富士通の「らくらくスマートフォン」が仏Orangeに選ばれた理由海外進出第1弾はユニバーサル端末(1/2 ページ)

» 2013年04月04日 14時51分 公開
[平賀洋一,ITmedia]

 NTTドコモが2012年の夏モデルとして発売した富士通製の「らくらくスマートフォン F-12D」。ユニバーサル端末として長い歴史を持つ「らくらくホン」シリーズでは初めてのAndroid採用端末だ。

 このらくらくスマートフォンがフランスの通信事業者France Telecomに採用され、「STYLISTIC S01」として同社の携帯電話ブランド「Orange」から6月に販売されることが決まった。2月末に行われたMobile World Congress 2013の富士通ブースは、このSTYLISTIC(=らくらくスマホ)を前面に打ち出す展示となっており、各国の通信事業者からも多くの引き合いがあったという。

photophoto 「STYLISTIC S01」

 らくらくスマートフォンの海外進出について、その経緯と狙い、これからの展開などを富士通ユビキタスビジネス戦略本部長代理の松村孝宏氏に聞いた。

ドコモのアシストで、Orangeが「らくらくスマホ」を採用

photo 富士通の松村氏

――(聞き手、ITmedia) Mobile World Congress 2013の開幕直前に、富士通のらくらくスマートフォンが「STYLISTIC S01」として仏Orangeに採用されたことが発表されました。富士通のスマートフォンが海外で発売されるのはこれが初めてですか?

松村氏 きちんとした形で発売されるのは今回が初めてです。

―― らくらくスマートフォンといえば、NTTドコモと富士通のコラボレーションから生まれたという印象があります。らくらくスマホのフランス市場参入について、ドコモはどのように関係していますか。

松村氏 Orangeと商談する際にアシストしていただいた――という表現になると思います。OrangeとNTTドコモはものすごく素性が似ていて、OrangeはFrance Telecomという固定回線事業者を親会社に持つ携帯電話の事業者。かたやドコモも、NTTという固定回線の会社から生まれた会社で、そもそもつながりが深い。そのため、お互いに端末ラインアップについて情報交換する機会があるそうで、そのなかで「富士通の(らくらくスマートフォン)はいいよ!」と後押ししてもらいました。直接的な支援という形ではありません。

―― らくらくスマートフォンは海外展開も視野に入れて開発されていたのでしょうか?

松村氏 基本的には「らくらく」だけでなく、「ARROWS」を含めたすべての商品で海外展開したいと考えています。例えば昨年のMobile World Congress 2012では、ブース全面にARROWSのラインアップを展示しました。クアッドコアプロセッサーを搭載したことなどをアピールして各国の通信事業者に商談を仕掛けたわけですが、スペックについては皆“おなかいっぱい”なんですね。結局、価格競争になって、とてもビジネスにならない。

photophoto Mobile World Congress 2013の富士通ブース

 そこで“別腹”を探してみると、各事業者はシニア層にどうスマートフォンを使っていただくのか? という課題を持っていることが分かりました。それなら富士通には、10年以上ユニバーサル端末を作ってきた経験があり、ノウハウがあり、そして「らくらくスマートフォン」というカタチになったものがある。これなら事業者にとっても富士通端末を採用する価値が見いだせますし、我々もスマートフォンなら世界的なビジネスをしやすい。もちろん、ARROWSシリーズの提案も続けていますが。

「らくらく」ならではのサービスも提供

―― ドコモのらくらくシリーズでは端末に付随して独自のポータルサイトやコンテンツが用意されています。Orange向けのSTYLISTICも同様のサービスが提供されるのでしょうか。

松村氏 端末とサービスがセットであることは、話し合いの大前提でした。日本では我々とキャリアが共同でサービスやコンテンツを提供していますが、グローバルでは珍しいですね。基本的には端末の差別化を狙ってメーカー単体で独自サービスを提供しますから。したがって我々も、ハードとサービスを一体にして提案しています。

photophotophoto STYLISTIC 01のUI

―― ではSTYLISTICならではのサービスはOrangeではなく、富士通が提供するわけですね。

松村氏 そうです。もちろんOrangeが提供するサービスやアプリもありますから、そうしたものはプリインストールしています。

 端末のサポートはもちろん、専用のポータルサイト、コミュニティサービス、写真共有サービスなど、すべて富士通が運営します。(STYLISTICは)スマートフォンですから自由にネットのサービスが利用できますが、いきなりオープンなネットに出ていくのが不安なユーザーは多い。そこで日本と同じように、ポータルサイトに広告が出ないとか、コミュニティに誰かを誹謗中傷するコメントが出ないよう監視する、などの体制を敷きます。

―― ハードとサービスは一体ということですが、日本・フランス以外でも1つのパッケージとして売り込んでいるのでしょうか。

松村氏 各国ともパッケージじゃないと本当にお話にならないですね。ハードだけだと交渉のテーブルにも着けないほどです。Androidなら基本的なサービスはGoogleが提供していますし、マーケットからアプリを入手できます。差別化ポイントがスペックだけだと、すぐに価格競争にさらされます。特に世界でのブランド力に課題があるARROWSだと顕著です。何か付加価値が必要になります。

―― 確かに「らくらく」シリーズは付加価値がものすごく高いですね。

松村氏 フィーチャーフォンのころからものすごく開発投資がかかっているモデルですから。機能面ではARROWS Xよりすごいと思います。

―― 逆に日本のらくらくスマートフォンとはどんな違いがあるのでしょうか。

松村氏 一番の違いはGoogleのサービスに対応している点です。Google Playも使えますから、アプリのインストールも自由にできる。ただ日本だとGoogleのサービスを制限することでパケット料金を抑えていますが、フランスだと専用の料金体系は用意しません。そういった意味では“普通のスマートフォン”として販売されます。

―― カラーはブラックの1色のみですね。

photo 背面はマット仕上げ

松村氏 今回一番驚いたのがボディカラーについてです。「フランスの女性は黒いスマートフォン買わないでしょ?」って言ったら、現地のスタッフにすごい怒られました(笑)。皆さん黒をお選びになる。

 日本の感覚だと女性向けに「白はどうですか、赤はどうですか、ピンクもありますよ、ゴールドはいかがですか」と用意しますが、そもそも海外だと多色展開を行わない。iPhoneだって2色、GALAXYも黒系統が中心です。

―― 例えばですが、選択肢を増やせばそのような傾向は変化するのでしょうか。

松村氏 どうでしょうね、もしかするとそれでも黒が一番売れるかもしれません。はっきり言って僕らも未経験ゾーンです(笑)。今の調査では女性も黒が一番人気ですから、市場の反応を見て検討していきたいですね。

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