インタビュー
» 2012年12月06日 17時26分 公開

ハードの垣根を越えた“唯一なるもの” クラウドに船出するG'zOneブランド開発陣に聞く「G'zOne TYPE-L」(2/3 ページ)

[青山祐介,ITmedia]

耐衝撃性を増すハードウェア 設計は苦労の連続

 G'zOne TYPE-Lの進化はもちろんLIVE Gだけではない。4G LTE対応や、デュアルコアプロセッサーの搭載、Android 4.0の採用、そして4インチに大型化したディスプレイなど、前作G'zOne IS11CAから着実にスペックアップを遂げている。

photo カシオ計算機 デザインセンタープロダクトデザイン部第四デザイン室 リーダーの杉岡忍氏

 またデザインの方向性も異なる。G'zOneシリーズで初のスマートフォンとなった、米Verizon Wireless向けの「G'zOne COMMANDO」をオリジナルとするならば、G’zOne TYPE-LはG'zOne IS11CAよりオリジナルに近いデザインに仕立てられた。このデザインのまとめ役が、初代モデルからG'zOneシリーズに携わっているカシオ計算機の杉岡忍氏だ。

 「IS11CAのときにはCOMMANDOを引き合いに出して、あれが日本ではこういう進化を遂げました、と説明しました。G'zOne TYPE-Lは、COMMANDOとIS11CAの両方の良いところを吸い上げた上で、常に進化し続けるというG'zOneシリーズのプロダクトテーマに基づいて生まれた製品です。IS11CAはCOMMANDOに対してスタイリングのインパクトをより強化して世に送り出しました。そこからもう一度立ち戻って、衝撃に対してどういう構造、ケースの回し方が理にかなっているのかを設計チームと話し合った結果、衝撃が加わった時に負荷のかかり方が均等な方がいいことを考え、COMMANDOのようなシンメトリーなデザインを取ることにしたのです。デザインのテーマは『フレームワークタフ』という外骨格、クルマで言うところのシャシーがきちんとしているというのがデザインのコンセプトとなっています」(杉岡氏)

photophoto G'zOne IS11CAとG’zOne TYPE-L

 画面の周囲をガッチリ囲んで支えるフレームと、上下の中心から本体の真ん中を突き抜ける仮想の軸を持った「フレームワークタフ」コンセプト。画面周囲のパーツがU字型で、画面は上面にまで回り込んでいるIS11CAとは、大きく印象が異なっている。このモチーフはCOMMANDO以外にも、「自転車のペダルといった、かなり負荷のかかる造形物をモチーフにして、強度に耐える理由をデザイナーなりに解釈して、デザインに落とし込んでいる」(杉岡氏)という。

photo NECカシオモバイルコミュニケーションズ 商品開発本部 先行設計部 主任の永峯健司氏

 確かに、見た目こそ画面が4インチになる一方で、相対的に額縁が細く見える分、COMMANDOやIS11CAに比べて線が細く見えるが、上下左右の四方をガッチリ固めているという意味では、この額縁そのものが機械的にも強度パーツになっていると言える。NECカシオでハードウェアの構造設計を担当した永峯健司氏と、同じくハードウェアの回路設計を担当した和田昌子氏は、このポリカーボネート製パーツと、ナイロン樹脂でできた内部のケースの二重構造によって、高い耐衝撃を実現したと説明する。

 「前回のIS11CAは、下は尖っていて上は平らな形になっていますが、その平らな部分をどう守るかということで構造を考えました。今回は上下対称なので、すべて同じ方法で考え、一番先に当たる上下の先端にはエラストマー樹脂を配置して守るようにしてあります。もちろん、六角形の角の部分はあまり尖っていると力が集中するので、アールを取ったり先端に丸みを帯びさせたりして力が分散するようにしています」(永峯氏)

 こうした設計は。実際に試作機を落下させ、高速度カメラで撮影してその変形を解析して進められた。その結果生まれたのが、硬いナイロン樹脂でできた内部と、ポリカーボネート樹脂でできた外の枠という二層構造だ。なお内部の主要な?部分は防水仕様となっているが、枠のパーツは防水の外側で、その中まで水が入る作りになっているという。

photo NECカシオモバイルコミュニケーションズ 商品開発本部 第一ハード設計部 主任 和田昌子氏

 また、上下の先端部にはバンパー的な役割を持たせてある。この部分にも中に空間を設け、別のクッション材を入れてあえて変形させることで衝撃を吸収する構造としている。これも、解析の結果生まれた作りだ。

