「ティム・クックには直接会って感謝したい」――LTEの父・NTTドコモ尾上誠蔵氏がアップルに恩義を感じる理由石川温のスマホ業界新聞(1/2 ページ)

» 2013年11月29日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 11月21日、神奈川県横須賀市のドコモR&Dセンターにて「DOCOMO R&D Open House記者説明会」が行われた。次世代移動通信やモバイル技術を応用したサービスの進化など研究開発の取り組みを紹介するというものだった。

 記者説明会終了後、NTTドコモ取締役常務執行役員で研究開発センター所長の尾上誠蔵氏に話を聞くことができた。尾上氏は「LTEの父」とも言われているなど、世界的なLTEの普及に尽力した人物でもある。今後、展開が予想される「5G」や、ドコモとアップルとの関係も聞くことができた。

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―― 5Gはいつごろ商用サービス開始になりそうなのか。

尾上氏 (技術の完成を待つのではなく)逆に日を決めている。2020年。2020年を目指して何かをやろうという感じ。オリンピックはあとからついてきた。

 何か新しい世代の技術が始まるときには、その10年くらい前からディスカッションが始まっている。4Gもそう。5Gもそろそろ時期ですねと言うステータス。今までと比べて絶対的な違いは、4Gまではうちに秘めたる確固たるアイデアがあったが、今回の5Gはこれといったものがないということ。

―― あと7年と言うことを考えると、残された時間は短くはないのか。

尾上氏 2020年のはじめぐらい、オリンピックに間に合わせたい。LTEは2009年に滑り込んだが、普及が始まったのは2011年とか。第3世代はドコモが2001年がフライング気味で、普及が始まったのが2003年とか。そういうイメージ。

 2020年、普及が始まるのはそれ以降。技術そのものはいろいろ組み合わせはできるというアイデアはあるが、全く新しい変調方式ができるとか、そういうものはなく(劇的な進化は)苦しいねという状況。フラストレーションが溜まっている。

―― 業界で5Gとはどういったものなのかと頭を悩ませている中で、尾上さんが個人的に考えている5Gとはどういう世界観のものなのか。

尾上氏 高い周波数を使うとすぐに言いがちだが、私としては、高い周波数を使うのはそこにあるから使うのであって、それが世代を表すものではない。どうしても、それが強調されがちになるが。

 数少ない技術のなかで、私が思っているのが、つまらない技術でも組み合わせるといい事が起こるということ。最近の例で言えば、4Gの延長線でスモールセルという言葉が流行っている。もうひとつ、キャリアアグリゲーションというのがありふれた技術になろうとしている。

 それらは単なる力業の技術で、なにも賢い技術ではなく、何の新しいアイデアでもない。スモールセルも10年も20年も昔からやっており、セルを小さくしてキャパシティを上げるのは当たり前の話。

 しかし、その2つを組みあわせると非常にいい効果を生み出す。それがドコモが先日、発表した高度化C-RANアーキテクチャと呼ばれるものになる。ドコモは2015年にキャリアアグリゲーションを導入したいと言っているが、それで実現できる。スモールセルとマクロセルの間でキャリアアグリゲーションすることで、マクロセルでコネクティビティを担保しながら、必要なところで、スモールセルのキャパシティを使う。コアネットワークの負荷が減るなどの効果がある。

 それと同じ組みあわせだと最近見つけたのが、Massive MIMO。たくさんの素子をおいて、ものすごいビームを絞ると遠くまで飛ぶ。それが言葉としては騒がれていて流行っている。

 昔からアダブティブアンテナというのがあるものの、日の目を見ていないのは、遠くに端末があったとき、ビームを絞って電波を飛ばせるものの、届く前はどこにいるかがわからない。共通チャネルが届かない問題があった。

 そういう意味で、Massive MIMOとC-RANアーキテクチャ、マクロセルとスモールセルの組み合わせでいけば、マクロセルでトラッキングして、そのあとは遠くまで飛ぶ。例え、高い周波数を使っても、セルラーシステムみたいに何キロも飛ばすのは夢のように思っているが、過去にこんなことできるかなと思ってきたことも実現できてきたので、高い周波数でも遠くまで飛ばすシステムができるじゃないか、というのが私が最近、発見した5Gでのイメージ。

