日本通信「micro SIM発売」で理解しておくべきこと

» 2010年08月07日 11時20分 公開
[園部修,ITmedia]

8月23日の発表会で、通信速度はiPhone 4に最適化されていること、月額基本料が6260円(通話サービス基本料980円、1050円分の無料通話付き/定額データ通信5280円)で、SIMフリーのiPhone 4を別途入手する必要があることなどが明らかにされた。

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Photo iPhone 4のmicro SIM

 日本通信が8月中にも「SIMロックフリー版」のiPhone 4などで利用可能なmicro SIMを発売するというニュースが、ネットを中心に大きな話題を呼んでいる。8月6日付の日本経済新聞朝刊を皮切りに、新聞各社が記事を配信し、同日日本通信がアナリスト向けに開催した2011年3月期第1四半期決算会見の席上でも、micro SIMの販売に言及があった。

 日本通信が販売を予定しているのは、ドコモのMVNOとして展開している日本通信のサービスが利用できるmicro SIMだ。詳細は後日発表するとしているが、予定では、「b-mobileSIM U300」のような、データ通信のみが可能なものを月額2980円くらい、「talkingSIM」のような音声通話もできるものを月額3785円くらいで販売するという。

PhotoPhoto 左がb-mobileSIM U300、右がtalkingSIM

 これを利用すれば、確かに「ドコモのネットワークが利用できる」ことに違いはない。iPhone 4に限らず、他のmicro SIM採用スマートフォンなど(今のところiPadくらいしかないが)でも、2GHz帯と800MHz帯の周波数をサポートしていれば、ドコモのネットワークに接続して通信サービスが利用できる可能性は高い。とても画期的なことであり、メディアが騒ぎ立てるのは理解できる。

 しかし、この日本通信のmicro SIMを買えば、ドコモのネットワーク+サービスでiPhone 4が利用できるかのように考えてしまうと問題がある。

 まず、そもそも国内でソフトバンクモバイルが販売しているiPhone 4には「SIMロック」がかかっている。つまり、今多くの人が普通にソフトバンクモバイルと契約して使っているiPhone 4は、日本通信のmicro SIMを装着しても利用できない。これを活用するためには、香港などSIMロックフリーでiPhone 4を販売している国から輸入したiPhone 4を手に入れる(あるいは自分で買ってくる)必要がある。恐らくこうした端末は、国内で普通に販売されているiPhone 4よりも価格が高くなるはずだ。そもそもこうしたSIMロックフリーのiPhone 4が、世界的に品薄な状態の中で、すぐに潤沢に手に入るようになるというのも考えにくい。

 また留意する必要があるのが、日本通信が提供するデータ通信の速度だ。現在b-mobile SIM U300向けに提供されているデータ通信速度は、上り/下りともベストエフォートの300kbps超。一部報道では通信速度を上げる可能性にも言及しているが、それでもいきなりHSDPAの下り7.2Mbpsなどに対応することはないだろう。b-mobileSIM U300とほとんど変わらない料金プランを想定していることから、大幅なスピードアップが行われるわけではないと思われる。

 そうなると、例え電波が悪いといわれるソフトバンクモバイルと比べても、通信速度における満足度は下がってしまう可能性もある。「つながるけど遅い」のと「一部つながりにくいけどつながれば速い」のと、どちらを選ぶか。自分の利用環境などと照らし合わせてよく考える必要があるだろう。ただし、テザリングが利用可能になる可能性は高く、メリットもありそうだ。ただ、エリアの不満を解消したいだけなら、ドコモのポータブルWi-Fiを活用するといった手もある。

 また当たり前のことだが、ドコモのネットワークが利用できるとはいえ、日本通信のmicro SIMではキャリアメールは利用できない。ソフトバンクモバイルのiPhone 4で利用できる「@softbank.ne.jp」のメールアドレスが利用できないのはもちろんだが、「@docomo.ne.jp」も利用できない。メールはMobileMeやGmailなど、PC向けのメールを使うことになる。それでもまったく問題ない人はいいが、ケータイメールが使えないと、PCからのメールの着信を拒否している友達にメールが送れなくなる、といった問題が起こる可能性がある。

 以上、本誌の読者には釈迦に説法かとは思うが、改めて日本通信のmicro SIMを購入する前に考えておくべきポイントを挙げてみた。ケータイやスマートフォンがSIMロックフリーへの動きを加速させる中で、このような製品やサービスが出てくるのはすばらしいことだが、何ができて何ができないのか、手に入れられる自由と引き替えに何を失うのか、という点はしっかりと理解しておく必要があるだろう。

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