各キャリアから2014年夏商戦向けのAndroidスマートフォンが発表されたが、その機種数は以前から大幅に減少。かつてのようにさまざまな個性派モデルが出そろう――という状況ではなくなってきている。その理由と影響について考察してみたい。
携帯電話の商戦期は、ボーナスシーズンの夏と冬、そして進入学や就職、新生活を迎える春と、大きく分けて3つに分かれる。このうち春商戦は、主に学生がターゲットとなるため新機種よりも価格施策が重視される傾向が強い。スペックを重視した新商品が投入されるタイミングは、ボーナスで社会人が端末を買い替える夏・冬商戦に向けてとなる。
そして2014年も、夏商戦に向けてさまざまな新機種やサービスが発表された。NTTドコモは「VoLTE」と新料金プランで通話を重視、KDDI(au)はキャリアアグリゲーション(CA)とWiMAX 2+に加え、新しい電子マネーの「au WALLET」で決済サービスに力を入れている。またソフトバンクモバイルは新製品発表会を実施しないなど、各社の戦略は三者三様に大きく分かれる形となった。
一方で、各社が投入する夏商戦向けスマートフォンを見てみると、NTTドコモが7機種、auが6機種、そしてソフトバンクモバイルが1機種となっている(6月9日現在)。このスマートフォンの機種数と内容を以前と比較してみると、キャリアのスマートフォン戦略に大きな変化が起きているのが分かる。
まずは、スマートフォンへのシフトが本格化した2011年以降の、主要3キャリアにおける夏・冬商戦向けに投入された端末数推移を、グラフにまとめたので確認して欲しい。
このグラフでは、春・秋の商戦期のみを狙って投入されたモデルなどを含めていないことから、特に春商戦に向けて端末を投入することが多いauなどは、端末数が少なく出てしまうことはご了承頂きたい。だがそれでも、大まかなスマートフォン端末数の推移を確認することはできるだろう。
そしてこのグラフから見えてくるのは、投入される端末数が一定の時期をピークとして減少傾向にあることだ。ソフトバンクモバイルは2011年、ドコモやauも2012年にピークを迎えており、それ以降商戦期に投入される端末数は減少、もしくは横ばいの傾向が続いている。特に減少が著しいのはソフトバンクモバイルで、かつては最大9機種も投入していたのが、今年の夏商戦では「AQUOS Xx 304SH」1機種のみにまで減少してしまった。
キャリアがスマートフォンの機種数を減らしている理由の1つは、端末の差別化要素が少なくなってきたことが挙げられる。スマートフォンの販売が本格化した当初は、デザインに注力したものやQWERTYキーボードが付いたもの、ダイヤルキーが付いたものなど、個性的なモデルが多く登場していた。だがタッチパネルの大画面・ストレートモデルに人気が集まったことで個性的なモデルの販売が伸び悩み、結果として形状による差別化が困難となり、スペックと価格以外でスマートフォンの違いを見出しにくくなってしまっているのが現状だ。
2つ目は、そもそもスマートフォンを積極的に購入するユーザー自体が減少しているということ。日本のスマートフォン普及率は現在、5割を超えたかどうかという状況だが、にもかかわらずここ2、3年続いていたスマートフォンへの買い替えが、2013年中盤ごろから急速に鈍ってきているといわれている。その要因としてはスマートフォンのランニングコストが高いことや、フィーチャーフォンの利便性が高くユーザーの愛着が強いことなどが考えられる。いずれにせよ、スマートフォンの買い替え需要自体が鈍り、端末販売数が増えていないことが、スマートフォン機種数の減少にも大きく影響を与えていることに間違いはない。
そしてもう1つは、各キャリアがiPhoneを重視した販売戦略をとるようになったこと。日本では若年層を中心としてiPhoneが高い人気を獲得し、iPhoneの有無がキャリアの業績を左右する程の状況をも生み出した。そうしたことからキャリアはiPhoneの販売に注力するようになり、結果として他のスマートフォンの販売量が減少。iPhone以外の新機種数を絞る動きへつながっていったといえる。
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