 いまその組み合わせがいいかなと思っている。

―― 最終的には2020年になった段階で「これが5G」という後付けで名前が付けられるイメージになるのか。

尾上氏 (5Gという名称に関しては)全く今の話とは別になる。いままでもドコモでは3.9Gといったり4Gと言ったり、コントロールできていなかったし、するつもりもなかった。

 市場を向いた考えと、技術的にどう言うかは別次元の話になっている。2020年ごろにできた技術を5Gと呼ぶようになってしまう。

 単に技術者としては新しいモノがあればいい。しかし、多くの経営者は新しいモノをやろうとするとお金がかかると思っている。連続的にカネのかからない方を好む人もいる。そういう議論をこれからすることになる。LTEの時もLTEではなくHSPA+を推す人がいた。このような議論がこれから始まる。

―― いまのドコモのLTEネットワークは2GHzが中心で、一方のKDDIは800MHzでプラチナバンドを訴求している。将来を見据えた上で、どっちがいい悪いというのはあったりするのか。

尾上氏 ドコモの考え方として、まず2GHzから始めた。しかし、基本的には端末の普及に応じて帯域を増やしていく。これだけ普及し、端末もたくさんの周波数をサポートしてきているので、幅が増えており、KDDIが800MHzをしっかりやったのは大したものだが、むしろ、私は既存のバンドをLTEで使おうよと世界中で解いて回ってきた。

 周波数フラグメンテーションがLTEの課題だと言われるが、僕はそうは思っていない。

 それは新しい周波数を使うのが問題であって、LTEの問題ではない。一番最初に感謝したのはiPhone。iPhone5の段階で2GHzを採用してきた。今回は3バンド対応なので、これからもグローバルに共通に使える端末が増えてくる。

―― 2GHzから始めたのはFOMAで使っていたのが大きかったのか。

尾上氏 新たに使えるのは1.5GHzだったので、時間がかかる。技術的にはすごく自然。2GHzのRFが3G用として載っている。ベースバンドのチップが対応すれば、ちょこちょこと手をいれればすぐにできる。ヨーロッパの事業者には2GHzのLTEはすぐに始められないかも知れないが、端末だけは増やしておいた方がいいよと言っておいた。

 いまは普通の端末でも2GHz、1.8GHzは当たり前のように載っている。

―― 日本市場を考えると、来年あたりはTD-LTEが盛り上がりそうだが、ドコモはTD-LTEバンドを持っていない。来年、iPhoneがTD-LTE対応しそうななかで、ドコモは不利にならないのか。

尾上氏 TDがないというよりは、TDD用のバンドがないだけ。帯域幅を片バンドでもらおうが、ペアバンドでもらおうが使用上の有利不利はなく、トータルの帯域幅が重要。技術的にはFDDとTDDは周波数と時間を組み替えただけであり、共通性がある。唯一、TDDには特殊なスロットが定義されているだけで技術的には共通のもの。TDDをやってないから不利というわけではなく、帯域幅が少ないから不利という議論はある。

 ただ今後、グローバルに共通な帯域を求めると、TDDになりがちで、そこは安易にそのように流れて欲しくはない。

 私は一部ではTDD嫌いだと思われている。社内でも社外でもTDD嫌いというように見られている。それは間違いだと言っている。私が嫌なのはTDDを主張する人が、TDDだから周波数効率がいいとか、TDDだから上下をフレキシブルに使えるとか、嘘をついてTDDを主張している点にある。

 技術的に正しく理解すれば、TDDのメリットは共通のバンドがアサインしやすいという点だけ。TDDにはデメリットがある。干渉しやすい、端末同士で干渉が起きます。最大に効率を上げようと思ったら、事業者間でも局間の同期が必要になってくる。同期がないと、隣同士で、送信している端末の隣でまともに受信をするので、干渉が起きてどうしようもない。同期をとってまでやるという覚悟がないといけないデメリットがある。事業者が1社で独占していればいいが、隣の端末同士が干渉する。

 効率がいいという点はFDDと変わらない。組み替えただけなので。よく間違いを主張される方がいるので、それは嫌いだと、しつこく言っておかないと。

―― 干渉するということは日本国内でも起こりえるのか。UQとWCPでもあり得るのか。

尾上氏 あり得ますよ。過去、PHSでも起きていたので。あれは同じチャンネル同士での干渉でしたので。

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