激化の一途をたどる通信環境、どこで差別化する?――通信4社の年頭所感

» 2015年01月05日 17時07分 公開
[村上万純,ITmedia]

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、UQコミュニケーションズの4社が、2015年の年頭所感を発表した。

 2014年はキャリア3社が通話定額を採用する新料金プランを打ち出し、高音質通話サービス「VoLTE」を提供するなど、通話関連の新サービスが相次いで登場した年だった。スマートフォンのスペックが頭打ちになって差別化しにくいだけに、各社がネットワークや料金、サービスなどで競争を勝ち抜く構えを見せている。それぞれ2015年をどう戦い抜くのだろうか。

「ドコモ光」や下り最大225Mbpsの高速通信で勝負――NTTドコモ

photo NTTドコモ 加藤薫社長

 NTTドコモの加藤薫社長は、2014年を「新たな成長に向けた礎を着実に築く年」と振り返った。 長期契約ユーザーや家族向けに各種割引を用意した新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」は、解約率の低下や2台目利用としてのタブレット需要を生み出し、約1300万ユーザーに利用されるなど好調だという。ネットワーク面では、「VoLTE」を他社に先駆けて提供したほか、下り最大150MbpsのLTEエリアの強化も引き続き進めている。サービス面では「dマーケット」のユーザー数が900万を超えた。

 「hitoe」や「ドコッチ」など、ウェアラブル関連の新領域にも意欲的で、ドコモショップの営業品質強化の取り組みもますます力を入れていく方針だ。

 これらを踏まえ、加藤社長は2015年を「競争ステージを実際に変える年」にすると語る。2015年は「ドコモ光」のほか、下り最大225MbpsのLTE-Advancedの通信サービスや、通信混雑時のつながりやすさを向上させる「ネットワーク仮想化」に注力していくドコモは、競争ステージを「サービスによる付加価値競争のステージ」に変えていくという。そのほか、2020年までに最大10Gbpsの高速通信「5G」を実現することも掲げている。

 加藤社長は、ユーザーの利便性向上や社会における課題解決、ドコモの経営体質のさらなる強化を標ぼうし、「お客様1人1人のスマートライフのパートナーとして、お客様の生活が安心・安全、便利で快適になるように取り組んでいく」と締めくくった。

“お客様視点”を忘れずに、「実行」する年に――KDDI

photo KDDI 田中孝司社長

 2015年は「実行」をキーワードとし、「新たな成長へ向けて実行する1年にしよう」をテーマに掲げるKDDI 田中孝司社長は、例年通り社員に強く意識してほしいポイントとして、「お客さまを第一に考え、実行する」「先読みとスピードアップ」「個人の成長」を挙げた。

 田中社長は、社員からキャリアショップスタッフを始め、あらゆる部門の人間が「お客様第一」という原点に立ち返り、時代の変化を先読みしてスピード感を持って対応し、やり切ることの重要性を語る。さらに、「個々人が勉強とスキルアップを図り、社員力と組織力を上げていくべく成長してほしい」としている。

 田中社長は、2014年を「予想以上のスピードで市場の同質化と固定化が進んだ一方で、ウェアラブルやM2Mなど新たな広がりを感じる1年」と振り返る。また、MVNOの拡大やNTTグループによる「ドコモ光」の卸売りの発表など、今後の競争環境を大きく左右する動きもあり、「事業環境は総じて厳しい1年だった」とも話す。その中でも、KDDIは電子マネーサービス「au WALLET」や、プラットフォーム構想「Syn.」、ミャンマー進出、Firefox OSスマートフォンの発売など、果敢に新事業に挑戦してきた。

 2015年は、1985年の日本における電気通信の自由化から30年、KDDIの発足から15年という節目の年であり、田中社長は「KDDIが新たな歴史に向けて一歩を踏み出す年にしたい」とし、既存サービスの加速化と、新事業領域への挑戦の意を示した。

2015年もまだ情報革命の“始まり”に過ぎない――ソフトバンク

photo ソフトバンクモバイル 孫正義社長

 2014年、ソフトバンクモバイルはネットワークの強化に注力したほか、同グループ会社として7月にヤフーと連携した新しい通信キャリア「ワイモバイル」が発足。ソフトバンクが買収した米Sprintとの共同開発モデルである「AQUOS CRYSTAL」なども業界内で話題を集めた。新事業領域では、“世界初”となる感情を認識するパーソナルロボット「Pepper」を発表し、新しい可能性を示している。

 ソフトバンクの孫正義社長は、2015年はPepperの販売が開始されるため、「ロボットが初めて一般家庭に浸透していくという記念すべき年となる」と語る。孫氏は、情報革命の技術はもう成熟期に入ったと考える人もいるだろうが、「まだ始まりに過ぎない」と話し、今後もメモリ、CPUの処理能力、計算能力などは加速度的に伸びると予想する。そのような生活の中にある全てのものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の時代に、「Pepperのようなロボットとのコミュニケーションを始め、我々のライフスタイルは大きく代変わり、医療や教育といった産業分野にも変革がもたらされる」と孫氏は考える。

 「情報革命で人々を幸せに」を経営理念に掲げるソフトバンクの原点は、「新しい時代を常に先導し、人々の幸せのために取り組んでいく」こと。この原点を大切にし、未来を見据えながら常に挑戦し続ける姿勢はこれからも変わらないようだ。

下り最大220Mbpsの「WiMAX 2+」を実現――UQコミュニケーションズ

photo UQコミュニケーションズ 野坂章雄社長

 2013年に続き、2014年もUQコミュニケーションズはモバイルデータ通信部門の顧客満足度ランキングで三冠を達成(外部リンク)し、通信面での強さを見せた。同社の野坂社長は、「月3969円(税別)の高速通信使い放題を可能にする料金プランに加え、あらゆる要素で徹底的にお客様にご満足いただけるサービス提供に努めた結果」だと振り返る。

 2015年3月末までにはWiMAX 2+のサービスエリアをWiMAXと同等まで拡大し、下り最大220Mbpsの高速通信を実現する予定だ。野坂社長は、「さらに進化したWiMAX 2+を通じて、お客様により速く、より快適に、より安心してご利用いただけるよう、全社一丸となって取り組む」と意気込みを表明した。

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