説明する。「これまではキャリアが端末にSIMロックをかけていたので、ユーザーが通信を選ぶことができなかった。しかしSIMロックが解除されれば面白いことが起こる」と三田氏は話し、海外も日本のメーカーも、通信キャリアの下請けではなく、自社のブランドや販売ネットワークをもって顧客に製品を提供できる「ユーザー本位時代の幕開け」になると期待を寄せる。

photophoto これまでのビジネスモデルでは、端末と通信を個別に選択できない

 現在、SIMロックフリー版のiPhone 4は英国、アイルランド、スイス、ノルウェー、イタリア、カナダ、デンマーク、フランス、オーストラリア、シンガポール、ニュージーランド、香港で販売されており、日本でプラチナサービスを利用するには、これらの国からiPhone 4を調達する必要がある。日本通信は今回の発表を機に、携帯販売会社や輸入商社、家電量販店などがiPhone 4を輸入し、日本のユーザーがSIMフリー版iPhone 4を手軽に購入できる環境が整うとみている。実際に8月6日の報道以来、「輸入業者から、本当にドコモ網で使えるmicro SIMを発売するのかという問い合わせを多数いただいた」(三田氏)という。ただし日本通信が海外からiPhone 4を輸入して販売をするといった施策は行わない。

 なお、海外から輸入されたSIMフリー版iPhone 4のサポートは、アップルストアで受けられるので、この点は安心できそうだ。

photophoto AppleのWebサイトではSIMフリーのメリットが説明されている(写真=左)。SIMフリー版iPhone 4が発売されている国(写真=右)

 なお、海外で販売されている携帯電話は、日本の「技術基準適合認定」を受けている必要があり、この認定を受けた「技適マーク」のない端末を使うことは電波法違反になる。iPhone 4はこの技術基準適合認定を受けているので、日本でも問題なく使用できる。

ドコモ スマートフォンの半額ほどで利用できる

photo 日本通信 代表取締役専務COO 福田尚久氏

 8月6日に日本通信がiPhone 4向けmicro SIMを発売することが報じられてから、「予約のメールだけで1万人が申し込んだが、その際に(iPhone 4を)思い切り使えるサービスを提供してほしいという要望が非常に多かった」と同社代表取締役専務COOの福田尚久氏は振り返る。そこで、プラチナサービスのコンセプトを1から見直し、iPhone 4の性能を十分に引き出すことに尽力した。「ドコモは3G通信だけで7兆円の投資をしていると聞いている。これは世界でも例を見ない。世界で一番素晴らしいネットワークで使えることを、多くのお客さんに体感してほしかった」(福田氏)

 プラチナサービスは、ソフトバンクのiPhone 4では利用できないテザリングもサポートしており、iPhone 4とBluetoothやUSBで接続したPCから、3G通信を用いたデータ通信が可能になる。これにより、iPhone以外の機器でも「いつでもどこでもインターネット」が可能になる。なお、テザリング利用時はU300通信となり、通信速度は最大300Kbps強となる。

photophoto テザリングを利用することで、iPhone 4と接続したノートPCで3G通信が可能になる(写真=左)。テザリングを開始すると、iPhone 4の画面に「テザリング」の文字が出る(写真=右)

 プラチナサービスの料金は、定額データ通信料5280円と通話サービス基本料980円(1050円の無料通話分を含む)をセットにした月額6260円。ドコモのiモード月額使用料に相当するISP料金と、テザリングの料金は発生しない。ドコモの基本使用料(タイプSSバリューの980円)とスマートフォン向け定額通信料+データ通信料(上限1万395円)、iモード月額使用料(315円)との合計額は1万1690円なので、「ドコモと比べて約50%オフの料金で利用できる」と福田氏はアピールする。なお、通話料金は30秒あたり21円で、ソフトバンクの「ホワイトプラン」と同額。

photo プラチナサービスは、ドコモのスマートフォンの約半額で利用できる

アプリごとに調整して「快適な速度」を実現

photo 会場では、プラチナサービスのmicro SIM入りのiPhone 4から、Ustreamで中継をするデモが行われた

 通信速度については「快適に使える速度」と三田氏と福田氏は強調する。アプリごとに速度を最適化しているので、「一概に何Mbpsとは言えない」(福田氏)が、「U300の300Kbpsではない」(三田氏)。「例えばUstreamの場合、2Mbps、1.8Mbps、1.5Mbps、1Mbpsといった速度ごとにブロードキャストを繰り返し、相当の頻度でテストをしている。その際に、iPhone 4で十分なパフォーマンスを発揮できない限界点を割り出し、最適な速度になるよう調整している」(福田氏)という。したがってプラチナサービスのmicro SIMを“快適な速度で利用できる”のはiPhone 4に限られる。なお、メールサービスはSMSは利用できるが、MMSやiモードメールは利用できない。

 大量のパケット通信を行うユーザーに対する通信速度の制限は、ドコモが過去3日間で300万パケット以上の利用者、ソフトバンクモバイルが前々月に300万パケット以上または1000万パケット以上の利用者を対象に実施している。プラチナサービス利用者に対しても、「ドコモとソフトバンクと同等の制限を行う」(福田氏)とのこと。

 プラチナサービスは、優先リザーブメールを登録した人に、8月26日から順次案内する。日本通信のWebサイト(外部リンク)からオンライン専用の申し込みとなるが、通話サービスも含むので、本人確認が必要になり、免許証などの写真を撮影してアップロードすることで確認する。この本人確認に一定の時間がかかることから、1日あたりのプラチナサービス販売数は1000人ほどになる見通し。支払いにはクレジットカードを用いる。また、プラチナサービスには2年間など長期間の拘束はなく、ユーザーの解約期間にかかわらず、契約解除料が発生することもない。

photophoto iPhone 4でデータ通信のみ利用できる「b-microSIM U300」もあわせて発売する(写真=左)。日本通信のSIMとmicro SIMのラインアップは4種類となる(写真=右)
photophoto プラチナサービスは、8月6日に開始した予約登録者向けに、8月26日から順次案内する(写真=左)。

 micro SIMはiPadにも採用されているが、海外のiPadで技術基準適合認定を受けている製品がないため、日本通信がiPad向けにmicro SIMを提供する予定は現時点ではない。一方で「今後対応機種が増えるAndroid端末には新たなサービスを提供したい」(福田氏)とのこと。


 ドコモのスマートフォンよりも低価格で、しかも拘束期間のないプランでiPhone 4を利用できる日本通信のプラチナサービスは、新しいビジネスモデルを切り開く魅力的なサービスといえる。SIMフリー版iPhone 4の調達方法が現時点では不明瞭な感はあるが、家電量販店などで手軽に購入可能になれば、ユーザーにとってはハードルが大きく下がる。SIMフリー版iPhone 4の流通次第では、プラチナサービスはソフトバンクのiPhone 4を脅かす存在になる可能性を秘めている。

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