ソニーがライフログ活用の「スマートウェア」を披露――商品企画統括部長が語る「他社との違い」:石川温のスマホ業界新聞

» 2014年01月17日 12時22分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 今年のCESといえば、やはり「ウェラブル機器」が花盛りというのが印象的であった。どのメーカーも腕時計やメガネを展示しており、まさに未来を予感させるものだった。しかし、それはかつてアップル「iPod」が流行れば「MP3プレイヤー」、アマゾン「Kindle」が出てきたら「電子書籍端末」、iPadが出たら「タブレット」というように、どのメーカーも単にブームに乗って真似をしてきているだけに過ぎないように感じた。これから、生き残っていく機器は、単にモノの出来だけなく、いかに「エコシステム」を構築するかであり、そういった意味においては、自ずとウェラブルバブルにおける勝者は決まってくるのではないだろうか。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2014年1月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額525円)の申し込みはこちらから。


 今回、ソニーはウェラブル機器として「コア」というコンセプトを発表した。指先大の「ソニー史上、もっとも小さいガジェット」の中には加速度センサー、Bluetooth LE、バッテリーなどを内蔵。コアをアームバンドに収納して手首に付けたり、カバンのなかに入れることで普段の歩数や運動量を測定できる。さらにスマホのアプリ側も作り込むことで、単に運動量だけでなく、音楽や動画の再生時間、位置情報、撮影した画像などすべてを「ライフログ」として管理して楽しめる世界観を目指している。

 商品開発を担当したソニーモバイルのVice President, Head of UX Product Planningである黒住 吉郎氏は「人間とスマホの間には距離がまだある。スペックにおいて、CPUはデュアルコア、クアッドコアになり、そればかりを追い続けてしまいがちになってきた。このまま技術が進化すると、さらに人との距離が広がってしまう。これが最も恐れていることで、スマホやケータイは24時間、人のそばにあるもの。技術を人間にちょっとした生活の延長として使えないかという考えがある」と語る。

 黒住氏はコアを「つけ爪に近い」という。女性が好んでネイルを飾り付けるが、爪を彩ることで生活がちょっと変わってウキウキする。まさにコアはちょっとした生活の延長線上で、人に役立つモノという位置づけを考えているという。

 ウェラブル機器といえば、ソニー「Smartwatch」やサムスン電子「GALAXY Gear」などが代表例だが、画面を搭載し、様々な情報を表示、操作するというのが一般的だ。しかし、今回のコアはあえて画面なども搭載せず、シンプルなものに仕上げた。

 「技術陣からは、あと5mm大きくすればディスプレイも載せられますよ、と言われたが、我慢した。スマホはすでに生活のプラットフォームになっているので、操作や表示はそこに頼ればいい。別々のものを作ればいいというものではない」(黒住氏)

 「腕につけて歩数を計測する」といえば、NIKE「FUEL BAND」やFit bitなど、すでにライバルは多い。しかし、ソニーとしては全く違うものを作り出そうとしているのかと思いきや「全然違うモノではないし、そこを否定しちゃいけないと思っている」(黒住氏)と本心を語る。

 「他社もウェアラブル機器や、冷蔵庫、洗濯機をスマート化するといったアプローチがあるが、おそらく目指している方向は我々と似ているのだと思う。

 そのなかで、ソニーのDNAや得意分野を考えると、家電というよりも、ちょっとした楽しみ、感動、人生が楽しくなる商品を作っていきたい」(黒住氏)

 そんなソニーの「コア」における「コア」はどうやら「ソーシャルコミュニケーション」にあるようだ。

 「コアにはボタンがあるのだが、これはちょっとした瞬間に『これいいね』と覚えておくために、ボタンを付けた。人から言われるいいね!ではなく、自分のためのいいね!になる」(黒住氏)

 Facebookのいいね!は、写真などをアップし、人からいいね!と感想をもらうものだったりする。時に、人からの反響をもらいたいが為に写真をアップするということもある。コアでは、自分が嬉しいと感じたときや、覚えておきたい時にボタンを押し、自分のために「いいね!」と記憶しておけるのだという。スマホのアプリと連携しているため、位置情報でどこに居たかも後でわかる。

 「ソニーの土台、根っこにあるのはエンターテインメント。ほかのウェラブル機器はエンターテイメントを意識していない。Xperiaをやっているソニーがなぜウェラブルをやるのか、ということだ」(黒住氏)

 業界内でウェラブル機器が盛り上がる一方で、一般ユーザーからは「かっこ悪いモノを腕に付けたくない」という声も聞く。黒住氏も「社内に時計好きがいるのだが、彼からは厳しい意見が浴びせられる」という。

 確かに時計にこだわり、高級腕時計をしている人からするとウェラブル機器をつけるという発想はないだろう。

 そこでソニーではあえてバンド型の機器を作るのではなく、コアという小さな機器にすることで、様々なサードパーティと組み、いろんなデザインのバンドを作れるようにした。「コアの発想にあるのは、昔、腕時計のベルトに付けていた薄い金属製のカレンダー」(黒住氏)だという。黒住氏に言われて思い出したが、確かに昔、父親が生命会社のロゴが入った金属製のカレンダーを腕時計につけていた。コアをカレンダーのようなポジションにしたいと言われれば、メインである腕時計の存在を生かしつつ、コアを使った新しい生活を始められる。ソニーが徹底的に大きさにこだわってきたという理由も納得だ。

 黒住氏に「コアの手応えはどうか」と聞くと「我々も全く予想できない」という。なぜなら「すべてをソニーで揃えたら、何となくの予想は立てられる。しかし、今回の商品は、身体に装着するためのパーツはサードバーティが開発、製造できるようにしている。エコシステムがどれくらい広がるか、全く見当がつかない」(黒住氏)

 商品に関する詳細は、2月にバルセロナで開催のMWCで発表になるようだが、黒住氏の口ぶりを聞く限り、かなり面白い機器に仕上がるような感がある。ぜひとも期待したいところだ。

© DWANGO Co., Ltd.

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