ドコモ株主総会で鋭い指摘相次ぐ――CMが意味不明/新料金は長期切り捨て/経営がソフトバンク化減収減益で増配にも疑問(2/3 ページ)

» 2015年06月22日 20時34分 公開
[平賀洋一ITmedia]

株主からの主な質問とドコモ経営陣の回答

 以上の経営方針に対し、株主からはどんな質問があったのか。主に通信事業に関するものをまとめた。携帯電話シェア1位のドコモだけあり、株主の多くはドコモのユーザーでもある。ショップの対応や新料金プランへの不満をぶつける質問も目立った。

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ドコモショップは直営ではないという。スタッフはどう指導しているのか

――(株主質問) ドコモショップは直営店というイメージがあったが、違うという。どういった業務提携なのか? またどう指導しているのか。待ち時間が長いが、どのような対応をしているのか。

取締役 須藤氏 以前は直営店もあったが、現在はほとんど代理店が運営している。位置付けについては準直営店。店員についてはマイスター制度による順位付けや応対コンテストの実施、店舗による研修と支店のルート担当による研修を行っている。

 また新料金プランとドコモ光の開始で、店頭での待ち時間が長くなっている。「待ち時間が長い、応対が悪い」という声は頂いている。席に着く前にご用件を聞く、またタブレットで受付けを行う、Web上で来店予約をして頂けるようにした。

加藤社長 ドコモショップについて補足させていただく。ドコモショップは全国に2400以上あり、スタッフは3万8000人弱。支店と緊密に連携しており、社員ではないが「ワンドコモ」として取り組んでいる。説明することも多く、きっちり対応していく必要があり、時間をいただくことがあるが、大胆に改善していきたい。絶え間なく努力をしていくので、叱咤激励を頂きたい。

コストダウンへの努力が足りない。わけのわからないCMをやめるべき

―― 減収減益だがコストダウンの努力が足りないのではないか? わけのわからないTVCMが多い。有名な俳優の起用には高額な出演料がかかる。プロ受けするようなCMではなく(会場から拍手)、もっと分かりやすい、シンプルな内容にして欲しい。

取締役 佐藤氏 新料金プランによる値下げで減収しており、コスト削減に努めている。コストの効率化は、現状の仕事の仕方を抜本的に変え、競争力の強化が目的。また紙の請求書の書面発行をやめる、あるいは代理店手数料を下げる、設備の再利用を進めるなどを行っている。

副社長 坂井氏 CMはできるだけ多くの人に理解できるよう、分かりやすくしているつもり。また複数の広告賞を頂くなど、一定の評価は受けていると思うが、ご指摘を受け止めたい。

サイバー攻撃が話題だが、ドコモは大丈夫か?

―― 年金機構が被害を受けたサイバー攻撃について。+dで提携するパートナー先が攻撃を受けた場合、ドコモの個人情報は大丈夫なのか。安心・安全への取り組み、アピールが足りないのではないか?

副社長 吉沢氏 ドコモ自身がサイバー攻撃が受けることについては十分な取り組みをしている。データも暗号化やパスワードロックなどの取り組みをしている。+dの提携先は直接、個人情報を扱わない。個人を特定しない属性や匿名性を担保した情報をやりとりしており、情報漏洩への対策を取っている。

加藤社長 ネットワーク側で事故があった場合は、会社の存続にも関わる問題になり、きっちり対策している。補足になるが、端末側では指紋や虹彩認証などを取り入れて、セキュリティを強化している。

国内は消耗戦で成長が望めない 海外に活路を開くべき

―― 人口減少と高齢化が進み、市場は消耗戦で利益が減る構造だ。ドコモはユーザーが求めているのにiPhoneの導入が非常に遅れた。こうした取り組みが遅れて利益が減っているのに、増配はおかしい。

副社長 坂井氏 日本市場には1億を超える携帯電話があり、人口減もあり、数が増えていく成長は難しい。一方でモノをネットでつなぐIoTなど、サービスを高度化する分野であれば成長を図れる。+dという概念はパートナーと新しい価値を作っていく取り組みで、医療や教育、高齢化や農業など、いろいろな産業と携帯電話を結び付け、社会問題を解決できる。これが今後の成長に対する答えではないかと思う。

―― 人口減、高齢化の日本で生き残るには、海外に活路を開くべきでは? 海外事業についてどうなっているのか?

副社長 坂井氏 海外事業は積極的に取り組んできた。ローミングできる国は220カ国に広がっている。欧州では料金回収やコンテンツ配信、またグアムでは子会社がキャリアを行っている。

 現在の国際戦略は3つある。1つはグローバルのICT市場で、これはNTTグループ全体でICTサービスを売っていくもの。主に北米が中心だが、徐々に世界に広げていきたい。またローミングの充実化も図る。海外でも(LTEで)高速に(VoLTEで)高音質に通話できるようにしたい。3つ目は海外企業とのアライアンス。ドコモ1社では限界があるので、さまざまなパートナーと組んでいく。とはいえ、海外の売り上げは年間1100億円でさほど大きくはない。そのため(事業報告書には)記載しなかった。

加藤社長 消耗戦と指摘があったが、一昨年の年度末は飽和市場でキャッシュバック合戦になった。その中で長期利用者から「新規契約者だけが優遇されるのはおかしい」と指摘があり、キャッシュバック合戦をやめ、長期に還元できるような新料金プランを開始した。

 いろんなことがドコモが遅れ気味ではないかというが、新料金は業界の先頭をきって発表した。非常に好評で想定以上の加入があり、減収が前倒しであったのは事実。だが長期的な取り組みを始めたところで、+dなどスマホでサービスを利用してもらうdマーケットも進めている。2台目も予定の数以上に出ている。ご理解いただきたい。

最先端の技術はいつ利益に貢献するのか?

―― 通信の高速化など、最先端の技術はいつ利益に貢献するのか。1年後か、10年後か。最先端だけでなく普通の人が使うボリュームゾーンのが重要なはず。技術を競うのは重要だが、自分たちの技術に酔っているのではないか。利益で競争して欲しい。

副社長 吉沢氏 現在のモバイル市場にはたくさんのサービスが出てきており、非常に多くのトラフィックが発生している。これがビジネスの源泉になる。このトラフィックをしっかり処理できる技術は、利益そのものに結びつく。

 もちろん利益を出すスケジュールも重視している。例えばdマーケットの拡大を目指してさまざまなサービスを提供しているが、スマートライフで1000億などしっかりと目標を定めている。長期、短期で目標を定めていることをご理解いただきたい。

加藤社長 スマホ向けの新サービスは映像を見てもらうものが多い。スマホで通信速度が遅いと使ってもらえない。ネット検索を含めてサクサクとした利用感は重要。パケット通信の総量は1年間に1.5倍づつ増えていく。それでもサクサクと使ってもらえるよう、ネットワークを充実させている。

 本年度には、下り300Mbpsのサービスを開始する。最先端技術であれば、おなじネットワークでも速度を上げられる。こうしたたゆまぬ技術革新が新しいサービスを生み、データ利用の需要を喚起し、利益を生むという循環を作り出したい。最先端技術への取り組みは利益を底支えするものでご理解いただきたい。ちなみにこの会場でスピードを測ったところ、155Mbps出ている。

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