 耐衝撃や防水・防塵に対する作り込みは、これまで12年間にわたってG'zOneシリーズが培ってきた技術そのもの。それだけに、毎回インタビューをしていても、開発陣の絶対的な自信がうかがえる。ただ、新機種に実装される機能やスペックに対して、内部のレイアウトや耐衝撃性能をどう担保するかという点には、常に頭を悩ませるようだ。

 「画面サイズが前回の3.6インチに対して今回は4インチとなりましたが、やはり画面が大きくなることで割れやすくなります。また、バッテリーが大きくなることで重さも181グラムとだいぶ重たくなりました。この点では苦労しています。例えば、画面はより強度を上げるために、米Corning製のゴリラガラス2を使っています。また、大きな画面を限られた本体サイズの中にどう収めるかは、初期の時点で苦労しました」(永峯氏)

 今回、新たに追加された機能としてワンセグが挙げられる。最近ではバッテリーを消費することもあって、あまり使われなくなっているワンセグ。それをあえてG'zOne TYPE-Lに搭載したのは「外で見たいとか、釣りをしながら、キャンプ場で、アウトドアで見たい、とG'zOneユーザーの中ではニーズが高い」(高木氏)ためだという。ワンセグ用のロッドアンテナは、本体下面にアンテナトップがあり、そこから引き出して使う。横位置で見る分にはあまり気にならないかもしれないが、もう少し自然な位置に取り付けられなかったのだろうか。

photophoto ワンセグアンテナは端末の下に伸びる。横画面にすれば気にはならない

 「前回は通信用のアンテナが端末の上下に入っていました。今回は下にメインアンテナ、上にサブアンテナとBluetoothなどのアンテナ、そしてLTEのアンテナが側面と上にも入っています。つまり本体の上部はいろいろなアンテナがギチギチに詰まっており、ワンセグアンテナは下に設けるしかありませんでした。またIS11CAにあったアクティブスロット用のハードキーがなくなってしまったのは、サイドにLTEのアンテナを置かざるを得なかったからです」(和田氏)

ハンドメイドに近いボディカラーの「ブラック」

 G'zOne TYPE-Lのボディカラーは、レッドとブラックの2色。レッドは、鮮やかに輝く高輝度塗装が印象的なカラー。またブラックは、表面の凸凹がこれまでにない触感と高いホールド性を生み出すカラーとなっている。特にこのブラックは、「レザートーン塗装」といい、表面の凸凹を成型ではなく二層の塗装によって表現したものだ。

photophoto ブラックのレザートーン塗装

 「このレザートーン塗装は、かなり前から仕込んでいたものです。カラー担当が以前から塗装メーカーに依頼してトライしていたもので、今回、G'zOneに使ったらインパクトがありそうだと提案され、構造チームと相談しながら実現したものです。表面の凸凹はソフトフィール塗装を二層に吹いて表現しているのですが、このドットの管理がとても難しいのです」(杉岡氏)

 「通常の塗料は霧状にして吹きつけるのですが、これはわざと粗くして吹きつけます。粗い分だけ塗料が一定量で出てこないので管理が難しい。塗料を吹き付けるノズルの絞り具合、シンナーの量が難しく、塗料がシャバシャバでもドロドロでもダメ。仕上がりの見本があって、粒の大小、密度感、膜厚といった条件の見本と照らし合わせながら調整していくため、歩留まりも悪くなってしまいます」(永峯氏)

 ブラックの表面の凸凹は塗装による表現のため、同じパターンはひ1つとして存在しない。そのため「作り手としてはオーダーメイド的な感覚」(杉岡氏)だ。事実、こうした手間のかかったものを大量生産のものとして作り、それを世に出すというのは、インテリアのような商品でないと実現しにくいという。それをスマートフォンという最先端の機器で再現できただけに思い入れも強く、杉岡氏は「タダのブラックではないぞ」と周囲に言い続けているという。

 このあえて難しい手法を選択したのは、「イノベーションにつながるものがないと、G'zOneとしては許せない」(杉岡氏)からだという。ただ表面に色をつけるというだけでなく、触感に訴えるテクスチャーを表現できる塗装を、今後もトライしていきたいと杉岡氏は意気込む。事実、デザインチームではさらに表面がザラザラしている、“やすり”のような塗装もトライしていたと明かす。また杉岡氏は、「今後はたとえケースが削れてもカッコよく見えるような、劣化することに価値があるようなものにもトライしてみたい」と付け加えた。

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