連続10時間+新省電力動作機能がスゴイっ──「AtermWM3600R」のバッテリー性能と通信性能をチェック“WiMAX Speed Wi-Fi”レビュー(3/3 ページ)

» 2012年03月16日 15時00分 公開
[坪山博貴(撮影:矢野渉),ITmedia]
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気になるハンドオーバー性能はどう?

 WM3600Rの登場において、真っ先に期待したこと。それはハンドオーバー性能の改善・向上だ。

 こちらについて、正確にはハンドオーバー性能の問題とは言い切れないことを前置きしつつ、前モデルのWM3500Rは高速移動中のハンドオーバー時に、電波をつかんでいるにも関わらず認証処理を繰り返し、結局実通信できない現象がかなり発生した。こちらは、発売と同時に入手して気に入り、1年強使いたおしたWM3500Rで唯一の不満と思える部分だった(当初はこれ以外にいくつか不満点はあったが、おおむねファームウェアの更新で改善された)。

 結果をいきなり述べるとWM3600Rは「大幅に改善」されていた。いや、正確には“ファームウェアVer.3.x(※)までのWM3500R”に対してなのだが、鉄道での高速移動中もデータ送受信がずっとスムーズに行えるようになった(※ WM3500Rの2012年3月現在の最新ファームウェアはVer.4.0.0)。

 というわけで、JR東海道線の品川駅〜川崎間でWM3600RとWM3500R(検証時ファームウェアVer.3.0.0)で、高速移動中のハンドオーバー“具合”を調べよう。検証は、ノートPCでFTPサーバに接続して3つのファイルを同時に受信しながら、平日始発直後の時間帯に品川から川崎方面へ移動。この間のデータの受信量をWindows 7のパフォーマンスモニターを利用して結果を記録した。なお、列車の速度が安定するまでということで、品川駅発車直後の30秒間は計測結果からは除外してある。加えて、それぞれ同時・同時刻の検証ではなく、品川駅〜川崎駅間はノンストップ区間とはいえまったく同じ速度で走行するわけではないので、まったくのイコール条件でないことは了承願いたい。

photo 横軸が経過時間、縦軸が1秒あたりのデータ転送量。データ転送量がゼロの時間帯は「通信できていない」ことを示す。こう並べると、両者はかなり違いがあることが分かる

 この結果、そして個人的な実利用時の感覚を含めて、高速移動中のWM3500R(Ver.3.0.0)とWM3600Rはもう別モノに近い印象である。WM3600Rも何度か1〜2秒ほどの途切れは発生しているが、品川駅から川崎駅までFTPのセッションは一度も切れなかった。対してWM3500R(Ver.3.0.0)は電波こそつかんでいるが、実通信できない時間帯がかなり存在し、特に品川駅発車直後からこの現象に見舞われてしまっている。

 WM3500Rの名誉のために補足しよう。WM3500Rも、上記を検証した後に公開されたファームウェアVer.4.0.0で、ハンドオーバー性能がかなり改善された。体感としては、上記で別モノと表現したWM3600Rとほぼ変わらないレベルになったと思う(ちなみに、筆者の周囲にいるWM3500Rユーザーの意見もほぼ同じだった)。WM3600Rもよいが、WM3500Rは発売からすでに1年以上経過しているモデル。それにも関わらずファームウェアのアップデートが行われ、かなり大きく機能を改善をしてくれるNECアクセステクニカの対応に改めて感心する(最初からそうしてくださいよ、という声もありましょうが)。ともあれ、これならWM3600Rも安心して購入できるといえる。

photo WM3500RもファームウェアVer.4.0.0でかなり性能が向上した

 ついでに、WM3600RはWM3500Rと同様に無線LANの電波出力がしっかり強めに確保されている点もうれしい。ポータブルルータでは“より長時間のバッテリー動作時間のため”といった関係からか犠牲になりがちな部分だ。所有するURoad-8000と比べても無線LAN出力はやはり強めで、電波が届くエリアは確実に広い。こちらはモバイル利用が中心であれば重視するポイントではないが、自宅でもWiMAXを使うという人は意外と重要。また、無線LAN電波が混雑している場所での「(端末との)つながりやすさ」にも効果がありそうだ。

photophotophoto 近距離、中距離、遠距離、それぞれ同じ場所で計測したWM3600R(無線LAN出力100%:aterm〜から始まるSSID)とURoad-8000(電波出力の調整機能はなし:URoad〜から始まるSSID)の無線LAN信号レベル。こちらはAndroidアプリ「Wifi Analyzer」を用いた簡易的なものだが、かなり差があることが分かる。URoad-8000では電波が届かなくなった距離まで離れても、WM3600Rは接続できていた。こちらはWM3500Rから引き継いだ隠れた魅力の1つだ


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 以上、前モデルWM3500Rに対する新機能や改善点を中心にチェックしてきたが、WM3600Rの魅力は、モバイル性能や使い勝手、多機能さはもちろん、さまざまな利用スタイルにも万能に対応できる点だろう。

 WM3600Rは登場時点でWiMAXルータ内で最軽量でも最小サイズでもない(もちろん大きくは劣らないが)。ただ、USB接続で有線モデムになる機能を応用すれば無線LANが混雑しているような場所(都市部の駅前など、最近は特にそんな場所が増えている)でもWiMAXの高速通信性能を損なうことなく利用できるし、有線LAN接続もできるオプションクレードル「WM06C」で、無線LANがないデスクトップPCやAV機器の利用を含めた固定ブロードバンドの代替手段として利用することもできる。この点はPCでの利用が多い人には大きな魅力だと思う。

 ベストセラーになったWM3500Rから約1年を経て登場したWM3600Rは、デザインの印象こそ大きくは変わらないものの、WM3500Rの魅力をそのまま継承した上で確実に進化している。はじめてWiMAXサービスに加入する人に安心して勧められるのはもちろん、旧モデル・他モデルをすでに所持する人にも買い換えるとより幸せになれそうな「定番/鉄板」のWiMAXルータである。



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