8月6日に開催されたビジネス戦略発表会の中で、トレンドマイクロ代表取締役社長エバ・チェン氏は家庭内ネットワークを保護する方針を打ち立てた。
「この25年間でIT産業が大きく変わり、トレンドマイクロのコンシューマービジネスにおける対象も、個人から家庭全体、PCやモバイルから家庭内の全てのデバイスへと移り変わってきた」とチェン氏は話す。「あらゆるものがネットワークに接続されるIoT(Internet of Things)時代になり、先進国では家庭環境を狙うネットワーク犯罪が増加している。スマートフォンで操作できる電球をハッキングして勝手に消灯させたり、スマートテレビに勝手にアクセスされたりといった具合に」(チェン氏)。
これを受け、同社は家庭内ネットワークを保護する3つの戦略を発表した。
トレンドマイクロが打ち立てた3つの戦略は、PC、スマートフォン、タブレットのほか、ネットワークでつながるあらゆる家電製品を含めた家庭内デバイスを一括で管理する「セキュリティアットホーム」、家庭内外でデバイスを保護する「セキュリティエブリウェア」、ユーザーごとの個別サポートを行う「セキュリティコンシェルジュ」だ。
セキュリティアットホームでは、家庭内に複数あるデバイスを、デバイス単位ではなくネットワークベースで保護していくというもの。DPIを取り入れたホームルータで複数のデバイスを一元管理するほか、「ネットワーク機器ベンダーや通信事業者、サービス事業者と提携してセキュリティ対策を強化していく」(トレンドマイクロ取締役副社長 大三川彰彦氏)方針だ。
セキュリティエブリウェアは、家庭内だけでなく、外出先でもデバイスを守る環境を構築するもの。通信時にトレンドマイクロのクラウドゲートウェイを通すことで、不正アクセスやウイルスソフトからデバイスを保護する。こちらに関しても、「金融やオンラインストレージ、広告配信業者などと提携していく」と大三川氏は説明した。
先に述べたような技術の提供だけでなく、ユーザーの不安までをも取り除くサービスとして新たに登場するのがセキュリティコンシェルジュだ。同社が蓄積してきた知見からユーザーの悩みを先回りして把握し、各ユーザーにパーソナライズされたサポートを行うという。こちらも「PCベンダーや通信事業者などのカスタマーサポートセンターとの提携を強化する」(大三川氏)とのこと。
これらの技術やサービスの提供は、いずれも米国や日本のようにIT産業が成熟した市場向けのもの。2014年度中をめどにサービスを提供する予定だ。新興市場向けにはまた異なるアプローチを行う。
大三川氏は、「全世界に2550万いるトレンドマイクロのユーザーを、2016年末までに6300万にする」と話し、東南アジアの新興国や南米、中東アフリカ、東ヨーロッパなどの海外展開を積極的に行うことを明らかにした。
新興市場向けには、「トレンドマイクロ Apps」という独自のアプリケーションを通し、「モバイルビジネスの新たなエコシステムを創出する」と大三川氏は説明する。同アプリは、ソーシャルゲームやSNSなどを提供するアプリベンダーのアプリが安全なものかを監視したり、パフォーマンスの最適化を図ったりするもの。すでに台湾や東南アジアで大手ゲームベンダーや決済代行事業者と協業を開始しており、2014年7月からロシア、トルコ、南米などにも順次参入している。
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