3キャリア間通話定額開始で見えてきた3社統合構想――現実味を帯びてきたウィルコム&イー・モバイル合併石川温のスマホ業界新聞

» 2013年11月22日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 11月13日、ソフトバンクモバイル、ウィルコム、イー・モバイルは、ソフトバンクグループの携帯電話事業者への国内通話が定額になるオプションを11月28日より提供すると発表した。これにより、ソフトバンクモバイル、ウィルコム、イー・モバイル、さらにディスニー・モバイル・オン・ソフトバンクのユーザー同士が定額となる。

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 定額プランの料金はソフトバンクとイー・モバイルが月額210円、ウィルコムは月額525円だ。ウィルコムの場合、だれとでも定額とセットであれば月額280円となるし、ソフトバンクとウィルコムで10年以上継続利用しているユーザーには無料で提供するキャンペーンも提供する。

 3キャリア間の定額通話サービスと言えば、今年のソフトバンク株主総会で、孫正義社長に対して株主から提案のあった案件だ。その場で孫社長が「やりましょう」と宣言したものの、その後、宮内謙ウィルコム社長が「頭を悩ませている」と語っていた。しかし、株主総会から5カ月後に見事、実現の運びとなった。

 3キャリアで定額制が実現されて喜ばしい限りだが、一方で、基本料金プランだけでは定額とならず、オプション料金が必要であること、またウィルコムの場合はフィーチャーフォン型端末や誰とでも定額パスでは利用できず、基本料金が高めなスマートフォンでなければ契約できないなどの制限があるのは残念なところだ。孫社長にはスパッと、幅広いユーザーに基本料金プランだけで利用できる定額サービスを実現して欲しかったものだ。

 今回の3キャリア音声定額制スタートで、現実味を帯び始めているのがキャリアの合併話だ。ひとつの会社が複数のキャリア、ブランドを展開するのは必ずしも効率がいいわけではない。いっそのこと、まとめてしまったほうがブランドの訴求もしやすいし、ユーザーにとってもわかりやすいのではないだろうか。

 最も可能性があるのが、ウィルコムとイー・モバイルを一緒にしてしまい「LCC」として訴求することだ。

 すでにウィルコムは宮内謙社長自身が「うちは携帯電話業界のLCCだ」とアピールしているし、イー・モバイルも「挑戦するスマホ」として、月額3880円で他社と差別化している。販売網もウィルコムプラザが800店舗でイー・モバイルショップが200店舗。すでにお互いがお互いの商品を売り始めているが、いっそ一緒にしてしまった方が効率もいいし、もとは通話のウィルコム、データ通信のイー・モバイルということで、相互補完で相性も抜群にいいはずだ。

 当然、ソフトバンクモバイルはiPhoneとシャープのハイスペックAndroidスマホを中心にしたプレミアムブランド、ウィルコムとイー・モバイルはPHSのフィーチャーフォンとNexus5を代表とするAndroidスマートフォンを軸としたLCCブランドという棲み分けはとてもしっくりとくるはずだ。

 孫社長としては、単に2つだけでなく、3つのキャリアを「ソフトバンク」ブランドでまとめてしまうというのもアリだろう。ウィルコムを救済し、イー・モバイルを買収して、3つのキャリアを合計して日本国内で4600万を超えるユーザー数を抱えているにも関わらず、いまだソフトバンク単体とKDDIで比較されるため、国内3位キャリアという扱いになっているのには我慢できないはずだ。3社をひとつにし、圧倒的にKDDIを引き離して国内2位、さらにスプリントも一緒の扱いにすることで、国内ナンバーワンキャリアという称号を欲しがっているのは間違いない。

 ただし、すぐにイー・モバイルを一緒にしてしまっては、来年中に行われる予定の1.7GHz帯の新規割り当てが不利になってしまう。とりあえず、ソフトバンクとイー・モバイルは別会社であり、イー・モバイルは周波数が逼迫しているとアピールし、1.7GHz帯をもらってから、一緒の会社にするというのが自然な流れではないか。

 とはいうものの、イー・モバイルが語る「ソフトバンクとは別会社」というのも、もはや限界に来ているように思う。実際、今週発売となったNexus5は「EMOBILE 4G-S」という契約体系になるのだが、これはソフトバンクモバイルのネットワーク設備やサービスを利用するというもの。ユーザーがNexus5を契約しても、イー・モバイルの契約者としてはカウントされず、ソフトバンクモバイルの契約者となる(発表会当時、両社の契約者数として合計2契約となるかと思っていたのだが、正式にはソフトバンクの1契約のみとのこと)。

 Nexus5はイー・モバイルブランドで売られるものの、実態はソフトバンクモバイルなのだ(すでにARROWS Sも同様だが)。

 イー・モバイルの既存ユーザーがNexus5に機種変更すればするほど、イー・モバイルのネットワーク負荷は軽くなり、周波数にも余裕が出てくる。すなわち、1.7GHz帯の新規割り当てには不利に働いてしまうのだ。

 もはやソフトバンクとイー・モバイルはひとつの会社、もしくはイー・モバイルはMVNOというポジションに過ぎない。

 そう考えると、早いうちにソフトバンクとブランド統合してしまい正真正銘の国内2位キャリアになるもよし、イー・モバイルとウィルコムの2社だけを統合してLCCとして、ソフトバンクとは別ブランドで残しておくもよし。いま、孫社長としては、様々な選択肢を吟味しているのかも知れない。

© DWANGO Co., Ltd.

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