KDDIが発売した「Fx0 LGL25」は、国内キャリアが初めて販売するFirefox OS搭載スマートフォンだ。Firefox OSは、Webブラウザ「Firefox」の開発元であるMozillaが提供するOSで、HTML 5などWeb標準のオープンソース技術で作られている。
国内のFirefoxスマホについては、Mozillaが8月に「flame」という開発者向けのリファレンス端末を数量限定で販売したが、回線込みの一般向けモデルはFx0が最初。KDDIの田中社長が「Fx0はギークのためのスマホ」と紹介するように、Firefox OSという新しいプラットフォームをいち早く試してみたいユーザーや、Firefox OS向けのアプリを開発したいという開発者らが主なターゲット。対応アプリの数も少なく、はっきり言って使う人を選ぶスマホだ。
だからなのか、Fx0には「採算度外視」(田中社長)のコストがかけられている。特にボディはFirefox OSの“オープン性”を象徴するかのように半透明な素材でできており、バッテリーやフレキシブルケーブル、基板の一部など内部の様子が分かるようになっている。内部のパーツは見えることを意識して配置され、見た目を重視ししてダミーのアンテナまでレイアウトするという凝りよう。
ホームキーにはFirefoxのロゴが立体的にプリントされており、ネジもFx0用に製造された特注品を用いた。ホームキーの試作には1回30万円ほどかかるが、これを10回繰り返したという。またネジも汎用品ではないため、通常の40倍の価格がするという。背面パネルも透明素材だが、内部を“モザイクっぽく”見せるためにシボ加工が施された。また数量限定になるが、購入者には完全にクリアな背面カバーも特典として用意されている。
こうしたFx0のデザインは、auの「MEDIA SKIN」や「X-RAY」も手がけたデザイナーの吉岡徳仁氏によるもの。特にX-RAYとは透明素材を採用した点で共通している。(OSを含め)ほかにはない個性派端末という意味では、Fx0はau design projectやiidaの流れをくんでいる……と言えるのかもしれない。
搭載ディスプレイは約4.7型のHD表示(1280×720ピクセル)IPS液晶。プロセッサはQualcomm Snapdragon 400シリーズの「MSM8926」(1.2GHzクアッドコア)を採用した。通信面ではauの4G LTEに対応し、下り最大150Mbpsの高速通信が行える。テザリングも可能だ。ただしVoLTEやキャリアアグリゲーション、WiMAX 2+はサポートしていない。バッテリーは2370mAhで、ユーザーによる交換が可能。メモリは1.5Gバイト、ストレージは16Gバイトで、外部メモリとして最大64GバイトまでのmicroSDXCが利用できる。microSDXCとSIMカード(Micro SIM)は背面カバーを外して着脱する。
Firefox OSはiOSやAndroidと比べると軽量なOSであり、低スペックな端末でも快適に動作し、バックグラウンド通信も少ない。そのため、海外、特に新興国向けのローコスト端末のOSとして採用されている。一方でスペックが高い端末は少なく、LTEへの対応や(処理能力が高い)Snapdragon 400を搭載するFirefoxスマホはFx0が世界初だという。
最新のAndroidスマホと比べると低めに見えるスペックだが、Firefoxスマホとしてはかなりハイスペックな1台といえるのだろう。端末の製造は、Firefoxスマホの開発実績などからLGエレクトロニクスが選ばれた。「isai」シリーズなど、auとの共同開発経験が長いことも関係しているようだ。
物理的な操作部は、端末正面のホームキーと、側面にあるボリュームキー、電源キーの3つ。充電やPCなどとの接続はmicro USBを介して行う。Androidにある“戻るキー”や“メニューキー”はボディには用意されておらず、アプリのユーザーインタフェース(UI)として表示される。ホーム画面にすべてのアプリアイコンが並ぶ点と合わせて、iPhoneやiPadなどのiOSと近い操作性だ。
プリセットアプリは「電話」や「連絡先」「カメラ」「カレンダー」などの超基本的なものに加え、スマホユーザーには欠かせないであろう「LINE」と「Facebook」、そして地図アプリの「NAVITIME」が用意された。ブラウザはもちろんFirefoxで、プラットフォームの性格上ほかのブラウザアプリは存在しない。コミュニケーション系のアプリでは、auのキャリアメールとSMSは「メッセージ」アプリで送受信し、そのほかのメール(POP/IMAP)は「メール」アプリで使い分ける。
それ以外のアプリ、例えばYouTubeやTwitterなどはFirefox OS用のアプリマーケットである「Marketplace」からダウンロードするが、iOSやAndroidほどアプリの種類があるわけではない。サービスによってはブラウザでアクセスして使うことになるだろう。
Fx0にはスマホだけで簡単なアプリを作れる「Framin」というアプリも用意されている。デモ機にはFraminで作成したおみくじやミニゲームなども追加されていた。Framinで作成できるアプリは端末のセンサー(タッチパネル操作や傾きなど)を検知してイメージを描画したり、音を鳴らしたりするものに限られ、通信機能を使ってネット上の情報を取得することはできないようだ。
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