「ティム・クックには直接会って感謝したい」――LTEの父・NTTドコモ尾上誠蔵氏がアップルに恩義を感じる理由石川温のスマホ業界新聞(2/2 ページ)

» 2013年11月29日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」
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―― LTE-advancedは計画通りなのか。

尾上氏 はい。2015年です。何をもって、LTE-advancedと呼ぶのかにもよるが、キャリアアグリゲーションは2015年です。

―― 韓国ではLTE-advancedで先行しているが、ドコモとして焦りはないのか。

尾上氏 焦りはないとわざわざ主張しています。なぜかというと韓国でやられているのはキャリアアグリゲーションだが、category4なので、150Mbps以上でません。ドコモではすでに20MHzを使って150Mbpsサービスを提供している。我々は20MHzを超えるキャリアアグリゲーションを提供しないことには、意味がないと思っている。その時の端末能力はcategory6を想定している。そのタイミングで言うと2015年になるかなと。

―― ドコモの最新ラインナップはcategory4だが、iPhoneはcategory3だった。ドコモがiPhoneを取り入れたことで、ドコモのLTEの進化に対して足を引っ張られたりしないのか。

尾上氏 あまりアップルがどうのこうの言うのはまずいんでしょうけど、そういう端末もあるということ。所詮、ローミングインで入ってくる端末はどんなものだってドコモのネットワークで動いている。そのなかで、メジャーな割合を占める端末は、ドコモの思い通りであって欲しいと思うものの、世界でメジャーなものであっても悪い状況ではない。カテゴリーが4の時代に3であっても、それは時間のズレで追いついてくるだろうし、ネットワーク上の大きな問題はないと思う。

―― 今後、アップルにcategory4など端末の仕様に関する提案はしていくのか。KDDIのように。

尾上氏 (苦笑)それはどうですかね。

―― ドコモの技術力と、アップルのグローバル性を組み合わせると最強のiPhoneができるような気がするのですが。

尾上氏 あまり交渉ごとは言えませんが、やっとこういう関係になりましたので、情報交換するルートはできた、といっていいかはわからないが、それは自然な流れだと解釈していただいて(結構です)。

 これからの技術のトレンドをどう読むかとか、ある程度、オペレーターの中では(ドコモが)技術を持っていると(アップル側が)理解し、尊重してもらえるとありがたい。

 周波数フラグメンテーションについて、アップルには個人的にはすごく感謝している。たくさん、周波数を積んでもらいましたし、アメリカ用のやつにもドコモのバンド19が載ってますし、2GHzをやってくれたのも早かった。私が世界に向かって2GHzを使おうぜと言ったときに、皮肉なことにアップルが2GHzを積んでくれた。ティム・クックに直接会って、御礼を言いたかった。

―― 昔に比べてドコモのネットワークにおける優位性が失われているような気がするが。

尾上氏 ネットワークがある程度、差が縮まってくるのは事実。最近、LTEばかりに注目が行くので、LTEの部分だけとらえられて、調査でドコモが良くないと言われるが、その辺、ドコモの好みが3Gを含めた全体的に安定したチューニングになっている。

 すでにLTEの時代に移っているので、周波数の使い方もLTEにシフトしている。もう一度、しっかりと早くからLTEに打ち込んでいるメリットをだせるようには頑張っています。

―― いつごろから巻き返せるのか。

尾上氏 巻き返すというと負けているというイメージになってしまうが(苦笑)。他社は3Gの人が大丈夫なのかと心配になるほどLTEに移行している。

 (ドコモでは)LTEがすでにトラフィックが多く、半年、1年かけてLTEの帯域を拡大しているので、そうなればいいんじゃないですかね。ただ我々は3Gのお客様も多いので、既存のお客様を大切にする。

―― VoLTEはどうするのか。

尾上氏 VoLTEは来年。KDDIさんはいつからですからかね。

―― 音質はどうなるのか。

尾上氏 コーデックが違うので確実に違います。いまは3.4Kですが、7Kまで広がりますから、クリアで吐息まで伝わります。VoLTEというよりコーデックの違い。

―― 将来的にはVoLTEに一本化していくのか。

尾上氏 遠い将来には一本化はしたいが、3Gのお客さんはしばらく残るとみている。ドコモが頑張っても、ローミングインがあるので、ソフトバンクに(ローミングインをすべて)お願いするわけにもいかず、3Gをサポートしていく。

―― フィーチャーフォンにもVoLTEを搭載するというのもあり得るのか。

尾上氏 そういう時代もくるでしょうね。

取材を終えて

 尾上氏は、LTEが始まる前、世界中で「既存バンドでLTEをやるべき」と主張していた。まさにiPhoneが2GHz帯を採用したことで、2GHz帯のLTEが一般的になった。尾上氏の正当性がアップルによって実証されたというわけだ。

 アップルが今後もiPhoneで世界的な影響力を発揮しようと思ったとき、やはりキャリアの持つ技術力や知見を取り込むのが重要だ。アップルがKDDI・田中社長から「800MHzに対応してよ」というお願いを聞き入れたのも、KDDIが技術的な知見を持ち合わせており、アップルを説得するのに充分な材料を持ち込んだからだ。

 そう考えると、このタイミングでNTTドコモからiPhoneが発売されたのは重要な意味を持つ。アップルとしてもNTTドコモの特許やノウハウなどを使いたいのは間違いない。ドコモとしても、せっかくYRPに優秀な人材や技術を豊富に持っているのだから、それらをアップルに使ってもらって、世界的に普及してもらえばいいと思う。NTTドコモがやりたくてもできなかった「グローバル展開」をアップルにお願いするのも悪くないと思うのだが。

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